スマート化で何をする? 新技術が経済格差に 特別編集委員 山田優

 スマート農業が花盛りだ。本紙には無人の農業機械が畑を走り回り、ドローン(小型無人飛行機)や衛星から送られた情報に従って耕したり収穫したりする事例が、全国各地で登場する。

 農水省のウェブサイトによると、「ロボット技術やICTを活用して超省力・高品質生産を実現する新たな農業」がスマートな農業だという。

 高齢化や過疎で農村の人手不足が深刻な中、魅力的に見えるのは確か。省力化と品質向上の一石二鳥になるのであれば、期待されるのは当然だ。厳しさが強調される農業で、数少ない明るい話題といえる。

 政府のスマート農業関連予算は拡充されている。デジタル化に熱心な菅政権でさらに農業のスマート化が進むことは確実。目指すのは農家がいち早くスマートになって競争力を高めることだ。

 この場合の競争相手は、国内の他産地や輸出先の競合国などだろう。政府のスマート農業は、安倍前政権から続く攻めの農政とぴったり歩調を合わせている。成長するには競争するしかない。他人を蹴落としてでも強い農業を目指しなさいというわけだ。

 新しい技術は私たちの暮らしや経営を便利にする一方で、社会のひずみを広げることもある。

 ここ数十年の間に、世界中でITが浸透した。インターネットやスマートフォンがない生活はもはや想像しにくい。

 半面で社会の経済格差は大きく広がった。ITをスマートに利用するごく一部の企業や富裕層が巨万の富を独占し、一方で多くの貧困層が生まれた。新自由主義的なさまざまな規制緩和と、ITの発展が結び付き、競争の勝者だけがおいしい思いをできるようになったからだ。

 農業でスマートな技術がもてはやされ、気が付いたら農村に取り返しのつかない経済格差が生まれることはないだろうか。

 人影のない田んぼで、無人トラクターとコンバインが走り回る。収穫した米は自動で乾燥調製機に運び込まれる。経営者の命令で全ての作業を指示するのは人工知能(AI)。従うのは地元の補助要員か海外からの研修生。

 一つ一つの技術を見れば便利で営農に役立つものばかり。だが、こんな風景の中、一握りのスマートな経営者が、戦前の地主のように「旦那さま」として農村を歩き回る姿は見たくない。
 

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