農業のデジタル化 皆が利用できる体制を

 農業にもデジタル化の波が急速に押し寄せている。人手不足の解消や生産性向上への期待は高い。旗振り役の政府は、中山間地域の農業や高齢農家が取り残されないようにすべきだ。

 デジタル化は産業構造を大きく変えるとみられ、「第4次産業革命」をもたらすとも言われる。農業でも、人工知能(AI)を利用した収穫ロボットや自走式トラクターでの作業が可能になった。遠隔操作での水位調整や、ドローン(小型無人飛行機)による防除など生産管理にも広がる。

 成果も上がる。宮崎県ではハウスピーマン農家の気象や収量などのデータを活用し、部会全体の収量を40%近く増やした。また、自動制御装置により、水田の水管理の労力を80%も削減した実証事例もある。無人のロボット技術も実用化されている。規模拡大の後押しになりそうだ。

 こうした先端技術を利用したスマート農業への期待が高まっているが、推進には現場の課題を踏まえる必要がある。

 第一に、農業経営の負担にならないような価格水準での供給が必要だ。いくら高性能でも高価では、導入できる農家は限られる。「機械化貧乏」を招く恐れもある。周辺機器も加えた総合的な費用を、経営に耐えられる水準に抑える必要がある。

 第二に中山間地域農業への目配りだ。同地域は、日本全体の農業生産の4割を占め、重要な存在である。しかし、平地に比べて機械化しにくく、規模拡大も難しい。情報通信のインフラ整備や、デジタル化に欠かせない各種データの集積が遅れると、平地との生産性格差が拡大する恐れがある。同地域で付加価値の高い農業を実現する技術などの開発を急がなければならない。格差が拡大した場合は支援を拡充すべきだ。

 第三に、日本農業を支える高齢農家への対応だ。デジタル技術を利用できるようにし、併せて、貴重な営農技術を次代に引き継げるようデジタル化に協力を求める必要がある。

 行政のデジタル化も進む。農水省は、2022年度までに、約3000に上る行政手続きを全てオンライン化する考えだ。農業者はスマートフォンで直接申請できるようになるが、操作が苦手な農家も対応できるように、「紙」の申請を併用するなど丁寧に進めるべきだ。

 デジタル化で重要なのが、データの収集と管理である。勝手に外部に流出することがあってはならない。一部の企業だけが恩恵を受けることになってもいけない。農家が安心してデータ集積に協力し、互いに利用し合える環境整備が急務だ。

 情報処理やシステム開発を行う企業の農業分野への参入が活発化している。デジタル化に対応する農業側の体制づくりを急ぐ必要がある。一環として、サポート体制や研修の場などの整備と、先端技術に精通し、それを担える人材の育成が大切だ。
 

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