毒きのこで食中毒 正しい知識学ぶ機会を

 秋の味覚の一つ、野生のきのこによる食中毒が後を絶たない。シーズン終盤の11月も油断できない。今季は直売所の商品でも発生した。採取者や出荷者はきのこの扱いに細心の注意を払うとともに正しい知識を身に付けることが重要だ。自治体などは学ぶ機会を設けてほしい。

 日本きのこセンター菌蕈(きんじん)研究所によると、今年は9月に入り雨が多く、朝晩の気温が低下してきたため、きのこが生える条件が整っており、「(毒きのこに)引き続き注意してほしい」と警鐘を鳴らす。

 毒きのこによる食中毒は9~11月に集中する。厚生労働省によると、2019年の発生件数は、過去3年で最も多い26件。このうち25件がこの3カ月間だった。ピークは例年10月だが、同年11月は発生件数8件、患者数20人で、ともに、同月としては過去12年間で最多だった。

 食中毒の発生が最も多い毒きのこは「ツキヨタケ」。19年は14件で、患者は31人に上った。食用のシイタケやヒラタケと間違えられることが多い。食後30分~1時間で嘔吐(おうと)や下痢などの症状がでるのが特徴だ。ツキヨタケによる食中毒は今季も発生。10月には新潟県佐渡市で家族3人が、市内の山中で採取したツキヨタケをみそ汁にして食べた。これを受け、県は「毒きのこ食中毒発生注意報」を発令し、注意を促した。

 直売所でも発生した。秋田県仙北市の農産物直売所で10月、「ハタケシメジ」として販売されたきのこが、毒きのこの「クサウラベニタケ」だった。計7パック を売り、少なくとも6人が食中毒になった。

 事故の芽を摘み取るには「正しい知識を身に付け、経験を積む必要がある」と同研究所。各地域にある愛好者らの団体「きのこ会」の学習会などに参加することを勧める。

 長野県には、食べられるきのこを見分ける「きのこ鑑別相談所」がある。きのこに詳しい民間人を県が「きのこ衛生指導員」として1978年から委嘱。現在は36人で、保健所などに配置している。市民が持ち込んだきのこを図鑑と照らし合わせるなどして調べ、科学的根拠を持って判断する。見分けがつかなければ、食べないよう指導している。県によると、指導員が鑑別したきのこで食中毒になったケースはないという。

 指導員は市民にマンツーマンで対応する。鑑別以外にも、生えている場所の特徴など見分ける方法を教え、調理法なども伝える。県の担当者は「覚えてもらうことも目的。学びも啓発」と強調する。注意喚起と併せて「きのこ教育」につなげる。

 野生のきのこは魅力的で、つい食べてしまう。だが毒きのこで死亡事故も起こっている。経験だけに頼らず、正しい知識を身に付けることが大切だ。自治体など行政も、注意を喚起するだけでは限界がある。長野県の取り組みも参考に、指導や教育の場を設けることを求めたい。
 

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