動画チャンネル、産地ツアー、調理実演… ブランド米販促 オンラインに道
2020年11月08日

「金色の風」のオンラインツアーの様子(岩手県一関市で、JAいわて平泉提供)
ブランド米の産地が、動画配信などインターネットを活用した新たな販売促進に力を入れている。2020年産は新型コロナウイルス禍で需要の落ち込みが懸念される上に、対面でのPR活動も制限されている。オンラインの産地ツアーや調理実演を展開し、遠隔の実需者や消費者に産地のこだわりと銘柄米の魅力などを発信。新たな販路の開拓を目指している。(玉井理美)
福井県オリジナル品種「いちほまれ」のPRを行う「ふくいブランド米推進協議会」は今年、北海道、岩手、新潟のJAなど全国8産地と連携して、動画投稿サイト・ユーチューブに「こだわり米の産地情報チャンネル」を立ち上げた。
産地と実需者が情報共有する卸主催の会議が今年、コロナ禍で中止になった。代わりに、同チャンネルの活用を他産地にも呼び掛け、実現した。7、8月は全国の米穀店向けの限定公開で、各産地が稲の生育状況などを配信。今後は消費者向けの販促にも活用する。
「いちほまれ」の生育状況を説明した動画の閲覧数は200を超え、従来の会議参加者を上回った。協議会の担当者は「対面で話すのに越したことはないが、インターネットではどこからでもアクセスでき、多くの米穀店に見てもらえた」と話す。複数の産地が共同で情報発信することで、単独で行うよりも実需者や消費者への発信力が高まるとみる。
岩手県のオリジナル品種「金色の風」を知ってもらおうと、JAいわて平泉の栽培研究会と県県南広域振興局は10月下旬、全国のお米マイスターを対象にしたオンライン産地ツアーを開いた。
生産者が特別栽培の取り組みなどを説明し、参加者は乾燥調製施設を画面を通して見学。お米マイスターとは、どう販売していくかで意見交換した。産地訪問の代わりだったが、県は「首都圏の参加者を想定していた中で、香川や大阪など遠隔地からも参加がありよかった」と指摘する。年明けに2回目を予定する。
とちぎ農産物マーケティング協会は10月下旬、県のオリジナル品種「とちぎの星」の調理実演会をオンラインで開いた。東京都内の飲食店やお米マイスターなどが対象。参加者には事前に「とちぎの星」を使った弁当を宅配した。その上で、弁当に入れたチャーハンや丼などの調理実演動画を配信し、大粒で冷めてもおいしい米をアピールした。
協会は「知名度とブランド力向上が課題。映像だけでなく、実際の試食と組み合わせることでおいしさも伝えようとした。参加者には、消費者への販売提案に役立ててもらいたい」と話す。
福井県オリジナル品種「いちほまれ」のPRを行う「ふくいブランド米推進協議会」は今年、北海道、岩手、新潟のJAなど全国8産地と連携して、動画投稿サイト・ユーチューブに「こだわり米の産地情報チャンネル」を立ち上げた。
産地と実需者が情報共有する卸主催の会議が今年、コロナ禍で中止になった。代わりに、同チャンネルの活用を他産地にも呼び掛け、実現した。7、8月は全国の米穀店向けの限定公開で、各産地が稲の生育状況などを配信。今後は消費者向けの販促にも活用する。
「いちほまれ」の生育状況を説明した動画の閲覧数は200を超え、従来の会議参加者を上回った。協議会の担当者は「対面で話すのに越したことはないが、インターネットではどこからでもアクセスでき、多くの米穀店に見てもらえた」と話す。複数の産地が共同で情報発信することで、単独で行うよりも実需者や消費者への発信力が高まるとみる。
岩手県のオリジナル品種「金色の風」を知ってもらおうと、JAいわて平泉の栽培研究会と県県南広域振興局は10月下旬、全国のお米マイスターを対象にしたオンライン産地ツアーを開いた。
生産者が特別栽培の取り組みなどを説明し、参加者は乾燥調製施設を画面を通して見学。お米マイスターとは、どう販売していくかで意見交換した。産地訪問の代わりだったが、県は「首都圏の参加者を想定していた中で、香川や大阪など遠隔地からも参加がありよかった」と指摘する。年明けに2回目を予定する。

オンラインで配信した「とちぎの星」の調理実演の様子
協会は「知名度とブランド力向上が課題。映像だけでなく、実際の試食と組み合わせることでおいしさも伝えようとした。参加者には、消費者への販売提案に役立ててもらいたい」と話す。
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酒米のパックご飯と粥 味良く好評、販路拡大へ 石川の法人
新型コロナウイルス禍による日本酒の消費後退を受け、石川県白山市の農業生産法人ヤマジマが酒造好適米のパックご飯とパック粥(がゆ)の製造を企画し、JA松任(同市)の食品加工場で完成した。市内の酒蔵が、全国の酒販店などに非売の贈答品として送ったところ、評判がよく、ヤマジマはさらに増産する考え。販路開拓の一策となりそうだ。
できたのはご飯(200グラム)、粥(250グラム)の各2500パック。ヤマジマで収穫した2020年産「五百万石」を使用。うるち米同様に常温保存でき、レンジの加熱2分で食べられ、霊峰白山の伏流水で炊いた点を包装で紹介している。
酒造好適米を契約購入している吉田酒造店(白山市)が全品を購入。PRを兼ねて昨年末、取引先の酒販店などに発送した。同店によると、「おいしい」との感想が相次ぎ、「購入できないか」と商品化に期待する問い合わせもあったという。
白山市は酒造好適米の産地。地元の「山島の郷(さと)酒米振興会」は昨年49ヘクタールを栽培し、前年より約1ヘクタール減ったが、コロナ禍を見越し、作付け農家は33戸から10戸減少した。
加工の実現には、JAの食品工場で無菌包装のラインを備えることも幸いした。加熱処理に比べ、食品本来の香りや味覚を損傷しにくいとされる。
ヤマジマの亀田正弘社長は、「味わいは『コシヒカリ』のパック米以上との評判も聞く。他品種の『石川門』や『百万石乃(の)白(しろ)』でも試作し、うまさを比較したい」と話している。
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2021年01月27日

菅政権の地方重視 美辞麗句では動かぬ 早稲田大学大学院教授 片山善博
菅義偉首相は就任時に、自分が「雪深い秋田の農家」の生まれであることを強調した。それもあったのか、マスコミも世間も、今度の首相は農村出身だから地方を重視する、農業にもこれまで以上に力を入れると予想したり、期待したりした。
内容乏しい演説
その予想や期待が当たっているかどうかを判定するリトマス試験紙ともいえる貴重な機会が、先の通常国会における首相の施政方針演説だった。かく言う筆者は岡山の兼業農家の生まれである。雪こそ降らないがイノシシなどの有害鳥獣に悩まされる地域だ。また、農業を主要産業とする鳥取県で知事を務めたこともあるので、地方や農業に対する首相の姿勢はどんなものかと、興味と関心を持って施政方針演説を聞いた。
残念ながら、演説を聞く限り、先の予測や期待は外れという他ない。まず農業についての言及は、分量がとても少ない上に、内容が至って貧弱である。触れていることのほとんどは農産品の輸出に関することだ。
輸出拡大一辺倒
このところ農産品の輸出額が増えている。これをさらに伸ばして2030年には5兆円の目標を達成させたい。そのため牛肉やイチゴなどの重点品目を選定し、産地を支援するという。農業政策についての具体的な内容はほぼこれに尽きる。
確かに農産品の輸出は重要なことである。筆者も鳥取県知事時代に梨「二十世紀」などの輸出促進と販路拡大に取り組んだ。その経験を通じて、農産品の輸出が日本の農業の一つの可能性を開くものであることは理解している。
ただ、わが国の農業の現実は、農産品輸出の明るい話題で語り尽くされるほど単純でもなければ容易でもない。それぐらいのことは農業や農村のことを真剣に考えている人には分かり切ったことである。
また、農業についての最後のくだりで「美しく豊かな農山漁村を守ります」と述べていた。もとよりそれに異存はない。肝心なことは、ではそれをどうやって実現するのかということなのだが、その説明がないのは単に美辞麗句を添えただけとしか思えない。一体どれほどの人がこの言葉に共感を覚えただろうか。
地方に関しては、観光立国の一環として登場するぐらいの小さな扱いでしかない。それ以外には、テレワークの環境を整えることによって、地方への人の流れを生み出す。地方への移住を希望する人には支援するなど、個別断片的な施策の紹介はあるものの、視野の広い地方政策は見当たらない。
菅政権は安倍政権を引き継いだという。ただ、それにしては前政権から始まった地方創生について一言も触れられていないことが気に掛かる。以上、どうやら施政方針演説の内容と「雪深い秋田の農家」の生まれとの間にはほとんど関係がなさそうだというのが筆者の見立てである。
かたやま・よしひろ 1951年岡山市生まれ。東京大学法学部卒、自治省に入省し、固定資産税課長などを経て鳥取県知事、総務大臣を歴任。慶応義塾大学教授を経て2017年4月から現職。著書『知事の真贋』(文春新書)。
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2021年01月25日
コロナ不況も手伝い、副業のススメが広がる
コロナ不況も手伝い、副業のススメが広がる。むろんこの道一筋は尊いが、二兎(にと)を追う時代になってきた▼二兎を追う経営戦略「両利きの経営」を唱えるのは、スタンフォード大学のチャールズ・オライリー教授ら。平たく言えば、主力事業の「深掘り」と新規事業の「探索」。大きな企業や組織ほど苦境の時は守りに入りがち。でもコロナ禍はいや応なく、新たなビジネスモデルを迫る。「両利きの経営」は、ニューノーマル時代の生き残り戦略だ▼食や農業分野も同じ。農村に移住した若者らによる「半農半X」「多業」は、その先取りだろう。もともと農のなりわいは「百姓百作」、あらゆる物づくりに精通する。付加価値なんていう言葉ができる前から、加工の技と知恵を持つ▼ウサギつながりで、中国の故事「狡兎(こうと)に三窟あり」も危険分散の教え。中国文学者・守屋洋さんの著書によれば、「狡兎」は賢いウサギ、「三窟」は三つの穴。賢いウサギは、生き延びるため、隠れ場所や策を三つ持つ。守屋さんは経営論に通じるという。1本足経営は弱い。主力商品が好調なうちに、第2、第3の商品開発で経営安定を図れ、と読み替える▼さて孤立を深める官邸のあるじ。新型コロナ対策の二の矢、三の矢がおぼつかない。賢いウサギはいずこに。
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2021年01月28日

どんな町?どんな人? 「地域おこし協力隊」“お試し” 理解深め末長く 北海道ニセコ町
条件不利地などに原則1~3年赴任して農山村の活性化を目指す「地域おこし協力隊」の「お試し」が、各地で広がってきた。これまで任期途中で辞める人も多かったことから、長期赴任前に数日間地域に滞在することで、受け入れ側とのミスマッチを少しでもなくすのが目的だ。導入する農山村は「地域をPRする契機とすることで関係人口の増加にもつながる」と効果を感じている。(尾原浩子)
ミスマッチ防ぎ関係人口増期待
1月中旬、豪雪地域の北海道ニセコ町で広島市から来た会社員の和田健斗さん(23)が、直売所「ニセコビュープラザ直売会協同組合」の奥芝利弘店長から町の農業について聞いていた。「来ないと分からないが、観光だけじゃなく農業が盛んなんだ。冬でも野菜は豊富。夢を応援するし、相談にも乗るよ」と笑顔で話す奥芝店長の言葉に、和田さんは安心した様子だ。
1月から2泊3日程度で協力隊希望者の「お試し」を受け入れ始めた同町。和田さんはその1期生だ。3日間の体験移住を通じ「雪の多さには驚いたが、やっていける。この町の協力隊になりたい」と思いを確かなものにした。自然の中で暮らしたくて協力隊を志望したが、まだ現在の仕事を辞めておらず「お試しなら気軽に参加できる」と考えて応募した。
同町では10年前から協力隊員らと地域づくりを進めており、現在は隊員23人が活躍。任期を終えた21人のうち7割が定住するなど成果を上げている。しかし中には、仕事を辞めるなど退路を断って赴任したにもかかわらず、受け入れ側と双方で意識の齟齬(そご)が生まれる状況もあった。
同町で協力隊を担当する川埜満寿夫さん(42)は移住コーディネーターや野菜ソムリエ、地域の拠点づくりなどさまざまな仕事で生計を立てる奥田啓太さん(35)に相談。1次産業に携わる人や現役隊員との交流、直売所訪問などを企画した。
奥田さんは「ハードルを下げてさまざまな人に来てほしいが、どんな人が来るのか少しでも分かっておけば、受け入れる側の安心感につながる」と実感。川埜さんは「協力隊の希望者は道外出身者が多く、ニセコ町をイメージしにくい人もいる。隊員にならなくても、町の魅力を知るきっかけにしたい」と期待する。
現状では新型コロナウイルス禍で緊急事態宣言が再発令された地域の希望者は参加できないものの、2021年度も感染対策を徹底した上で希望者を受け入れる考えだ。
インターン制新設 総務省
総務省によると、19年度の地域おこし協力隊員は5503人。全国1071の自治体が受け入れている。同省は同年度に「おためし地域おこし協力隊」制度を始めた。実施する自治体には特別交付税措置で支援する。
同省によると、初年度は36自治体が「おためし協力隊」を導入。お試し期間を経て採用に結び付かなかったケースもあるが、新潟県柏崎市は「集落の世話人と話し、雰囲気を確認できる意味は大きい。2泊3日なので会社員でも気軽に参加できる」と効果を感じている。
21年度からは新たに、協力隊に関心を持つ人に2週間~3カ月の任期で活動を体験してもらう「インターン制度」も設ける。お試し、インターンとも自治体や希望者の希望に沿って導入でき、両制度で行政、住民、協力隊のミスマッチを防ぎたい考えだ。
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2021年01月27日

「獺祭」旭酒造が「山田錦」コン グランプリに北嶋さん(福岡県朝倉市) 価格は1俵50万円
日本酒「獺祭(だっさい)」の原料となる酒造好適米「山田錦」の品質を競う全国コンテストで、朝倉市のウィング甘木の北嶋将治さん(47)が最高位のグランプリに輝いた。「獺祭」の蔵元、山口県岩国市の旭酒造が3・6トンを3000万円で買い取る。北嶋さんは「従業員一同、胸を張って言える素晴らしい賞だ」と喜びをかみしめる。
コンテストは「最高を超える最高」をテーマに旭酒造が企画した「山田錦プロジェクト」の一環。2回目の今回は全国各地から127人がエントリーし、品質基準をクリアした63点を対象に米の粒そろいや色つや、着色などを審査した。準グランプリには山田錦栽培研究所(栃木県下野市)の紙本進さんが輝いた。
グランプリを受賞した米は、1俵(60キロ)当たり50万円の高値で取引される。市場価格の約20倍で、旭酒造は「最高を超える最高の獺祭」の原料として活用し、2月中には仕込みが始まる予定だ。
大規模農業を展開するウィング甘木は「山田錦」を約26ヘクタールで栽培。昨年は7月の長雨や台風に見舞われたが、社員15人が力を合わせ、高品質栽培という一つの目標に向けて取り組んできた。
コンテストの受賞結果は、旭酒造が23日、オンライン形式で発表した。ライブ中継で授賞式も行い、旭酒造の桜井一宏社長は「予選の時から、一目見て出来のすごさを感じた」とたたえた。北嶋さんは「地域の先駆けになれた誇りと重圧を受け止め来年度も気合を入れて頑張っていく」と意気込む。
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2021年01月27日
新型コロナの新着記事

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(下) 引きこもり生活一変 新たな居場所 たくましく歩む
「自信はまだないけれど、怖いほど迷いがない。きっと僕は農業が好きなんだと思う」。新型コロナウイルス禍の2020年度に日本農業実践学園に入校した18人の中で最年少、28歳の雙田貴晃さんが、ナスを促成栽培する温床を作ろうと土壌を掘り返しながら、白い歯を見せた。
挫折からしばらく引きこもりの生活が続いた。外の世界に連れ出してくれたのが農業だった。
諦めた司法試験
「理系一家」の末っ子だ。……
2021年01月21日

メロン・大葉 相場低迷 再発令 時短営業響く
緊急事態宣言の再発令に伴う飲食店の時短営業や休業を受け、一部青果物の相場低迷が加速している。メロン「アールス」の日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)は平年の3割安を付け、前回発令された4月上旬と同水準に落ち込む。刺し身のつま物に欠かせない大葉も、業務需要が減って平年の3割安に低迷。小売りでの販売にも勢いがなく、相場を下支えできていない。
小売りも勢い欠く
メロン「アールス」は12月、「GoToキャンペーン」の活況により、上位等級を中心に引き合いが強まり、歳暮需要も加わり高値で推移。だが、年が明けて環境は一変した。中旬(19日まで)の日農平均価格は1キロ799円と平年の32%安で、同4割安を付けた日もある。東京都中央卸売市場大田市場では、初市以降、静岡産の高値が1キロ4320円と止め市の半値に急落し、一時は同3240円まで下げた。
卸売会社は「正月に百貨店や果実専門店に客足が向かず弱含みとなる中、再発令が重なった。ホテルやレストランが営業縮小し、売り先がない。低価格帯を中心にスーパーに売り込むが、上位等級と下位等級の価格差が縮まっていく」と厳しい展開を見通す。
加温にコストがかさむ厳寒期の軟調相場に、産地からは嘆息が漏れる。主産地の静岡県温室農業協同組合によると、交配から収穫までは、 50日程度。収穫時期をずらすことができず、供給の調整は難しい。「コストをかけ、丹精したものに値段が付かないのはつらい。スーパーなどへの販売を通し、家庭での消費拡大に期待したい」と話す。
小物商材も厳しい販売を強いられている。大葉は、1月中旬の日農平均価格が1キロ1690円。元々需要が減る時期ではあるものの、平年の28%安と低迷が顕著だ。
産地は前回の宣言時、巣ごもり需要で好調だったスーパーに販路を切り替えた。ただ、「今回はスーパーからの注文は勢いを欠き、相場を下支えし切れない」(卸売会社)情勢だ。
主産地を抱えるJAあいち経済連は「業務筋が大半を占める契約取引分の販路を新たに確保しないといけない」と説明。春の需要期の販売も見据え、コロナの早期収束を望んでいる。
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2021年01月20日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(中) 国際協力から転身 「まず農家に」 地に足着け精進
吹き抜ける風が肌寒さを増した2020年11月下旬、水戸市にある日本農業実践学園の講義用あずまやで、多品目の野菜農家を目指す吉田誠也さん(30)が、パソコンに野菜の生育データを打ち込んでいた。背後には自身で種から育てた10品目の畑が広がる。
東京大学大学院で植物のバイオテクノロジーや分子生物学を修め、昨春から海外で農業の国際協力に携わるつもりだった。「半年前まではここにいるとは想像できなかった。でも、本当はこれが本来の順序。急がば回れで、新型コロナウイルス禍で僕は農家への道に踏み出す決断ができた」
入校者数が右肩下がりを続けていた実践学園は、研修生がゼロとなった19年度と打って変わり、20年度は18人が入校した。
2021年01月20日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(上) コロナで体感「農業っていい」 多業種から入校生 日本農業実践学園
0度近くまで冷え込んだ晩秋、丘陵地のビニールハウスの中は春のような暖かさで、イチゴの白い花の周りには蜜蜂の羽音が響いていた。「蜂が近くに来ても払わないで。攻撃されるかもしれないから」。水戸市の郊外、新規就農者の専門学校「日本農業実践学園」の研修施設。2カ月前に入校し、1年後にイチゴ農家として独立を目指す小林克彰さん(39)が、実習作業の手伝いに来た妻の瞳さん(37)に語り掛けた。
克彰さんは、芸能人のホームページやコンサート情報を制作していた自営のウェブデザイナーだった。会社員だった30歳の頃、副業として会社が認めていた個人受注が増え、独立を決意した。2年前に工業デザイナーの瞳さんと結婚し、埼玉県三郷市に居を構えた。克彰さんが自宅で仕事、瞳さんが会社勤め、2人の生活は順風だった。
2021年01月19日

緊急事態下、切り花低迷 葬儀縮小し輪菊平年の半値
政府の緊急事態宣言再発令を受け、業務や仏花で使う切り花の相場が大きく下落している。主力の輪菊は平年の半値近くで、カーネーションやスターチスなど他の仏花商材も低迷する。都内卸は「葬儀の縮小が加速して業者からの引き合いが弱く、小売店の荷動きも鈍い」とし、販売苦戦の長期化を警戒する。
日農平均価格(全国大手7卸のデータを集計)を見ると、年明けから軟調だった輪菊の相場は、東京など4都県で緊急事態宣言が発令された後の11日以降、一段と下げが進んだ。11都府県への拡大が決まった13日には1本当たり28円と、昨年4月の宣言発令時以来、9カ月ぶりに30円を割った。15日は35円とやや戻したが、平年(過去5年平均)比28円(45%)安と振るわない。
15日の市場ごとの相場も、前市から小幅に反発した東京こそ39円だったが、大阪と名古屋で27円となるなど、大消費地を抱える宣言発令地域での低迷が目立つ。
輪菊の主産地のJA愛知みなみは「上位等級の値が付かず、平均すると平年より1本当たり30~40円安い。需要の落ち込んだ状況が続けば、来年度は定期契約で販売できる量が減り、作型の変更も検討しなければならない」と訴える。
黄菊の主産県のJAおきなわも「直近まで冷え込みが強く、例年より出荷量が少ないのに相場は上向かない」と、白菊の低迷が黄菊にも影響していると実感する。
スーパーの加工束向けも低調だ。「花持ちする時季で、店の仕入れも進まない」(都内卸)。スターチスは平年比3割安、カーネーションやLAユリは同2割安など、仏花の相場低迷が深刻だ。切り花全体の平均価格も56円と過去5年で最安水準で推移。入荷量は平年以下だが、行事の中止や縮小で需要が減少し供給過多となっている。
別の都内卸は「輪菊は供給量が落ち着けば相場をやや戻す。しかし需要は当面戻らないので、安値の展開は避けられない」と、苦しい販売環境を見通す。
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2021年01月16日
農業分野の技能実習生 1~3月2000人予定 人手不足を懸念 入国停止で農相
野上浩太郎農相は15日の閣議後記者会見で、1~3月に来日を予定していた農業分野の外国人技能実習生らが約2000人に上ると明らかにした。新型コロナウイルスの感染拡大を受け、技能実習生を含む外国人の新規入国は停止中で、生産現場の人手不足が問題となる可能性がある。野上農相は影響を注視しつつ、代替人材の確保を後押しする考えを示した。
昨年12月末時点で今年1~3月に来日予定だった技能実習生らの数を、都道府県やJAなどに聞き取ってまとめた。昨年もコロナ禍による入国制限で3~9月に技能実習生ら約2900人が来日できず、人手不足となる農業経営が出ている。
野上農相は会見で「今後、日本にいる技能実習生らの在留延長や他産業からの雇用などによる代替人材の確保が必要になっていく」と指摘。代わりの人材の確保に必要な経費を支援する「農業労働力確保緊急支援事業」を通じて、生産現場を支える考えを示した。
政府は14日から緊急事態宣言の解除まで、例外的に認めていた技能実習生らビジネス関係者も含めて外国人の新規入国を一時停止している。
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2021年01月16日

実習生ら対象 外国人入国停止 人手不足深刻化も
新型コロナウイルスの感染拡大を受け、政府は14日、ビジネス関係者らに例外的に認めていた外国人の新規入国を一時停止した。この例外措置の対象には技能実習生も含まれており、昨年11月から今月10日までにベトナム、中国などから実習生約4万人が入国していた。入国制限で生産現場の人手不足に拍車がかかる可能性があり、農水省は影響を注視している。
農水省 支援活用促す
政府は、コロナの水際対策の入国制限を昨年10月に緩和し、全世界からのビジネス関係者らの入国を再開。感染再拡大を受けて12月28日には一時停止したが、中国や韓国、ベトナム、ミャンマーなど11カ国・地域のビジネス関係者らの入国は例外的に認めていた。だがこの措置も14日から、宣言解除予定の2月7日まで停止した。
この例外措置の対象には技能実習生も含まれる。出入国在留管理庁の統計によると、例外措置で入国したのは、昨年11月から今年1月10日までに10万9262人。うち技能実習生は4万808人で、全体の37%を占める。留学などを上回り、在留資格別で最多だった。
国別に見ると、ベトナムが3万6343人、中国が3万5106人で、うち技能実習生はベトナムが2万911人、中国が9322人。農業分野の技能実習生も含まれるとみられる。11カ国・地域に限定後の12月28日~1月10日にも、技能実習生として計9927人が入国している。
農水省は、農業にも影響が及ぶ可能性があるとみる。昨年3~9月は2900人の技能実習生らが来日できず、人手不足が問題となった。今年の見通しは不透明だが、「外国人を受け入れている経営は全国的に多い」(就農・女性課)として状況を注視する。一方、同省は技能実習生の代替人材を雇用したり、作業委託したりする際の労賃などを一定の水準で支援する「農業労働力確保緊急支援事業」の対象期間を3月末まで延長。農家らに活用を呼び掛ける方針だ。
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2021年01月15日
[新型コロナ] 緊急事態追加発令 7府県、栃木・福岡も 政府決定
政府は13日、新型コロナウイルス感染症対策本部を首相官邸で開き、コロナ特別措置法に基づく緊急事態宣言の対象に栃木、岐阜、愛知、京都、大阪、兵庫、福岡の7府県を追加することを決めた。発令済みの首都圏4都県と合わせ11都府県に拡大。発令地域の人口は7000万人超で、飲食店への営業時間短縮要請による農産物の需要減少などの影響が広がる可能性がある。
全国拡大には慎重
首都圏4都県以外の都市部でも感染拡大が止まらないことを踏まえた。……
2021年01月14日
[新型コロナ] 営業短縮飲食店の取引先 最大40万円支援
新型コロナウイルス感染拡大に伴う緊急事態宣言の再発令を受け、梶山弘志経済産業相は12日の閣議後記者会見で、営業時間の短縮要請に応じた飲食店の取引先に給付金を支給すると発表した。時短の影響などで1月か2月の売上高が前年同月比で半分以下に減った場合に、中堅・中小企業は40万円、個人は20万円を上限に支払う。JAや卸売業者などを通じて間接的に取引する農家も対象に想定する。……
2021年01月13日

緊急事態宣言 ガイドライン順守を コロナ感染防止で農水省
農水省は緊急事態宣言の再発令を受け、農家に新型コロナウイルス感染拡大防止に向けた業種別ガイドラインの順守を呼び掛ける。ガイドラインは大日本農会のホームページに掲載。日々の検温や屋内作業時のマスク着用、距離の確保などの対策をまとめている。感染者が出ても業務を継続できるよう、地域であらかじめ作業の代替要員リストを作ることも求める。
ガイドラインは①感染予防対策②感染者が出た場合の対応③業務の継続──などが柱。予防対策では、従業員を含めて日々の検温を実施・記録し、発熱があれば自宅待機を求める。4日以上症状が続く場合は保健所に連絡する。
ハウスや事務所など、屋内で作業する場合はマスクを着用し、人と人の間隔は2メートルを目安に空ける。機械換気か、室温が下がらない範囲で窓を開け、常時換気をすることもポイントだ。畑など屋外でも複数で作業する場合は、マスク着用や距離の確保を求める。
作業開始の前後や作業場への入退場時には手洗いや手指の消毒を求めている。人が頻繁に触れるドアノブやスイッチ、手すりなどはふき取り清掃をする。多くの従業員が使う休憩スペースや、更衣室は感染リスクが比較的高いことから、一度の入室人数を減らすと共に、対面での会話や食事をしないなどの対応を求める。
感染者が出た場合は、保健所に報告し、指導を受けるよう要請。保健所が濃厚接触者と判断した農業関係者には、14日間の自宅待機を求める。保健所の指示に従い、施設などの消毒も行う。
感染者が出ても業務を継続できるよう、あらかじめ地域の関係者で連携することも求める。JAの生産部会、農業法人などのグループ単位での実施を想定。①連絡窓口の設置②農作業代替要員のリスト作成③代行する作業の明確化④代替要員が確保できない場合の最低限の維持管理──などの準備を求める。
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2021年01月09日