光秀が面白い。大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」
2020年11月29日
光秀が面白い。大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」。“逆賊”明智光秀を主人公にした以上、通説を覆す意図は想定されたが、ここまでやるとは▼マイナーな戦国武将たちも存在感を放つ。良く描かれたためしのない足利義昭は、貧者に寄り添いこの世から戦を終わらせたいと願う善意の人である。豪放な松永久秀、緻密な筒井順慶しかり。摂津晴門なる初めて聞く人物が、裏で成り上がり者・信長の足を引っ張る。片岡鶴太郎さんの怪優ぶりがあっぱれ▼光秀を描いた肖像画は1枚だけ現存する。大阪府岸和田市でこの春見た。女性のように涼やかな顔立ちで、万の軍を率いた武将のイメージから程遠い。市内の本徳寺が所蔵する。この寺を開基した南国梵桂という僧が落ち延びた光秀の息子との言い伝えが残る。光秀は義昭側近として歴史の表舞台に登場し、前半生はよく分からない▼謎多き人物の極めつけは〈本能寺の変〉である。怨恨(えんこん)説、野望説、黒幕説、暴君討伐説など、その動機を巡ってさまざまな説がある。大河が新たな説を立てるか、楽しみだ。題名の〈麒麟〉とは、王が仁ある政治を行う時に現れる聖なる獣だという。信長の印章は「天下布武」、花押は麒麟の麟をかたどったものとされる▼コロナウイルスと闘う菅首相の元に麒麟は来るか。
おすすめ記事

原動機1台で内張り2層を同時展張 茨城・施設ピーマン栽培の須之内さん
茨城県神栖市でピーマンを施設栽培する須之内康至さん(66)は、内張りカーテン2枚をビニール巻き取り用の原動機1台で張る方法を取り入れ、省力化につなげている。2枚のカーテンの端を固定し、同時に展張する仕組みだ。
カーテンの端固定
須之内さんは、栽培面積95アールのうち、促成作型の30アールで10年ほど前から取り入れている。カーテンを展張する仕組みは、親戚に改良してもらったものだ。
ワイヤ巻き上げ式の内張りカーテンを、3重に被覆する。屋根側の2層のビニールの端を、直径約1センチの鉄パイプにパッカーで固定。下層のビニールは、たるむほどの余裕をもたせてある。
張ったカーテンを確実にしまうために、ビニールを固定した鉄パイプと、下層のビニールを支えるワイヤをひもでつないだ。
カーテンの操作は手で電動スイッチを押すタイプ。午前8、9時に下層のカーテンから開け、午後4時ごろにカーテンを閉める。
「カーテンの開閉は毎日の作業。電動だが操作が一つ減るだけでも、省力的に感じる」と須之内さんは実感する。
ビニールを巻き上げるワイヤが伸びて長くなり、巻き上げが不十分になることがあるため注意が必要という。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=R_dqGEomQ4w
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月12日

生物多様性が危機 今後の国家戦略とは 実効性あるSDGSに WWFジャパン事務局長 東梅貞義氏に聞く
世界の生物多様性の状況が、危機的な状況だ。対策として各国政府は新たな国家戦略を検討している。長年にわたり自然保護に取り組んできた世界自然保護基金ジャパン(WWFジャパン)の東梅貞義事務局長に、生物多様性の現状や復元に必要な取り組みについて聞いた。(聞き手・金哲洙)
弾力的な社会 形成を
──生物多様性の現状をどうみますか。
世界の生き物の豊かさは、50年前の3分の1になっている。WWFが4392種、2万811個体群の脊椎動物を対象に……
2021年01月10日
ドイツでアフリカ豚熱 野生イノシシで確認 各地で価格低下 中国など豚肉輸入停止
野生のイノシシのアフリカ豚熱感染が相次いでいることから、ドイツ養豚業界は、警戒を強めている。2020年9月から21年1月8日現在で、計480症例が報告された。その影響で、主な輸出先を失った同国産の豚肉が欧州域内や国内に大量に出回り、各地で価格を下げている。
同国では20年9月、ポーランドと接する東部地域で野生のイノシシから初めてアフリカ豚熱が検出された。……
2021年01月13日
チバクロバネキノコバエ イチゴで特殊報福島県内初めて
福島県病害虫防除所は14日、いわき市のイチゴ圃場(ほじょう)でチバクロバネキノコバエの被害を県内で初めて確認し、特殊報第3号を発表した。イチゴへの被害は長野、茨城県などに続き7県目。……
2021年01月15日
「災害強い地域」切望 島根・江の川氾濫から半年 移転決定も課題山積
広島県と島根県を流れる1級河川・江の川が豪雨で氾濫してから14日で半年がたち、流域では災害に強い地域づくりを望む声が高まっている。平成以降でも8回の大きな水害に見舞われるなど、危険と隣り合わせの江の川流域。常態化する災害を乗り越えようと、集団移転や堤防建設が進みつつあるが、費用がかさむなど課題は山積みだ。(鈴木薫子)
美郷町
「腹を決めた。もうここには住めん」。江の川と支流の君谷川が流れる島根県美郷町港地区。自治会長を務める屋野忠弘さん(78)ら5戸は、地区内の高台にある安全な場所への集団移転を決断した。
江の川の直近の氾濫は2020年7月14日。同県だけでも8市町で全半壊42戸、床下浸水43戸、水田は213ヘクタールが冠水した。農林水産関係被害額は約20億円に上る。
同地区は川沿いに13戸が点在するが、地形が低い上に堤防がなく、農地冠水などの水害が毎年起きる。7月の豪雨では本流が増水して支流の水をせき止める「バックウオーター現象」が起き、家屋も浸水した。
住み慣れた土地を離れたくないという思いを抱えながらも、次世代を優先させた屋野さん。集団移転は、国の防災集団移転促進事業を利用。同年9月の町議会で請願書が採決され、移転先として地区中心部の集会所近くを希望した。
だが事業は思うように進まなかった。移転先は山を切り崩して造成する必要があるが、費用が想像以上に膨らんだ。造成費用の国の助成上限は1戸約1000万円だが、試算した費用は4倍近い。高齢の移転希望者が多く、高額の持ち出しは厳しい。屋野さんは「中山間地で条件に合う所を探すのは難しい。地形に見合った助成をしてほしい」と切実だ。
同町建設課の担当者は「住民の負担を減らしたいが、町の持ち出しが膨らむ」と頭を抱え、町は費用見直しや別の移転先の選定を進める。屋野さんらは「年寄りが今から新しい場所に溶け込むのは難しい」と考え、地区内での移転を希望している。
堤防建設急ぐ 江津市
2020年7月の豪雨による江の川氾濫で浸水した島根県江津市桜江町(中国地方整備局提供)
長さ194キロ、流域面積3900平方キロの江の川。堤防が必要な区間は154キロに上るが、20年3月末現在で27%に当たる41キロ分の堤防がない。水害が常態化している地域が多いが「堤防規模が大きく建設に時間がかかる」(国土交通省中国地方整備局河川計画課)ため、整備が遅れていた。
20年7月の大規模な氾濫を受け、江津市桜江町では建設が急ピッチで進むことになった。水田やカボチャ畑が冠水した同町小田地区では、今年6月に念願の堤防が完成予定だ。支流の田津谷川流域でも用地・建物調査が進む。
田津谷川が流れる同町川越地区の渡田自治会では、18年の西日本豪雨で被災した若い世帯2組が地区外へ転居するという苦い過去がある。自治会長の小松隆司さん(64)は「(これ以上の災害は)地区が衰退しかねない」と懸念。堤防の早期建設を望む。
<メモ> 防災集団移転促進事業
災害危険区域などの住居を安全な場所へ集団移転させるもので、事業主体は市町村。20年4月に住宅団地の規模要件が「10戸以上」から「5戸以上」に緩和された。移転先の用地取得や造成、住宅建設などの費用は、国が実質94%、市町村が6%を負担する。東日本大震災を除く同事業の実施状況は、35市町村で移転戸数1854。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月14日
四季の新着記事
1991年1月17日、米国主導の多国籍軍がイラクを空爆し、湾岸戦争が始まった
1991年1月17日、米国主導の多国籍軍がイラクを空爆し、湾岸戦争が始まった▼イラクによるクウェート侵略が原因。フセイン大統領は、米国は介入しないと判断していたとされる。イラクは敗北し、米国の「テロとの戦い」でフセイン政権は崩壊した。指導者の判断ミスは国を危うくする▼38年1月16日は日本にとってそうした日である。日中戦争の最中、近衛文麿首相は「国民政府を対手(あいて)とせず」と声明。「和平なんてしないというもので(略)泥沼化」(半藤一利著『昭和史1926―1945』)。日本はその後、三国同盟の締結、南部仏印進駐と対米戦争への道を進む。時の首相も近衛で、石油の全面禁輸など米国の報復に驚いたという▼政治学者の猪木正道さんは『日本の運命を変えた七つの決断』で、太平洋戦争の開戦では「東条よりは近衛の責任の方がはるかに重い」と断罪。「与えられた状況のもとにおいては、最も有利な、最も危険のない道を選ぶのが政治家としての使命」と指摘する。日本のコロナ初感染者の発表から1年。爆発的感染拡大に近い地域が増え、入院に優先順位を付けなければならない事態も生じている。政治家の使命に照らし菅首相の責任はいかほどか▼前出の半藤さんが亡くなった。著作から史実の見方を学んだ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月16日
「全米が泣いた」をうたい文句にした映画「大コメ騒動」が封切られた
「全米が泣いた」をうたい文句にした映画「大コメ騒動」が封切られた▼映画は、大正7(1918)年、富山県で起きた米騒動の史実による。主人公は、米を船に積み込む漁村の「おかか」たち。シベリア出兵を控え、米の価格が高騰する。家族と暮らしを守るため、米問屋に直談判、ついには米の積み出しを阻止しようと体を張って実力行使し、価格引き下げを勝ち取る。「女米一揆」は新聞で取り上げられ、各地の運動に火をつけていく▼働く女性による民主化運動の嚆矢(こうし)だろう。映画でリーダー役のおばばが言い放つ。「理想や主張で腹いっぱいになるんがやったら、誰も苦労せんわ」。資産家や警察の脅しに一歩も引かない。「負けんまい」「やらんまいけ」。命懸けの決起が、社会を動かしていく▼主演の井上真央さんが、公開イベントで語っている。「名の無い人たちの頑張ろうとする力が(社会を)大きく変えていくのだろうなと思う。この時代に勇気を与えられるような作品になっていると思います」。コロナ禍に豪雪被害。井上さんは、大変な時だからこそ、映画や娯楽が「一筋の光」になればと願う▼時は移り、世は空前の米余り。値崩れの危機を前に政府の腰は重い。「令和の米騒動」で、「全米作農家が泣いた」とならぬよう祈る。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月15日
またぞろ巣ごもりに逆戻り
またぞろ巣ごもりに逆戻り。そこで少し頭の体操にお付き合いを▼次に掲げる歌を声に出して読んでいただきたい。「鳥啼(な)く声す 夢覚(さま)せ 見よ明け渡る 東(ひんがし)を 空色栄(は)えて 沖つ辺(へ)に 帆船群れ居ぬ 靄(もや)の中(うち)」。実はこれ「いろは歌」。仮名48文字を1字ずつ織り込んだ作品▼日本語博士・藁谷久三さんの『遊んで強くなる漢字の本』にある。明治36(1903)年、「万朝報」という日刊新聞が募集した「いろは歌」の傑作である。次は回文の秀作。「時は秋 この日に 陽たづねみん 紅葉(こうえふ)錦の葉が 龍田川(たつたがは)の岸に殖(ふ)え 鬱金(うこん)峰づたひに 陽の濃き淡(あは)きと」。全部仮名にして、下から読んでほしい。そのすごさが分かる▼作者や出典はよく分かっていない。だが日本語博士をもってしても、この詩文の長さと出来栄えに匹敵する回文は見たことがないという。「たけやぶやけた」に比べるのは失礼だが、万葉の趣さえ漂う。個人的に好きなのは、不謹慎ながら故立川談志師匠を読み込んだ「だんしがしんだ」▼ネットの回文専門のサイトにはコロナ禍を読んだ傑作が多い。「策ないわ 探すも菅さ ワイ泣くさ」「菅の危機警告 小池聞き逃す」。その見事さに脱帽。脳トレに回文作り、あなたもいかがですか。憂さ晴らしにもうってつけ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月14日
冬将軍というより白魔である
冬将軍というより白魔である。「家から出るのも大変」。富山の親戚から悲痛な声が届く▼北陸や新潟などは、死傷者も後を絶たず、自衛隊派遣の非常事態に。その惨状はさながら現代の『北越雪譜』である。同書は、越後の商人で文人でもあった鈴木牧之による迫真の豪雪ルポ。江戸のベストセラーにして名著である。雪国に住む者の恨み節が随所に出てくる。意訳するとこんな具合だ▼暖かい地方の人は銀世界をめで、舞い散る雪を花や宝石に例え、雪見の宴などを楽しむが、毎年3メートルもの雪に覆われるこちらの身にもなってほしい。楽しいことなどあるものか。雪かきで体は疲れ果て、財産も費やし、苦労の連続だ─。今も昔も変わらぬ豪雪地帯の悲哀だろう▼コロナ禍や雪害に苦しむ人たちに一足早く春を届けようと、富山市花き生産者協議会が、富山駅の自由通路を特産の「とやま啓翁桜」で飾り、道行く人を楽しませている(13日まで)。産地の山田村花木生産組合では、豪雪で配送に影響が出たが、今月約5万本の出荷を見込む。「人々の心に安らぎを届けたい」と石崎貞夫組合長▼暖かい部屋で7、8分咲きにした後、涼しい場所に移すと1カ月は花を楽しめるという。凍(い)てつく冬に咲く桜のように、つらく厳しい時を乗り越えたい。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月13日
二度目の緊急事態宣言
二度目の緊急事態宣言。都心はひっそりかんとしている▼東京郊外の拙宅周辺は、昨年後半から住宅建設ラッシュ。地元通の酒屋の店主いわく、優に100棟は建つとか。都心脱出の流れなのか。入居も始まったが、巣ごもりのせいでにぎわいはない。赤ん坊の泣き声もとんと聞かない▼昨今、赤ちゃんの泣き声を耳障りに感じる人が増えた気がする。飛行機や列車で露骨に嫌な顔をする人を何度も目にした。「騒音」と感じるか、ほほ笑ましく感じるか。あなたはどちらだろう。そもそも赤ちゃんの泣き声は、言葉の代わりに発する緊急サイン。「おなか減った」「おしっこ漏れそう」「なんだか熱っぽいよ」▼親に分かってもらおうと必死に伝える。だから不思議なことに、その泣き声は、救急車や目覚まし時計のアラーム音などと同じ周波数を含んでいるという。しかも世界共通。成長するに連れ、声帯は変わるが、生まれたては人類皆同じ。サイレンと同じだから不快になって当たり前。「子どもは泣くのが仕事」。そんな大事な「仕事」を温かく見守り、手を差し伸べ合う社会であってほしい▼ところでコロナで窮状にあえぐ国民の悲鳴や泣き声は、政府にちゃんと届いているのだろうか。よもや「騒音」封じの緊急事態宣言再発令ではあるまいが。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月12日
〈就職氷河期〉のように特定の時代に遭遇したがゆえに不利を被る世代がある
〈就職氷河期〉のように特定の時代に遭遇したがゆえに不利を被る世代がある。今の大学生がそうかもしれない▼入学式は自粛、授業はオンライン、サークル活動は停滞、アルバイトもできない。たまに友人と盛り上がったら〈自粛警察〉の目が光り、年配者からは〈無症状感染〉を疑われる。だが未来は閉ざされてはいない。「機会は誰にでも平等であると固く信じている」。世界を変えたスティーブ・ジョブズの言葉。ピンチはチャンスへの入り口と信じよう▼コロナ下の明るいニュースに困窮学生に食料支援と励ましのメッセージを送る活動がある。新潟県燕市が昨年春、帰省できない学生に行い、他の自治体やJAなどの協同組合にも広がった。中には支援を受けた若者が人手不足の農作業を手伝う動きも生まれた。そんな活動に汗をかくJAふくしま未来が昨年暮れ、政府の「ジャパンSDGsアワード」特別賞を受賞した。地域貢献以上の可能性を感じさせる▼若い世代との関わりづくりは農の未来に種をまくはずだ。きょう成人の日。各地で成人式の中止・延期が相次ぐ。本人はもとより両親、祖父母まで晴れの日を迎えられない落胆はいかばかりか。週末には大学入学共通テストも控える▼せめて寒気が収まり、穏やかな日であってほしい。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月11日
丑(うし)年は芽が出ようとする年、耐える年の諸説ある
丑(うし)年は芽が出ようとする年、耐える年の諸説ある。今年はどう見ても辛抱の年か。その先に希望が芽吹いてほしい▼あまり話題に上らないが、夏には東京五輪・パラリンピックが控えている。国産食材と花のブーケ、そしておもてなしの心で世界中のアスリートと訪日外国人を笑顔にしたい。初夢のことである。坂本九さんの「上を向いて歩こう」が世に出たのは1961年の丑年。人間でいえば今年還暦を迎える。少年まさに老いやすし。大都会に生きる地方出身の若者たちの応援歌で、今なお励まされている人は少なくない▼九さんが日航機墜落事故で亡くなったのは、くしくも丑年の1985年。感染症分類で新型コロナウイルスより危険度が高いペストは、明治時代に国内でも流行した。丑年の1901年、警視庁が屋外での跣足(せんそく)(裸足)歩行禁止令を出している。願わくば後世、コロナ終息の丑年と刻まれたい▼牛は昔、農耕になくてはならぬ役牛、今はミルクやブランド牛肉として地域農業の屋台骨になっている。「牛に引かれて善光寺参り」は思いがけず良い方向に導かれること。年末の本紙記事で、米食が免疫力を高めてコロナ感染を抑制するとの研究論文を知った▼消費拡大に導いてほしい。コロナ禍に隠れているが、米需給も〈勝負の1年〉になる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月10日
朝はラジコで郷里のローカルニュースを聞く
朝はラジコで郷里のローカルニュースを聞く。彼我の決定的な違いは天気予報で、「風雪波浪注意報・警報」の久しく失念していた気象用語が頻繁に耳に入る▼この時季、ドラマ「北の国から」で、突然の猛吹雪に遭難した純と雪子をドサンコが見つけるシーンを思い出す。近づいてくる馬の鈴の音が2人の命を救った。馬は地吹雪でも立ち往生せず、そりは雪道にはまらない。自動車はそうはいかない。馬そりを操る笠松のじいさんは開拓民、名優大友柳太朗が演じた。「なつぞら」よりもリアルな人物像であり、偏屈でけちで顔が酒焼けしている。18年間苦労を共にした愛馬を手放した夜、五郎の前で涙を浮かべるシーンが心を打つ▼年末から日本列島は殊の外寒い。農作物への雪害に気を付けたい。菅首相が2度目の緊急事態宣言。慎重姿勢を転じたが、1都3県・業種限定で意図した〈強いメッセージ〉が国民に伝わるか。ここは命を守り抜くとの迫力を見たい▼昨年5月の宣言解除の際、安倍首相は「日本モデルの力を示した」と胸を張った。強制を伴わなくても3密回避の行動変容を国民がやり抜いたことへの自負だろう。しかし今は〈コロナ慣れ〉と〈背に腹は代えられぬ〉の現実がもう一方にある▼寒波と3波が覆う列島に鈴の音は近づくか。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月09日
池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』には、盗っ人でも守るべき「三か条」がある
池波正太郎の小説『鬼平犯科帳』には、盗っ人でも守るべき「三か条」がある▼「殺さず、犯さず、貧しきからは盗(と)らず」。主人公の火付盗賊改方長官・長谷川平蔵は、「三か条」を守る盗っ人には寛容で、平然と破る悪党には容赦がない。幼少の頃からの苦労が醸す、人情味あふれる捕物帳である。権力を持つ巨悪に目をつむりがちな世の中への憤りもあってか、池波文学は多くのファンを引き付ける▼司法関係者にも人気がある。元東京高裁判事で弁護士の原田國男さんは、特に若い裁判官に薦める。「悪い奴は徹底的に懲らしめるが、可哀想(かわいそう)な奴は救うという精神で一貫している。ここがいい」(『裁判の非情と人情』岩波新書)。裁判官は人を裁く権力を持つ。だからこそ、「可哀想だなと思ったら、量刑相場でなくとも、軽い刑や執行猶予にすればよい」。厳粛な司法の世界で生きる人情味▼きょうは「一か八か」に見立てた「勝負事の日」。江戸時代の賭け事「丁半ばくち」の丁と半の漢字の上部分が「一」と「八」に見えることから使われるようになったとも伝わる。新型コロナには「勝負の3週間」「真剣勝負の3週間」と連敗し、政府は1都3県を対象に緊急事態宣言の発令を決めた▼貧者も弱者も苦しめる“巨悪”に、手加減はいらない。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月08日
中国の唐の時代に孫思邈(そんしばく)という仙人がいた
中国の唐の時代に孫思邈(そんしばく)という仙人がいた。大みそかになると、生薬を入れた袋を酒に浸し、元旦の朝に飲んでいた▼おとそである。いつまでも若くて元気なのは、あの酒のせいではないかとうわさとなり、正月の習慣が生まれた。一説では、仙人のいおり「とそ庵」にちなんで、呼ばれるようになった。「そ」の漢字は「蘇」で「よみがえる」を意味する。つまり、病魔に打ち勝って新しくよみがえる願いを込めた。『身近な「くすり」歳時記』(鈴木昶著)で知った▼いくら薬といっても、飲み過ぎれば毒となる。おせち料理をさかなにやっているうちに、空のちょうしが並ぶ。日常生活を一変させた、新型コロナへの恨みと一緒に飲み干す。体にいいわけがない。そんな凡人の習性を見通すように、体調を整える七草がゆの登場である▼きょうは、七種(ななくさ)の節句。7種類の若草をかゆに入れて食べると、病気にかからず、邪気を払うという中国伝来の習俗が伝わった。平安中期に宮中行事として取り入れられ、江戸後期に庶民の生活に広まった。〈セリ、ナズナ、オギョウ、ハコベラ、ホトケノザ、スズナ、スズシロ、これぞ七草〉。五七五調のリズムもいい▼雪国は大雪、首都圏は緊急事態宣言へ。門松を外し、正月気分もほどほどに、気を引き締める。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2021年01月07日