ウンカで不作 中山間は苦闘 離農加速の懸念 山口
2020年12月03日

トビイロウンカの被害で枯れた稲が横たわる全面枯れの田んぼ。前田さんは来年の作付けへ前を向く(山口県下関市で)
山口県は2020年産米の作況指数(10月15日現在)が過去最低の73「不良」を記録した。原因は稲の害虫トビイロウンカ。米は需給の緩和で21年産では大幅な減産が求められている。しかし条件不利地の中山間地では、未曽有の不作で高齢者の離農がさらに進みかねず、食料安全保障の根幹となる生産基盤の弱体化が懸念される。(鈴木薫子)
「今年はコンバインのエンジンをかけずに終わってしまったよ」。県北西部の下関市豊北町で、約3ヘクタールに「きぬむすめ」を作付けした植山勝利さん(75)は、初めて米の収穫ゼロを経験した。
県内全域でトビイロウンカが大発生。県は7月16日に注意報、8月3日に警報を出して基幹防除と追加防除を呼び掛けた。しかし台風接近などもあり田が坪枯れや全面枯れの被害に遭った。
植山さんは7月末にトビイロウンカを初確認。昨年の2倍の4回、株元にいる幼虫への防除を実施した。8月末にはJA山口県の産業用無人ヘリコプターによる防除にも頼った。防除費用に45万円をかけたが、抑えられなかった。
例年の10アール収量は540キロ。だが19年産もウンカ被害で収量は300キロだった。米作りを始めて43年、2年連続の被害で「自分の家で食べる米がないなんて初めて」という。経験のない不作に多くの生産者が戸惑う。
同じく下関市豊北町で米を作る前田好和さん(84)は「今年で営農をやめる人もいる」と仲間の離農を残念がる。ウンカの被害は「目に見える速さで枯れていくようだった」。「ひとめぼれ」や「きぬむすめ」を約2ヘクタールで作るが、10枚のうち8枚の田が全面枯れした。実がすかすかで枯れた稲がなぎ倒された無残な状態が今も残る。
山口県農業共済組合が把握する被害面積は2816ヘクタール。県内の20年産主食用作付面積の2割相当となる。
全国で主食用米から非主食用米や他品目への転換を促す動きが強まる中、山口県内でも21年産米の作付け意向調査が進む。だが、作付面積は7年連続で減少。自然減から県が示す生産目安にも届かない。
中山間地が多い上、県内の農業就業人口の平均年齢は71・4歳と、全国平均の67歳を上回る。稲作が盛んな下関市豊北町も高齢化率は54・9%で担い手が集まらない。
新潟大学の吉川夏樹准教授は多面的機能を持つ農地の今後について「病害虫だけでなく災害や自由貿易、高齢化など農業は厳しい局面にあり特に中山間地は過渡期。国民一人一人が農地存続に危機意識を持たなければならない」と指摘する。
JAは、農家の生産意欲をつなぎ留めるためトビイロウンカの防除を見直す。箱施用剤の処理量が不十分だった可能性もあるとして農家の注文量を確認したり効果が期待できる薬剤を選んで農家に提案したりする。
耕作放棄地の増加を目の当たりにする植山さんと前田さんは、今年と同じ面積の作付けを考えている。地域の田を守りたい一心で前を向くが、「もう1年被害に遭ったらやめるかもしれない」。正念場の1年になる。
「今年はコンバインのエンジンをかけずに終わってしまったよ」。県北西部の下関市豊北町で、約3ヘクタールに「きぬむすめ」を作付けした植山勝利さん(75)は、初めて米の収穫ゼロを経験した。
県内全域でトビイロウンカが大発生。県は7月16日に注意報、8月3日に警報を出して基幹防除と追加防除を呼び掛けた。しかし台風接近などもあり田が坪枯れや全面枯れの被害に遭った。
植山さんは7月末にトビイロウンカを初確認。昨年の2倍の4回、株元にいる幼虫への防除を実施した。8月末にはJA山口県の産業用無人ヘリコプターによる防除にも頼った。防除費用に45万円をかけたが、抑えられなかった。
例年の10アール収量は540キロ。だが19年産もウンカ被害で収量は300キロだった。米作りを始めて43年、2年連続の被害で「自分の家で食べる米がないなんて初めて」という。経験のない不作に多くの生産者が戸惑う。
同じく下関市豊北町で米を作る前田好和さん(84)は「今年で営農をやめる人もいる」と仲間の離農を残念がる。ウンカの被害は「目に見える速さで枯れていくようだった」。「ひとめぼれ」や「きぬむすめ」を約2ヘクタールで作るが、10枚のうち8枚の田が全面枯れした。実がすかすかで枯れた稲がなぎ倒された無残な状態が今も残る。
山口県農業共済組合が把握する被害面積は2816ヘクタール。県内の20年産主食用作付面積の2割相当となる。
全国で主食用米から非主食用米や他品目への転換を促す動きが強まる中、山口県内でも21年産米の作付け意向調査が進む。だが、作付面積は7年連続で減少。自然減から県が示す生産目安にも届かない。
中山間地が多い上、県内の農業就業人口の平均年齢は71・4歳と、全国平均の67歳を上回る。稲作が盛んな下関市豊北町も高齢化率は54・9%で担い手が集まらない。
新潟大学の吉川夏樹准教授は多面的機能を持つ農地の今後について「病害虫だけでなく災害や自由貿易、高齢化など農業は厳しい局面にあり特に中山間地は過渡期。国民一人一人が農地存続に危機意識を持たなければならない」と指摘する。
JAは、農家の生産意欲をつなぎ留めるためトビイロウンカの防除を見直す。箱施用剤の処理量が不十分だった可能性もあるとして農家の注文量を確認したり効果が期待できる薬剤を選んで農家に提案したりする。
耕作放棄地の増加を目の当たりにする植山さんと前田さんは、今年と同じ面積の作付けを考えている。地域の田を守りたい一心で前を向くが、「もう1年被害に遭ったらやめるかもしれない」。正念場の1年になる。
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広島県は黒毛和種種雄牛「花勝百合」を県基幹種雄牛に選抜した。同牛は、現場後代検定で枝肉成績の脂肪交雑基準(BMS)ナンバーが8・8と、県基幹種雄牛で歴代1位を記録。枝肉重量も県内トップ級でBMS、産肉能力を兼ね備えた牛として、県は活躍を期待。高い能力と、和牛のルーツといわれる広島血統の濃い牛としてアピールする。(鈴木薫子)
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北海道大学大学院などの研究グループは18日、粉ミルクを発酵させた「発酵代用乳(FMR)」を安定して作る方法を開発したと発表した。子牛に与えたところ下痢症を軽減。“牛用のヨーグルト”である発酵乳は、子牛の下痢対策に有効といわれてきたが、原料に生乳や初乳を使うために発酵品質が安定しないのが課題だった。作り方を動画投稿サイトで公開し、健康な子牛の育成に役立ててほしいと期待する。
FMRの材料とする代用乳は脂肪分20%以上の製品を勧め、安定して発酵させるために湯で3・5倍に薄める。7リットル作る場合は、代用乳2キロをふた付きのバケツに入れて乳酸菌製剤を70グラム(全量の1%)、50度のお湯を5リットル投入。泡立て器で撹拌(かくはん)した後、ふたをして20~25度の室温に保てる場所に置く。1日1回撹拌し、1、2日で完成する。水素イオン指数(pH)5・3以下が目安だ。
完成したFMRは濃いため、さらに湯で倍に薄めて与える。1回の給与量の目安は体重の5%。体重40キロの子牛の場合は2リットル与えるため、代用乳を3・5倍に薄めて発酵させたFMR1リットルとお湯1リットルを混ぜ、40度に温めて与える。
研究グループは、開発したFMRを生後0~3日齢の子牛に毎日哺乳。実験的にロタウイルスに感染させたところ、下痢症は起きたが、重篤な水様性下痢はほとんどなく症状を抑えたという。
ロタウイルスやクリプトスポリジウムによる下痢が発生していた農場の子牛では、代用乳を与えた子牛よりも腸炎の発生数や死亡例が半分以下に減った。さらに、FMRを与えた子牛は、下痢を発症しても治療期間が短くなり診療回数や治療費が抑えられたという。
同大学院によると、子牛は免疫機能が未熟のため細菌やウイルス、寄生虫による感染性の下痢にかかりやすく、死ぬこともある。対策の一つとして、乳酸菌やビフィズス菌など有益な微生物を含む発酵乳が長年利用されてきたが、一部の農家に限られるという。生乳や初乳の発酵過程で雑菌が増えて安定しないことなどが課題だった。
FMRを子牛の哺乳に利用した報告はあったが、下痢の症状を軽減する効果は検証されていなかった。FMRの作り方は動画投稿サイト「ユーチューブ」で公開している。今後は下痢症だけでなく、他の疾病に対する効果も検証していく。
研究は同大学院獣医学研究院とNOSAI道東、北海道立総合研究機構畜産試験場、雪印種苗が共同で研究した。
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2021年01月19日
〈百日の説法屁(へ)一つ〉
〈百日の説法屁(へ)一つ〉。菅首相が昨年12月14日の夜、8人で会食したとの報に接し頭に浮かんだことわざである▼100日にわたり仏の教えを説いた坊さんがうっかりおならをしたことで、ありがたみが台無しになったという話。長い間の努力もわずかな失敗で無駄になることの例えである▼首相はこの日「GoToトラベル」の全国一斉停止を発表した。遅きに失したとはいえ、コロナ感染防止優先へとかじを切る姿勢を示したように見えた。その直後の会食。政府が「原則4人以下で」と呼び掛けているのを尻目に、である▼今、国会議員の会食が問われている。首相が批判された後も大人数でのそれが相次いで発覚。各党は飲食を伴う会合の自粛などを呼び掛けている。きょう召集の国会に政府は、コロナ特措法などの改正案を提出する。時短営業の要請に応じない事業者などへの罰則を設けるという。〈身をもって範を示す〉。松下幸之助の言葉である。「(そういう)気概のない指導者には、人びとは決して心からは従わない」(『松下幸之助一日一話』)▼感染対策に強制力を持たせる決定を国会が下すのであれば、自らを厳しく律していると分かる形で示すことが肝要である。そうでなければ立法府への国民の信頼が揺らぎ、法案への支持は得られまい。
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2021年01月18日

通常国会きょう召集 コロナ対策 最重点
第204通常国会が18日、召集される。新型コロナウイルス対策が最大の焦点で、政府・与党は対策を盛り込む2020年度第3次補正予算と21年度当初予算の成立を急ぐ。緊急事態宣言を受けた農業への影響を巡っても論戦が繰り広げられる見通しだ。政府は農水省の4法案の他、企業による農地所有特例の延長を盛り込む国家戦略特区法改正案、地域的な包括的経済連携(RCEP)の承認案などを提出する。
農林関係法案審議 予算成立後に本格化
会期は6月16日までの150日で、18日は菅義偉首相の施政方針演説などを行う。20~22日には衆参両院の本会議で各党が代表質問する。
政府・与党は補正予算の月内成立、当初予算の年度内成立を目指す。補正予算は農林水産関係で1兆519億円を計上。園芸農家向けの「高収益作物次期作支援交付金」や感染防止への投資を支援する「経営継続補助金」など、コロナ対策を盛り込んだ。当初予算の農林水産関係は前年並みの2兆3050億円とした。
農林関係の法案審議は予算成立後に本格化する見通しだ。農水省は畜舎の建築基準の特例措置を盛り込む新法案や、輸出促進に向けた事業者の投資を支援する「農業法人投資円滑化特別措置法」の改正案など4法案を提出、早期成立を目指す。
国家戦略特区法改正案は、特区の兵庫県養父市で認めている一般企業の農地所有特例を2年延長するのが柱だ。同特区諮問会議の民間議員らが求めていた特例の全国展開は見送った。審議では、農地取得の必要性の他、諮問会議の在り方も議論になる可能性がある。
RCEPは昨年、日本、中国、韓国と東南アジア諸国連合(ASEAN、10カ国)など15カ国で署名。農産物の重要5品目は関税削減・撤廃の対象から除外したが、中韓とは初めての経済連携協定(EPA)となるため、影響の検証が課題になる。
議員立法では、狩猟者の技能講習の免除措置の延長などを盛り込む鳥獣被害防止特措法改正案や、過疎地域を財政支援する過疎地域自立促進特措法が3月末に期限を迎えることを受けた新法案が提出される予定だ。
7月には東京都議会議員の任期満了、7月23日には東京五輪の開幕を迎えるため、会期の延長は難しい見通し。政府・与党は提出法案の会期内成立を目指す。
衆院議員の任期満了が10月に迫る中、衆院解散の時期も焦点になる。4月25日には、吉川貴盛元農相の議員辞職と羽田雄一郎元国土交通相の死去に伴う衆参の補欠選挙が行われる。こうした政治日程も絡むとみられるが、コロナの収束は不透明で、菅首相の解散戦略は依然見通せない。
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2021年01月18日
地域の新着記事

ダンスで「広島レモン」PR テレビ局企画動画で配信 果実連が参加
県を代表する特産かんきつ、レモンをダンスでPRする企画が始まった。中国放送(RCC)のレモンを冠した公式キャラクター「レモナルド・レモンチ」のオリジナルダンスを視聴者が踊り、動画を撮影して投稿する参加型ダンスイベントだ。……
2021年01月22日

厄介者「カヤの実」 ナッツ、食用油 人気加工品に 伐採「待った」 奈良県曽爾村
奈良県曽爾村は、村に群生するカヤの実を資源として見直し、地域活性化につなげる。ナッツや食用油など全国から注文が集まる加工品を相次いで開発。実の回収や加工で村に新たな仕事を生み出し、食べ方などの伝承を通して村民の交流も促す。かつて道を油だらけにしていた厄介者の実を、地域振興の“潤滑油”として生まれ変わらせた。
「いってカリカリのおやつにして食べるのが、子どもの時は大好きだった」。……
2021年01月22日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(下) 引きこもり生活一変 新たな居場所 たくましく歩む
「自信はまだないけれど、怖いほど迷いがない。きっと僕は農業が好きなんだと思う」。新型コロナウイルス禍の2020年度に日本農業実践学園に入校した18人の中で最年少、28歳の雙田貴晃さんが、ナスを促成栽培する温床を作ろうと土壌を掘り返しながら、白い歯を見せた。
挫折からしばらく引きこもりの生活が続いた。外の世界に連れ出してくれたのが農業だった。
諦めた司法試験
「理系一家」の末っ子だ。……
2021年01月21日

地元産トロロアオイを伝統和紙に 産地復活へ技術磨く 島根県浜田市・農家ら委員会
国の重要無形文化財やユネスコ無形文化遺産に指定された伝統工芸品「石州半紙」の産地、島根県浜田市三隅町は、和紙の粘着剤として使うトロロアオイの産地復活に取り組む。2020年は10戸が約5アールで栽培し、140キロを収穫した。地元の和紙職人が求める品質に向けて栽培技術を高めながら、23年までに生産量を倍増させ、安定供給で特産品と伝統文化の伝承を支える。
トロロアオイは「花オクラ」とも呼ばれるアオイ科の植物で、根から出る粘液が和紙の粘着剤となる。地元では1950年代まで栽培されていたが、近年は主に茨城県産を使っている。
活動の中核を担うのは、同町黒沢地区の住民でつくる黒沢地区まちづくり委員会。2012年に地域振興の一環でトロロアオイの特産化に乗り出した。種を入手して栽培したが、当初は和紙職人が求める根が太く長いものができなかった。
生産者の野上省三さん(81)は「栽培方法が分からず手探りだった」と振り返る。栽培講習会で畝の立て方や病害虫対策、芽かきなどを共有し、栽培技術を高めた。
今は職人からの評価も上々だ。和紙工房4戸でつくる石州和紙共同組合の組合長を務める川平正男さん(79)は「年々レベルが上がっている。高品質な地元産が安定供給されればありがたい」と歓迎する。
国内のトロロアオイ産地は減少している。19年には、主産地の茨城県の生産者が生産終了を検討していることが報道された。また、宅配便や郵便料金の値上げで輸送コストも上がり、和紙職人の地元産への期待は大きい。
同委員会は、地元の需要量を350キロと算定。23年に20戸で生産量300キロを目指す。齋藤正美会長は「地域一丸で、和紙作りとトロロアオイ栽培の双方を次世代につないでいきたい」と意欲を見せる。
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2021年01月21日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(中) 国際協力から転身 「まず農家に」 地に足着け精進
吹き抜ける風が肌寒さを増した2020年11月下旬、水戸市にある日本農業実践学園の講義用あずまやで、多品目の野菜農家を目指す吉田誠也さん(30)が、パソコンに野菜の生育データを打ち込んでいた。背後には自身で種から育てた10品目の畑が広がる。
東京大学大学院で植物のバイオテクノロジーや分子生物学を修め、昨春から海外で農業の国際協力に携わるつもりだった。「半年前まではここにいるとは想像できなかった。でも、本当はこれが本来の順序。急がば回れで、新型コロナウイルス禍で僕は農家への道に踏み出す決断ができた」
入校者数が右肩下がりを続けていた実践学園は、研修生がゼロとなった19年度と打って変わり、20年度は18人が入校した。
2021年01月20日

[農と食のこれから 二つの学校から]後編(上) コロナで体感「農業っていい」 多業種から入校生 日本農業実践学園
0度近くまで冷え込んだ晩秋、丘陵地のビニールハウスの中は春のような暖かさで、イチゴの白い花の周りには蜜蜂の羽音が響いていた。「蜂が近くに来ても払わないで。攻撃されるかもしれないから」。水戸市の郊外、新規就農者の専門学校「日本農業実践学園」の研修施設。2カ月前に入校し、1年後にイチゴ農家として独立を目指す小林克彰さん(39)が、実習作業の手伝いに来た妻の瞳さん(37)に語り掛けた。
克彰さんは、芸能人のホームページやコンサート情報を制作していた自営のウェブデザイナーだった。会社員だった30歳の頃、副業として会社が認めていた個人受注が増え、独立を決意した。2年前に工業デザイナーの瞳さんと結婚し、埼玉県三郷市に居を構えた。克彰さんが自宅で仕事、瞳さんが会社勤め、2人の生活は順風だった。
2021年01月19日

[活写] “最辛”の熊対策
青森県中泊町で木炭の生産を手掛けるツリーワークは、インド原産の激辛トウガラシ「ブート・ジョロキア」と木酢液を使った熊の忌避剤を開発した。熊の出没が多い2020年は、全国から問い合わせが相次ぎ、受注が前年の10倍に増えたという。
商品名は「熊にげる」。ジョロキアから抽出した辛味成分と木酢液を混ぜた黒い液体だ。臭いが漏れ出るよう上部に穴を開けたペットボトルに入れ、畑の近くにつるして使う。
炭・木酢液を研究する谷田貝光克東京大学名誉教授の助言を受け16年に開発。青森や秋田、長野県などのトウモロコシ畑やリンゴ園で試験し、熊や猿に対する効果を確認した。
ジョロキアの施設栽培にも取り組み、製品のコストダウンに成功した。現在はハウス2棟で、製品2トン分の原料を収穫する。価格は1リットル入りで1万円。1ヘクタールの畑で約1年間使える量という。
同社代表の佐々木嘉幸さん(82)は「注文が増えている。原料が足りないので、栽培に協力してくれるよう農家に呼び掛けたい」と話す。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=1MJ-IJGQgDc
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2021年01月17日

あす阪神・淡路大震災26年 記憶風化させない
未曽有の被害をもたらした阪神・淡路大震災の発生から、17日で26年を迎える。月日の経過に伴い震災の記憶が風化する中、本紙が当時報じた現場を改めて訪れた。関係者は「当時の様子を知る人はもうほとんどいない」と口をそろえる。震災の記憶をいかに次代へ継承するか。改めて問われている。(北坂公紀)
助かった命「奇跡」 兵庫県西宮市・卸売市場
地震発生から3日後の1995年1月20日付の1面。激しく倒壊した木造建築物を捉えた写真が、地震の規模の大きさを物語る。撮影されたのは兵庫県西宮市の西宮地方卸売市場だ。
「スーパーのバイヤーと取引していたら、不意に強い衝撃が走り、天井が落っこちてきた」。当時、同市場で青果卸・中善を営んでいた前田裕司さん(65)は振り返る。
震災当日は午前4時ごろから市場で働いていた。地震発生時は、地面から突き上げられるような縦揺れの衝撃が大きく「店にトラックでも突っ込んだのかと思った。はじめは何が起こったのか分からなかった」。
木造瓦屋根で2階建てだった建物は倒壊。ただ、山積みだった荷物の上に屋根がかぶさる形で、地面との間にわずかな空間が生まれた。「命が助かったのは本当に偶然だった」。奇跡的に犠牲者は出なかったという。
当初は再建を目指したものの、膨大な建設費などを前に話はまとまらず、2001年に閉場となった。
跡地にはスーパーなどが立ち並び、当時の面影はほとんど残っていない。前田さんは「当時の様子を知る人はもうほとんどいないと思う」と指摘する。
神戸市・農林中金事務所
「農林中央金庫神戸事務所も無残な姿に」。発生1週間となる1995年1月24日付の近畿・北陸面。3階部分が押しつぶされ、大きな被害を受けたビルの写真が説明文と共に掲載された。
神戸市内にある神栄(株)の本社ビルで、当時は1、2階に農林中金の事務所が入っていた。入社7年目だった同社執行役員の中西徹さん(56)は「当時、3階が職場だったが、出勤前だった。地震が3時間後だったら、おそらくつぶされていた」と話す。ビルは掲載4日後の28日から解体が始まり、1998年には跡地に新たにビルが建てられた。
農林中金の事務所は、95年2月からは仮設店舗で、同年7月からは仮店舗に移転して営業を再開。建て替え後のビルにも戻ったが、2002年に大阪支店に統合された。農林中金は「大阪支店でも当時を知る人は少なくなり、現在では3人しかいない」と話す。
近年、大規模な災害が頻発し、過去の災害の「記憶」と「教訓」から学ぶことは多い。今後起こる災害で被害を少しでも抑えるために、薄れつつある震災をどう次代に継承するかが問われている。
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2021年01月16日

市来農芸(鹿児島)が連覇 和牛甲子園オンラインで最多33校
和牛生産に情熱を注ぐ全国の農業高校生“高校牛児”が集い、日頃の飼養管理の成果や肉質を競う「和牛甲子園」が15日、オンラインで開かれた。新型コロナウイルス禍による休校や活動制限を乗り越え、全国19県から過去最多の33校が出場した。頂点となる総合優勝には、昨年に続き、鹿児島県立市来農芸高校が輝き、2連覇を達成した。
JA全農の主催で、今回が4回目。……
2021年01月16日

農業施設被害5000棟超 大雪で東北・北陸など
記録的な大雪で東北3県と新潟、北陸3県では13日までに、合わせて5000棟を超えるパイプハウスなど農業施設の損傷、損壊の被害が報告された。除雪が追い付かず全体を把握し切れていないため、被害はさらに拡大する恐れがある。
各県が12日時点で把握した被害状況によると、岩手県では県南部を中心にパイプハウス2346棟に被害が出た。秋田県ではパイプハウスなどの農業施設1019棟が被害を受け、農作物を含めた被害額は3億円を超えた。山形県はサクランボや西洋梨など約65ヘクタールで枝折れなどの樹体被害や、パイプハウス474棟の被害が報告された。
新潟県は13日、大雪・暴風雪による農業の被害状況を発表。昨年12月14日から今年1月12日までの被害を取りまとめ、22市町村でパイプハウス785棟が損傷・損壊した他、6市でライスセンターや育苗ハウスなどの共同利用施設35棟が被害を受けた。ハウスの被害は強風によるビニールの破損などが多い。
北陸3県でも13日正午現在の各県のまとめによると、富山県ではパイプハウスや畜舎、農作業場は、全壊244棟を含む336棟が被害を受けた。石川県は累計で農業用ハウス307棟などの被害を確認した。福井県では農業用ハウスの損壊が130棟に上った。
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2021年01月14日