ガソリン携行缶 扱い注意喚起 国民生活センター
2021年02月21日
国民生活センターは、農機具用などのガソリンを入れる携行缶の取り扱いを誤ると、ガソリンが漏えいや噴出し、引火・爆発事故が発生する危険があり死傷者も出ているとして注意を呼び掛けている。ガソリンは引火性が高く、小さな火種でも引火する危険性がある。
同センターによると、2021年1月末までの5年余りのうちに、「農機具用のガソリンを保管していたところ、携行缶の底からガソリンが漏れていた」など、保管中にガソリンが漏れたなどの相談が11件寄せられている。
高温になる場所でガソリンが入った携行缶を保管したことで内圧が上昇。キャップを外すとガソリンが噴出し死傷者が出た引火・爆発事故も発生している。
同センターが行ったテストによると、直射日光の当たる車内に携行缶を放置したところ、内容物の温度は60度以上に上昇した。同様な状況をつくり、携行缶のキャップを外すと瞬間にガソリンが激しく噴出した。さらに、携行缶から約3メートル離れた場所で火花を発生させると、噴出して地面に飛散したガソリンに引火し、広範囲にわたって激しく燃え上がった。
同センターは事故を防ぐため、①直射日光が当たるなど高温になる場所には保管しない②温度変化の大きい場所での保管は控え小まめに圧力調整する③必要以上のガソリンを保管しない──ことが重要としている。
同センターによると、2021年1月末までの5年余りのうちに、「農機具用のガソリンを保管していたところ、携行缶の底からガソリンが漏れていた」など、保管中にガソリンが漏れたなどの相談が11件寄せられている。
高温になる場所でガソリンが入った携行缶を保管したことで内圧が上昇。キャップを外すとガソリンが噴出し死傷者が出た引火・爆発事故も発生している。
同センターが行ったテストによると、直射日光の当たる車内に携行缶を放置したところ、内容物の温度は60度以上に上昇した。同様な状況をつくり、携行缶のキャップを外すと瞬間にガソリンが激しく噴出した。さらに、携行缶から約3メートル離れた場所で火花を発生させると、噴出して地面に飛散したガソリンに引火し、広範囲にわたって激しく燃え上がった。
同センターは事故を防ぐため、①直射日光が当たるなど高温になる場所には保管しない②温度変化の大きい場所での保管は控え小まめに圧力調整する③必要以上のガソリンを保管しない──ことが重要としている。
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豚熱相次ぎ注意喚起 「ワクチン過信しないで」 農水省
豚熱の発生が相次いでいる。3月31日からの半月余りで、1万頭規模の農場を中心に5事例を確認。栃木県で17日に発生した豚熱は、2事例合計の殺処分対象が約3万7000頭(関連農場を含む)と、2018年9月以降に各地で発生した13県の計67事例でも最大規模となった。農水省は「ワクチンを過信せず飼養衛生管理の徹底を」と呼び掛ける。
63例目の奈良市の事例以降、65例目の津市ではワクチン接種前の子豚の感染だったが、他の事例では接種済みの豚で感染していた。
直近5事例の農場は、いずれも感染した野生イノシシが約10キロ以内で見つかっていた。最も近いのは64例目の前橋市で、半径2キロ圏内の4地点で野生イノシシの感染を確認。ウイルス侵入リスクは高い状況だったとみられ、陽性イノシシが迫る農場ではより一層の衛生管理が必要となる。
4月9日に同省が公表した専門家による疫学調査チームの報告では、発生事例では死亡豚の増加傾向を感じても、わずかな頭数だとして県への通報が遅れたケースがあった。同省は「経営の規模にかかわらず豚に異変があれば迷わず、すぐに通報してほしい」(動物衛生課)としている。
同省は以前から「ワクチンを接種しても全ての豚が免疫を獲得できるわけでない」として、継続的な防疫体制の確立を求めている。
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2021年04月20日

EC和牛ギフト活発 花と合わせ華やかに 花束に見立て楽しく
5月9日の「母の日」に向け、ギフト用の和牛を提案する動きが電子商取引(EC)市場で活発化している。花とのセットや肉を花に見立てた商品など、各社が趣向を凝らす。今年は8割が「母の日」の贈り物をECサイトで購入するとのアンケート結果もあり、商機が広がっている。
黒毛和牛のギフト専門ECショップ「evis meats」は、和牛肉と生花をギフトボックスに詰め合わせた商品を売り込む。「箱を開けた瞬間のサプライズだけでなく、花を飾ることで食卓も華やかに彩れる」とアピールする。
肉の部位はイチボ、モモ、サーロインなど6種類から選べる。価格は1万3360円で、肉の量は部位ごとに異なる。同店は1月にオープンし、完売も相次ぐなどギフト用の和牛が好評という。
焼き肉店などを運営する翔山亭(東京都千代田区)は、和牛肉を花束に見立てた「肉フラワーギフト」を自社ECサイトで販売する。渦状に巻いた肉が、バラの花びらのように見えるのが特徴だ。「店舗以外でも和牛を楽しんでもらえるよう、ギフト開発に力を入れている」(同社)。
霜降り肉と赤身など3種類を組み合わせた「愛」(250グラム)が6000円、「優」(400グラム)が9000円。
日本最大級の取り寄せ情報サイト「おとりよせネット」のアンケートによると、今年は77%がネット通販で「母の日」のプレゼントを購入すると回答。百貨店などの実店舗は減少傾向となった。「生活スタイルが変わり、行動が制限される中、対面の機会が少ない『ギフト通販』を利用する人が定着してきた」と指摘する。
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2021年04月21日
いまや「環境」と「問題」はセット
いまや「環境」と「問題」はセット。「環境問題」は、この時代を映す四字熟語のようだ▼その本質を突くのが次の言葉である。「地球があぶないとみんな言ってるけど、本当にあぶないのは人間のほうだ」。地球緑化センターが以前掲げたポスターにあった。こんなコピーも。「実は、環境問題の加害者は私たちで、被害者は私たちの子孫かもしれない」▼きょうは「アースデー」(地球の日)。世界各地で環境問題を話し合い、未来に向けて行動する日。地球との向き合い方を教えてくれるのが、北山耕平さんの著書『自然のレッスン』。よく地球を母なる大地というが、北山さんは、ある人の問い掛けが胸に刺さった。「自分の母親を、切ったり売ったり、買ったり、なぜそんなことができるのだ」▼確かに私たち大人は、母なる地球を傷つける加害者だ。しかも子孫にツケを回す罪深い加害者だ。1992年の地球サミットで12歳のカナダの少女が、世界の指導者を前にこう訴えた。オゾン層に開いた穴、絶滅した動物、砂漠となった森をよみがえらせる術を大人たちは持っているのかと▼「どうやって直すか分からないものを、壊し続けるのはもうやめてください」。その問いは気候変動サミットに届くか。
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2021年04月22日

[活写] 青い境界線 たずねて
大分県杵築市の「大分農業文化公園」で、70万本のネモフィラが見頃を迎えている。50アールの大花壇「フラワーガーデン」一面に青い花が広がり、来場者は広々とした園内で、写真撮影や散策を楽しんでいた。
同園は、2018年から来場者の要望に応える形でネモフィラの栽培を開始。職員が栽培方法を学び、花壇を手作りして風景をつくり上げてきた。
25、29日にはネモフィラを摘んで、小さなブーケを土産にできる摘み取り体験を開催する。また、花をイメージした青いソフトクリームなど地場産農産物の加工品も人気だ。
会期中は検温や来場者情報の記録など、新型コロナウイルス対策を徹底する。矢野格園長は「ネモフィラ、園内にあるダム湖、そして空。三つの青がコラボレーションする風景を楽しんで」と笑顔を見せる。見頃は4月下旬まで。入場無料。(釜江紗英)
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2021年04月21日

トロロアオイ「生・消」で守る 寄付募り産地維持へ奮闘 埼玉県小川町
手すき和紙を作るために欠かせないトロロアオイ。ユネスコ無形文化遺産「和紙・日本の手漉(すき)和紙技術」に登録されている、「細川紙」の産地・埼玉県小川町で、トロロアオイの担い手と和紙職人の掘り起こしを目指すプロジェクトが始動した。クラウドファンディング(CF)での呼び掛けに賛同した消費者へトロロアオイの種を送り、プランターや庭で育ててもらう。栽培したものは、小川町トロロアオイ生産組合が検品して、同町の紙すき職人に納める。新たな産地の維持・活性化策に期待がかかる。(木村泰之)
消費者も栽培に参加
「『わしのねり』プロジェクト」と銘打ち、海外への国産農産物の普及などに取り組むスタイルプラス(東京都港区)が企画した。
プロジェクトを始めたきっかけは、トロロアオイの主産地・茨城県での全農家5戸が高齢化で、栽培をやめるかどうかを検討したからだ。同県の生産量(2019年)は全国1位で7・5トンとシェア75%を占める。当面は作り続けることになったが、作り手がいなくなると、全国の和紙生産地が受ける影響は大きい。
一方、小川町では1965年ごろまでトロロアオイを栽培していた。だが一時途絶え、紙すき業者は茨城県から取り寄せていた。02年に遊休農地を活用し、30戸で同組合を結成して栽培を復活させた。茨城に次ぐ3・8トン(19年)を作るが、今は10戸。最年少は65歳と担い手の年齢的な問題を抱える。
同社から企画を持ち掛けられた組合長の黒澤岩吉さん(84)は「一般の人の参加を機に、町内で栽培する人が現れてほしい。要望があれば指導に積極的に協力し、困っている和紙産地の期待に応えたい」と話す。
国内で約3割の和紙を生産する同町の紙すき職人も後継者問題を抱える。一時、数百戸あった細川紙の紙すき業者は約5戸に減少。職人を育成する町和紙体験学習センターは老朽化で、修繕費がかさんでいるという。
同社はこうした修繕費用や、新商品の開発などの費用をCFで集める。5月16日までに84万円を目標にする。栽培に不慣れな消費者のため、農家から動画で栽培指導が受けられるようにした。
川口洋一郎代表は「トロロアオイの知名度は低い。消費者と農家、紙すき職人の三位一体で生産を継承していくことが必要」と、参加を呼び掛けている。
<ことば> トロロアオイ
アオイ科の一年草。オクラに似た花をつけるため「花オクラ」とも呼ぶ。根から取る粘液を「ねり」といい、手すき和紙の繊維を均一にする添加剤として使う。日本特産農産物協会によると、1965年度には約1万5000トンの収穫量があったが、2019年度は10トンとなった。胃腸薬や菓子類、麺類のつなぎなどの食品添加物としても用いられる。
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2021年04月20日
地域の新着記事

[活写] 上を向いていこう
富山県砺波市で22日、航空自衛隊のアクロバット飛行チーム「ブルーインパルス」が展示飛行し、国内最大級の花の祭典「2021となみチューリップフェア」の開幕を祝った。
同市は、国内屈指のチューリップ球根の産地。メイン会場となった12ヘクタールの砺波チューリップ公園には、300品種、300万本のチューリップを展示した。産地ならではの多彩な品種で、巨大な地上絵や、県の観光名所「雪の大谷」を再現した花壇などを設け、来場者を楽しませる。県のオリジナル品種をモチーフにした新しい展望タワーも登場した。
フェアは今年で70周年を迎えた。昨年、新型コロナウイルス感染拡大を受けて初めて中止したが、節目となる今年は、飲食エリアの制限など感染対策を徹底して開催した。
開会式に出席した県花卉(かき)球根農協の石田智久組合長は「厳しい状況下での開催だが、直接産地に足を運んで花を見てもらえることは生産者の励みになる」と話す。
フェアは5月5日まで。(染谷臨太郎)
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2021年04月23日

果実もたるもオール山梨でワイン 丹波山村産ミズナラ全国初活用 甲州市の醸造所が今秋初出荷へ
山梨県丹波山村と甲州市のワイナリー「奥野田葡萄(ぶどう)酒醸造」が、同村産ミズナラを使ったワインだるを開発した。これまで県産材を使ったワインだるがなかったことから、「オール山梨産」のワインを作ろうと企画。村の林業を再興したい思いなども重なり、約4年の歳月を経て完成にこぎ着けた。国産ミズナラのワインだる製造は、全国で初めてという。今秋にこのたるで熟成した白ワインが完成する見通しだ。(長田彩乃)
林業再興めざし開発
県産の材料にこだわるワイナリーの代表・中村雅量(58)さんが考案した。村の特産品開発や林業復活などにつなげたいと、村とワイナリーが共同で開発を進めた。
4年前から取り組みを始め、調査や業者の選定などしてきた。昨年3~12月に村有林を伐採して、2メートル材60本を製材。今年3月末にたるが完成、検品を経て4月にワイナリーへ納品された。
たるには樹齢約70年のミズナラを使用。大きさは直径35センチ、長さ40センチ、容量は18リットル。現在、ワイナリーが昨年に醸造したシャルドネのワインが注がれていて、3カ月程度で熟成が完了するという。
4月中旬にワイナリーで披露された。完成したばかりの17基を岡部岳志村長が中村さんに贈呈した。たるにシャルドネのワインを注いで完成を祝った。
村の担当者によると国産ミズナラを使ったワインだるの製造は全国で初。国産ワインではたるで熟成しないものもあるが「世界的にたる熟成は当たり前」と中村さん。木の香りがワインに移ってバランスの取れた仕上がりになり、料理との相性が良くなるという。
村は面積の98%が山林。森林の多くは東京都の水源林で、村有林は約10%。たるを製造するため伐採することで、森林保全につなげたい考えもある。
中村さんは「ワイン産地の水源の木材を使ってワインを熟成させることは、作り手として最もぜいたくで理想的なものづくりの形。飲みたい人もたくさんいると思う」と喜びを語った。
林業会社に勤めた経験があり、伐採にも携わった岡部村長。「たるを地元産材で作ることで村として『オール山梨』のワイン製造に貢献できる。県産ワインの新たな付加価値創出の第一歩になったと思う。村内での仕事の創出にもつなげていきたい」と、村の産業振興への意欲を見せた。
このたるで寝かせたシャルドネのワインは、今秋に完成する予定だ。約400本を生産する見通しで、村とワイナリーは試飲会なども検討している。
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2021年04月23日
農地バンク・農業会議合併 新組織「ひょうご農林機構」が誕生 兵庫県
兵庫県の農地中間管理機構(農地集積バンク)である兵庫みどり公社と、県内40市町の農業委員会を束ねる県農業会議が合併し、新組織「ひょうご農林機構」が誕生した。より現場に近い農業委員会のネットワークを駆使し、農地集積バンクとしての機能を強化、農地の集積・集約を加速させる。合併は公社が会議を吸収する形で、「農業会議」を冠した法人がなくなるのは47都道府県で初めて。(北坂公紀)
現場と連携、機能強化へ
新組織は1日付で発足した。……
2021年04月21日

[活写] 青い境界線 たずねて
大分県杵築市の「大分農業文化公園」で、70万本のネモフィラが見頃を迎えている。50アールの大花壇「フラワーガーデン」一面に青い花が広がり、来場者は広々とした園内で、写真撮影や散策を楽しんでいた。
同園は、2018年から来場者の要望に応える形でネモフィラの栽培を開始。職員が栽培方法を学び、花壇を手作りして風景をつくり上げてきた。
25、29日にはネモフィラを摘んで、小さなブーケを土産にできる摘み取り体験を開催する。また、花をイメージした青いソフトクリームなど地場産農産物の加工品も人気だ。
会期中は検温や来場者情報の記録など、新型コロナウイルス対策を徹底する。矢野格園長は「ネモフィラ、園内にあるダム湖、そして空。三つの青がコラボレーションする風景を楽しんで」と笑顔を見せる。見頃は4月下旬まで。入場無料。(釜江紗英)
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2021年04月21日

魅力満載の動画配信 特産をラップで称賛 長野県職員
「信州長野は日本の屋根」「南は市田柿 ガキには分からない粋な味」。長野県庁に勤める若手職員4人からなる「WRN」は、ラップで若い世代に農や自然、地域の魅力を伝える。歌詞には特産のリンゴやブドウ、キノコなどの農産品が登場する曲もある。(藤川千尋)
カラス対策も曲に
グループ名の「WRN」は「We Respect Nagano」(長野県を誇りとする)の頭文字を取った。鳥獣対策・ジビエ振興室の宮嶋拓郎さん(31)がリーダーを務める。この他、森林づくり推進課の服田習作さん(31)、ゼロカーボン推進室の三村裕太さん(32)、上田保健福祉事務所の井出伊織さん(33)がメンバーだ。
きっかけは2015年ごろ。当時、県飯田合同庁舎に勤めていた宮嶋さん。若手農家の交流会を企画し、県のホームページに告知を出したものの人が集まらなかった。痛感したのは、地域の魅力や県の取り組みが、伝えたい人に届いていないこと。「世の中に関心を持ってもらう伝え方が必要」と考えた。
当時流行していたラップに注目。同じ庁舎で働いていた服田さん、三村さん、井出さんに声を掛けて活動を始めた。
現在はライブを企画したり、制作したミュージックビデオを動画投稿サイト「ユーチューブ」に投稿したりするなどして活動する。
3月に投稿した「Night Veil」は、県が約40年ぶりに実施したカラスの生息調査を基に作った。農作物を荒らすカラス対策の曲だ。歌詞では「ついばむ 放置果実」と、摘果などで畑に捨てられた果実がカラスの冬の餌となることを強調。「生き延びるための餌残さない 対策そういう 意識共有」と呼び掛ける。
4月中旬に業務で参加できなかった井出さんを除いたメンバー3人が、長野市の戸隠神社や新潟県内の川や海で新曲のミュージックビデオを撮影した。新たな楽曲で発信したいのは「山や森林を大切にすることは田や畑へ豊かな水を供給すること」であり、「海の生態系の保全につながること」だ。
宮嶋さんは「ラップを通じて、若い世代に農や地域の魅力を伝え、盛り上げていきたい」と話す。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=PnTYAjVzOr4
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2021年04月21日

宇治茶の初取引 平均1キロ1万1187円
2021年産の宇治新茶の初市が19日、京都府城陽市のJA全農京都茶市場であった。平均価格は煎茶1キロ1万1187円と、新型コロナウイルス禍による需要減退で異例の安値だった昨年の8512円を大きく上回った。最高値は和束町産の手もみ茶で1キロ18万8888円(昨年10万円)と、資料の残る2000年以降で最高価格となった。宇治市の中村藤吉本店が落札した。
初市に先立ち、JA全農京都の中川泰宏会長が「昨年は茶農家にとって厳しい売り上げとなったが、茶商の皆さんの支援で、何とか今年の初市を迎えることができた。若い茶生産者を育てるためにも、目いっぱいの数字を書いてほしい」と高値での入札を呼び掛けた。……
2021年04月20日

トロロアオイ「生・消」で守る 寄付募り産地維持へ奮闘 埼玉県小川町
手すき和紙を作るために欠かせないトロロアオイ。ユネスコ無形文化遺産「和紙・日本の手漉(すき)和紙技術」に登録されている、「細川紙」の産地・埼玉県小川町で、トロロアオイの担い手と和紙職人の掘り起こしを目指すプロジェクトが始動した。クラウドファンディング(CF)での呼び掛けに賛同した消費者へトロロアオイの種を送り、プランターや庭で育ててもらう。栽培したものは、小川町トロロアオイ生産組合が検品して、同町の紙すき職人に納める。新たな産地の維持・活性化策に期待がかかる。(木村泰之)
消費者も栽培に参加
「『わしのねり』プロジェクト」と銘打ち、海外への国産農産物の普及などに取り組むスタイルプラス(東京都港区)が企画した。
プロジェクトを始めたきっかけは、トロロアオイの主産地・茨城県での全農家5戸が高齢化で、栽培をやめるかどうかを検討したからだ。同県の生産量(2019年)は全国1位で7・5トンとシェア75%を占める。当面は作り続けることになったが、作り手がいなくなると、全国の和紙生産地が受ける影響は大きい。
一方、小川町では1965年ごろまでトロロアオイを栽培していた。だが一時途絶え、紙すき業者は茨城県から取り寄せていた。02年に遊休農地を活用し、30戸で同組合を結成して栽培を復活させた。茨城に次ぐ3・8トン(19年)を作るが、今は10戸。最年少は65歳と担い手の年齢的な問題を抱える。
同社から企画を持ち掛けられた組合長の黒澤岩吉さん(84)は「一般の人の参加を機に、町内で栽培する人が現れてほしい。要望があれば指導に積極的に協力し、困っている和紙産地の期待に応えたい」と話す。
国内で約3割の和紙を生産する同町の紙すき職人も後継者問題を抱える。一時、数百戸あった細川紙の紙すき業者は約5戸に減少。職人を育成する町和紙体験学習センターは老朽化で、修繕費がかさんでいるという。
同社はこうした修繕費用や、新商品の開発などの費用をCFで集める。5月16日までに84万円を目標にする。栽培に不慣れな消費者のため、農家から動画で栽培指導が受けられるようにした。
川口洋一郎代表は「トロロアオイの知名度は低い。消費者と農家、紙すき職人の三位一体で生産を継承していくことが必要」と、参加を呼び掛けている。
<ことば> トロロアオイ
アオイ科の一年草。オクラに似た花をつけるため「花オクラ」とも呼ぶ。根から取る粘液を「ねり」といい、手すき和紙の繊維を均一にする添加剤として使う。日本特産農産物協会によると、1965年度には約1万5000トンの収穫量があったが、2019年度は10トンとなった。胃腸薬や菓子類、麺類のつなぎなどの食品添加物としても用いられる。
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2021年04月20日

移住・二地域居住したい 都民4割が関心 首位は鎌倉・三浦(神奈川) リクルート調査
東京都民の4割が地方移住や二地域居住に関心があるとの調査を、民間会社がまとめた。移住や二地域居住に関心のある都民に住みたいエリアを聞き、ランキングもまとめた。1位は、神奈川県の鎌倉・三浦エリアで、「街ににぎわいがある」を理由に挙げた人が多かった。
調査は、(株)リクルートが1、2月、東京都在住の20~69歳の男女を対象にインターネットで行った。東京駅から50キロ圏外を「地方」とし、希望するエリアを三つ選んでもらった。回答数は、事前調査は1万5572人で、本調査は1万572人。
事前調査で移住・二地域居住に関心があるか聞いた。「強い関心がある」が7%、「関心がある」が25%だった。移住・二地域居住が決まっている人や実施に向けて行動している人を含めると、4割が関心を持っていた。
本調査で、関心があると答えた人に理由を聞くと「自然が豊かな環境で生活したい」が56%で最も多かった。「リラックス・リフレッシュできる時間・空間がほしい」が41%、「住居費を下げたい」が31%の順だった。
ライフステージ別では、「自然が豊かな環境で暮らしたい」と答えた人は、子育てを卒業した60歳以上の夫婦世帯と、子どものいる家族世帯で多かった。単身の女性は「東京での生活・仕事に疲れた」が多かった。
移住などに関心があると答えた人に、希望するエリアも聞いた。選んだ理由は、街のにぎわいや医療・子育て環境、地域の自然環境などが多い。観光地として有名なエリアなどが人気を集めた。
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2021年04月17日

熊本地震5年 絆つなぐ手作り弁当 大学校舎移転“学生村の縁”今も 南阿蘇村住民グループ
熊本地震の本震から5年。南阿蘇村では今も、農業実習に訪れる学生に手作り弁当を届ける女性たちがいる。地震が起きる前は東海大学農学部生向けの下宿を営んでいた。今後、実習地は移転する予定で、学生との交流は先細りしかねない。だがメンバーはできるところまで「おばちゃんたちのご飯が食べたい」との思いに応えようとしている。(三宅映未)
地元の味で「恩返す」
東海大の旧キャンパス近くにある農業実習地には昼、大型バスが数台並ぶ。午後の授業に備え、熊本市内の校舎から学生が移動してくる。片道約1時間の道のりの後、待っているのが弁当の時間だ。
今月半ばの献立は人気メニューのとんかつや地元産ワケギを使った郷土料理。千葉県から進学した相田晴嵩さん(19)は「1人暮らしで食べ物が偏りがちだからありがたい」と頬張った。鹿児島県出身の米倉咲良さん(19)は「(実習地までの)移動は少し大変。でもおいしい弁当が活力になる」と話した。
弁当を作るのは同村黒川地区の住民グループ「すがるの里」。地震まで賄い付きの下宿を営んでいた女性16人がメンバーだ。学生の8割に当たる800人が住み、一帯は「学生村」と呼ばれていた。
だが、地震で農学部のキャンパスは建物や敷地に亀裂が走り、立ち入りできない状況に。同地区も下宿や建物が崩れ、学生3人の命が奪われた。校舎はは熊本市に移転し、学生の姿は消えた。
復旧が進む中、行政、学生と住民を交えた話し合いが持たれた。学生の「おばちゃんたちのご飯が食べたい」との声を受け、2019年にグループを設立。「地震の時、学生に命を救われた人もいる。恩返しの気持ちで始めた」と代表の垣ます子さん(72)は語る。
手作りの弁当を紹介する垣代表(同)
活動拠点は実習地近くの廃校。実習日に合わせ週に1、2回、朝から調理を始める。食材は地元産を多く使い、農家から提供を受けることもある。酢みそなどの調味料は手作り。価格は1個400円。
住民の知恵 貴重な学び
20年末、農学部校舎を益城町に建設する工事が始まった。畜舎など実習場も備え、23年4月に運用を開始する計画。今の実習地がどうなるかは不透明だ。
メンバーの一人、竹原伊都子さん(60)は「卒業生が関係を引き継ぎ、地震を知らない今の学生も訪ねに来る。『用がなくても(来て)いいとよ』とご飯を食べてもらう」と話す。地震前、学生たちは住民と酒を酌み交わし、いろいろな手伝いをして交流を深めた。「授業で学べないことを知ることができて、うれしい」との声も竹原さんは聞いた。
新校舎近くに「学生村」ができる話は、現時点でない。竹原さんは「南阿蘇で学生が地域から学ぶ機会は減るだろう。建設地を見るたび複雑な気持ちになる」と明かす。
住民は、当時の学生も参加する二つの団体と今も交流を続けている。同大学出身で同校に勤める中野祐志技術員は「キャンパスが離れても、つながりをどうにか持ち続けたい」と語る。
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2021年04月16日

熊本地震から5年 復旧の歩みに隔たり 営農本格化 工事「足踏み」 南阿蘇村、山都町
14日と16日に、2度の震度7を記録した熊本地震から5年がたつ。土砂崩れや地割れで被災した農地は多くが復旧し、営農再開を果たした。熊本県南阿蘇村では土砂に埋もれた棚田を大区画に整備。一方で山都町では復旧が遅れ、あぜなどの工事の3割が未完了だ。生産者の中には自ら補修し営農を続けている人もいる。(岩瀬繁信)
南阿蘇村乙ケ瀬地区の棚田は、2016年4月16日の地震で、大規模な土砂崩れが起きた。水稲を栽培する藤原三男さん(73)は、「50年、耕した水田が一瞬でなくなった」と振り返る。
おいしい米ができるよう土づくりに力を入れ、若い頃は堆肥を牛の背中に載せて運んだ。10年前には山の湧き水を導く水路も整備したが、地震で土砂と一緒に崩落した。
個人で建てたライスセンターは、乾燥機8台のうち3台が駄目になった。「残りもメーカーが直せるか分からないほどめちゃくちゃだった。廃棄すると思ったら涙が出た」と話す。
米作りを「やめようか」と思ったが、幸い建物は無事だった。被害を免れた水田で田植えもできた。稲刈り後に必要になる調製施設は、壊れた部品を交換し、毎日少しずつ復旧作業を続け、収穫に間に合わせた。
16年秋、藤原さんら地区の住民は棚田復旧の協議を始めた。以前から区画整理が必要と話しており、災害を機に大区画化を進めると決めた。県や国、村の支援で26ヘクタールの工事を開始。以前は1枚数アールの水田もあったが、20~30アールに広がった。
藤原さんは「大きな機械も格段に入りやすくなった」と喜ぶ。20年に一部で田植えが始まり、21年は全面を植える。来年のことは分からないが、「元気なうちはこの土地で米を作り続ける」と藤原さんは決意する。
熊本県は、農家の営農再開率を21年3月末で100%とする。一方で農道や水路などの復旧工事は完了率が86%。地域差が大きく、16年6月に豪雨の被害が重なった山都町は69%にとどまる。
棚田が広がる山都町白糸地区は、工事完了率が56%。水稲を2・7ヘクタール作る岩崎邦夫さん(78)は、崩れたあぜや水路11カ所で工事を申請したが、完了はまだ2カ所だけだ。「先祖が守った土地を荒らすわけにはいかない」と話し、早期の工事完了を訴えている。
工事が進まない中、地区では多くの生産者が農地を自身で補修して営農を続ける。
山下徹さん(50)は、崩れたあぜの内側に簡易のあぜを設置し、採種用の米を作る。山都町は県の主食用米種子の半分以上を生産していて「作り続ける責任がある」と、山下さんは力を込める。
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2021年04月14日