自伐型林業 持続的収入、初期投資低く、環境守る

自伐型林業で生計を立てる滝川さん(左)と役場担当者。滝川さんが造った自慢の作業道で10年後の構想を練る(高知県佐川町で)

 移住者や若者が他人の山を借りて伐採や搬出を自ら行う「自伐型林業」が全国の中山間地に広がっている。持続的に森から収入を得ることができ、初期投資も低いとして、実践者は全国で推定2000人。環境を守りながら小さな規模で稼げ、若者の価値観に合った新たな働き方だ。定住政策に据える山村の自治体も40に増えている。(尾原浩子)
 

若者 価値観にぴたり


 高知県佐川町の森林。間伐を終え、樹齢50年を超えた木が立ち並ぶこの山を滝川景伍さん(34)が誇らしげに見渡す。

 「10年後にまた間伐する。木の価値はさらに高まって収入にもなる」と見据える滝川さん。多少の土砂災害でも崩れないよう緻密な計算をした作業道は、先輩林業者に教わって造った。長期的な視点で経営する林業は、目先の結果だけを追求しがちな今の時代の対極にあるように思え「僕に合っている」と言う。

 京都市出身の滝川さんは4年前に地域おこし協力隊として同町に移住した。協力隊を卒業した現在は、地域の人から委託された森林の伐採管理を請け負う。月収は30万円弱。木材の売り上げの10%は山主に返している。

 妻と共稼ぎで2人の子育てをし、山に向かう日数は月15日程度。長時間労働が当たり前だった20代の会社員の頃に比べ、ゆとりある暮らしを送っている手応えがある。

 滝川さんは「やり方次第で見向きもされなかった山がきれいになり、何世代もが稼げて、地域の人にも喜ばれる。中山間地が盛り上がる」と自伐型林業の魅力を話す。

 5年前から自伐型林業を町政の柱の一つに据える同町は、専任担当部署を設置するなど林業の担い手育成に力を入れる。これまでは森林所有者が業者などに委託して伐採や植樹する以外、山を自ら管理する人はほとんどおらず、森林は荒れ放題だった。同町によると、ここ5年で若者定住の道筋ができ、住民の山への目線も変わってきた。

 滝川さんら協力隊員を卒業した5人が定住した他、森林を所有する住民4人が新たに林業を始めた。現在、自伐型林業を学ぶ地域おこし協力隊は8人だ。小型のチェーンソーなどは町が貸与し、同町は林業で生計が立てやすい。元病院経営者で、兵庫県姫路市から移住し林業を目指す入江健次郎さん(50)は「最小限の機械で木を自ら切り搬出する自伐型林業。農山村の価値と山づくりの奥深さを知った」と話す。
 

中山間地で拡大じわり


 NPO法人・自伐型林業推進協会によると、高知県内で300人が実践するなど、ここ数年で自伐型林業の担い手が増加している。新たに挑戦する7、8割が若者で、そのうち半数以上が移住者だという。

 北海道旭川市の清水省吾さん(31)は1年前から4ヘクタールの自伐型林業を営む。林業や森のガイド、庭の木の伐採などで生計を立てる。収入は会社員時代とほぼ同じで、自由な時間が増えた。「木材の質を高める小さな規模の林業を目指したい。生き物を守りながらの山づくりに共感する仲間がいて、わくわくする」と実感。岐阜県恵那市で40ヘクタールの山を委託契約で管理する三宅大輔さん(40)は「山をより良い状態にして次の世代に渡す仕事は気持ちが良い。数十年後の山の姿を想像しながら木を切っている」と明るい。

 同協会によると、佐川町のように、自伐型林業を学ぶ地域おこし協力隊の募集や研修を始める自治体など、36市町村4県が自伐型林業推進のための予算を持つ。ここ2年で、自主的なグループも全国に20程度立ち上がっているという。

 同協会の中嶋健造代表は「採算性と環境保全を両立する自伐型林業は、自立した生き方を希望する若者の新しい価値観に合う。低コストで参入障壁が低く、中山間地の再生につながる」と利点を指摘している。

<ことば> 自伐型林業

 採算性と環境保全を両立する持続的森林経営。自伐型林業推進協会によると、山林所有者が自ら森林の整備を行う「自伐林業」に対し、若者や移住者らが山を借りて伐採や搬出を担うことを「自伐型林業」という。

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