豪雨被害平成で最悪 死者110人超、不明者多数

地域を流れる高梁川からあふれた水にのまれ、なぎ倒された桃の木(9日、岡山県総社市で)

 西日本を中心に各地を襲った豪雨の被害が9日、明らかになってきた。農業被害は広範囲に広がり、園地を巻き込んだ土砂崩れの発生や河川の氾濫が相次ぎ、濁流が家屋や農地、ハウスをのみ込んだ。自治体などによると、広島、岡山、愛媛などで死者は110人を超え(同日午後8時現在)、1982年の長崎水害以降、平成に入って水害では最悪の人的被害となった。安否不明者は多数に上り、消防や自衛隊の懸命な捜査が続く。甚大な農業被害が見込まれるが、全容把握には時間がかかる見通だ。
 

岡山 桃の木なぎ倒す


 広い範囲で大量の土砂が流れ込み、道路や物流網が寸断され、9日も停電や断水が続いた。各地で田畑冠水やJA施設浸水など解消の見通しが立っていない。消防庁によると9日午前5時現在、17府県の174万世帯、386万人に避難指示・勧告が出た。

 岡山県総社市の福谷地区では、高梁川沿いにある果樹園やハウスに、大雨でかさを増した濁流がなだれ込んだ。高さが5メートルはある土手を越えてあふれた水は、川と園地の間にある幅2・5メートルの市道を寸断。桃の木を根こそぎ流し、連棟ハウスもなぎ倒した。

 「ここにハウスがあったんだが、どこに行ったんかのう」。同地区の約20アールで桃やブドウを栽培していた仮谷百合子さん(69)は、原形をとどめない園地をぼうぜんと見つめた。木が植えてあった園地には、10メートル離れた河原から流れ着いた直径1メートルもの石が、いくつも転がっていた。

 福谷アレキサンドリア部会に所属する農家の仮谷真戊留さん(71)は「50年余り農業を続けてきたが、こんな水害は初めて。ハウスも木も、去年買った管理機も水に持っていかれた」と、被害の大きさに驚く。

 雨がやんだ9日、倒壊を免れたブドウのハウスに入り、雨水に土を流された木の客土作業に追われた。「根が乾くと生育が滞ってしまう。数百万円の被害だが、命を失わなかっただけでも幸運だったと考えるしかない」と気丈に振る舞う。
 

愛媛 ミカン山肌あらわ


 ミカンのブランド産地、JAえひめ南はこれまでにない苦境に立たされている。宇和島市吉田町では園地を巻き込んだ大規模な土砂崩れが発生。園地の大半を失う生産者も出てくるなど深刻な状況が続いている。調査をするJA職員も自宅が被害を受け、園地の確認作業は難航している。

 甚大な被害を受けたJA玉津支所の管内は、至る所で土砂崩れが発生し、かんきつ園地は山肌が露出した状態だ。園地が土砂の被害を受けた50代男性の生産者は「こんな状況は初めて」とため息をつく。農道やモノレール、スプリンクラーなどかんきつの栽培に必要な施設が全て土砂に流された。3・5ヘクタールある園地は“めちゃくちゃ”な状況で「ミカン作りよりも生活がどうなるのかも分からない」と途方に暮れる。

 甚大な被害が出た白浦地区の40代男性の生産者は「何も考えられない」と山肌があらわになった園地を前に立ち尽くす。地域の全域が被害を受け、出荷量がどれほど減るかはいまだ見通しが立たない。生産者の自宅近くでは亡くなった人もいる。

 「今は園地に上がるのも怖い。逃げるのが精いっぱいだった」と話す。玉津共選の山本計夫共選長(65)は「これまで経験のない自然災害。玉津ブランドをこれから取り戻さなければならない」と強調する。

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