[達人列伝 56] トマト 岐阜県高山市・橋場康夫さん(69) 人づくり 力惜しまず シイタケ菌床 堆肥に活用

効率を意識しながら高品質のトマト作りに取り組む橋場さん(岐阜県高山市で)

 岐阜県高山市の橋場康夫さん(69)は、夏秋トマトをハウス4・3ヘクタールで栽培する。こだわりは「土づくりと人づくり」。省力化技術を積極的に取り入れて、人への負担を軽減させながら栽培管理に力を注ぐ。全国屈指の産地である同市でもトップクラスの規模で、高品質なトマト生産を実現している。

 稲作農家の長男として生まれ、高校卒業後の1967年に就農。77年に地元の先輩農家の勧めでトマト生産を始めた。当初16アールで始めた栽培は年々、右肩上がりで拡大した。

 橋場さんは早くから6次産業化にも力を入れてきた。樹上完熟で甘さが乗ったトマトだけを使う無添加トマトジュース「めいのさらだ」は、発売から10年以上たった今も全国各地に根強いファンを持つ逸品だ。

 品種は「麗月」と「桃太郎エイト」が中心。土づくりでは有機質肥料を重視する。魚かすや米ぬかに加えて、複合経営で取り組む菌床シイタケの菌床も堆肥として再利用する。地元産のコナラをチップ化した自家製の菌床を使っており、低コストながら安心・安全で高品質な肥料を作っている。

 セル苗を直接定植する「若苗定植」にもいち早く取り組んできた。通常のポット苗に比べて労力を3分の1ほどに削減できる。従業員の負担を軽減するだけでなく、その分の労力を規模拡大と栽培管理に回している。

 2000年に法人化した橋場農園では、通年雇用する従業員は40人に上る。「自分も先輩たちに支えられてここまで来た。産地に育ててもらった恩返しをしないと」と橋場さん。独立希望者にも惜しむことなく技術指導する。これまでに15人以上送り出した“門下生”は産地を支える生産者として活躍している。

 ゆとりを持って仕事ができるように人員は少し多めに確保。人が多いことによる技術のばらつきは、毎日の日報や巡回を通じたコミュニケーションの徹底でカバーしている。「土づくりは有機質肥料の徹底。人づくりはゆとりとコミュニケーション。どちらもおいしいトマトを作るために欠かせない両輪だ」

 今後の経営を見据えて今年2月に同県内の青果物では初となるグローバルGAP(農業生産工程管理)を取得。トップランナーとして走り続ける。「消費者に感動を与えられるトマトをこれからも作りたい」と意気込んでいる。(市来丈) 
 

経営メモ


 ハウス4・3ヘクタールで夏秋トマトを年350トン生産。複合経営の菌床シイタケは15万菌床を手掛け、周年出荷体制を確立する。2008年の日本農業賞個人経営の部で大賞を受賞した。
 

私のこだわり


 「農業の基本は人づくりと土づくり。どちらも愛情をかけることが大切」

おすすめ記事

達人列伝の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは