[達人列伝 57] ブドウ 大阪府大阪狭山市・中村弘道さん(65) 「キングデラ」生みの親 品質重視 投資を惜しまず

40年余りブドウ専業農家として生産に携わる中村さん(大阪府大阪狭山市で)

 贈答用の高級ブドウとして人気の「キングデラ」の生みの親として知られる大阪府大阪狭山市の中村弘道さん(65)は、40年余り生産に携わり、近畿屈指のブドウ産地、大阪をけん引する。一般の店頭には並ばない独自品種など数多く生産。手間と投資を惜しまない“品質重視”の栽培が信条だ。

 品種の多さが魅力だ。自ら育種した品種「キングデラ」「紅しずく」「優峰」を含む約20種類を栽培する。その多くが市場に出回らない。珍しさと品質の良さが支持され、顧客は北海道から沖縄まで約2300世帯に上る。「『もう一度、食べてみたい』と言われるブドウを作らなくては駄目」と力説する。

 生産するブドウは破格の値段だ。高いもので1房1万3千円だが、購入者は絶えない。引き付ける魅力は糖度だ。そのために欠かせないのが樹勢のコントロール。毎日圃場(ほじょう)に通い、摘房や摘粒の好機も見逃さない。「ブドウも人間と同じ。愛情を持って接すれば期待に応えようと頑張ってくれる」と話す。

 良いブドウを生産するには投資を惜しまない。ブドウの色つきを試験するため、紫外線を通すアクリル板を使った高額な施設を早くから導入。ブドウを保存する業務用冷蔵庫にはかびの発生を抑制する空気清浄機を備え、今年産からは光合成を促進させる二酸化炭素発生装置を取り入れるなど、新たな挑戦に意欲的だ。

 無理に面積を広げないのも持論。大阪でブドウを栽培する上での労働力は一般的に1ヘクタールで2人とされる。中村さんは60アールを家族4人で管理。通常の約3倍の人員を割く計算だ。「おいしさを求めればこれが妥当。それ以上拡大すれば目が行き届かなくなる」と言い切る。

 中村さんは府が認定する同市唯一の「農の匠(たくみ)」。若手農家を中心に圃場への視察が絶えない。また、テレビ番組に数多く出演。ブドウの魅力を伝える専門家としてお茶の間でも知られた存在だ。JA大阪南は「ブドウに対する情熱は人一倍。農家にとって模範的な存在」と評価する。

 大学時代に育種した「キングデラ」は、ブドウ主産地の山梨県や山形県など全国で栽培され、一部地域では輸出も始まった。「日本各地に広まり、認められたと思うと感慨深い。キングデラに負けないおいしいブドウを作るため、これからも挑戦し続けたい」と力を込める。(前田大介)
 

経営メモ


 約60アールで自ら育種した独自品種「キングデラ」など約20種類を栽培。2003年に第4回全国果樹技術・経営コンクール農林水産省生産局長賞を受賞。
 

私のこだわり


 「大事なのは、ブドウに愛情を持って接し、お客さんに『もう一度、食べてみたい』と言われるブドウを作ること」 

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