[達人列伝 59] スモモ 山梨県南アルプス市・高石栄貴さん(56) 舌で判断 自信作出荷 「貴陽」生んだ父 思い継承

数日後に控えた収穫を前にスモモの状態を確認する高石さん(山梨県南アルプス市で)

 山梨県は、国内産のスモモの生産量の約3分の1を占める日本一の産地だ。中でも江戸時代からの歴史ある産地、南アルプス市の約1ヘクタールで果樹を栽培する高石栄貴さん(56)は、父が育成したスモモ「貴陽」の栽培に心血を注ぐ。亡き父の思いを受け継ぎ、甘さと大玉を両立した果実に「高石さんのスモモが食べたい」との根強いファンが多い。

 22年前に品種登録された大玉スモモ「貴陽」。育成に携わったのが、亡くなった父の鷹雄さんだ。大玉のスモモ「太陽」の結果数を多くしようと、「ソルダム」など数種類と掛け合わせた中から生まれた。

 「貴陽」は果実の大きさが通常の倍以上あり200グラムを超える。糖度も16程度と「太陽」以上で、酸味も少ない。評判を呼び、あっという間に生産する農家が増えた。

 中でも同市産は、果実の大きさや甘さなど総合的な評価が高い。寒暖差が大きくて水はけが良く、果樹に適した土地が奏功した。鷹雄さんの功績も大きい。栄貴さんは「目ぞろえ会で他の農家が出した小玉や糖度の低いものは、持って帰らせるなど厳しかった」という。

 今年で就農5年の栄貴さんは長年、JAこま野(現JA南アルプス市)で営農指導員として管内の果樹栽培をけん引してきた経験から「農家全体の底上げをしないとブランド力は高まらない」と強調する。

 今年は春先から好天が続き、1週間から10日早い収穫となった。中には高温で実がしぼむなどの影響が出た農家もあったが、栄貴さんはいつも通りの高品質なスモモを出荷する。

 「特別なことはしていない」と謙遜するが、絶えず実のなりを確認し、実の太り具合などを判断して、水やりを欠かさない。日当たりの悪い場所には果樹用のマルチシートを敷き、反射光が実に十分に届くよう気を配る。また、収穫初期の段階でスモモを食べて、舌で判断。「自分がおいしいと思うもの以外はお客さんに出さない」と、完熟のスモモを出すように心掛ける。

 営農指導員時代から栄貴さんを知るJA南アルプス市営農指導課の手塚英男課長は「トップブランドを維持・発展するためにはなくてはならない存在」と高く評価する。

 スモモは、JAへの出荷の他、関東、関西地方にも宅配する。顧客には、鷹雄さん時代からの知り合いも多いという。

 「今年の貴陽も甘くておいしかったと連絡をくれるお客さんがいて、本当にうれしい」と栄貴さん。「ブランドを守るためにも頑張りたい」と前を見据える。(中村元則)
 

経営メモ


 約45アールでスモモ「貴陽」「太陽」など6品種ほどを栽培。この他、ブドウ「ブラックビート」「シャインマスカット」など15種を70アールで栽培している。
 

私のこだわり


 「収穫初期の段階でスモモを必ず食べてみて、自分自身がおいしいと確信してから、お客さんに届けること」 

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