[達人列伝 60] ブドウ 広島県三次市・伊豆美輝さん(46) “黒い真珠”の伝道師 環状剥皮 適期作業心掛け

「ピオーネ」の出来を確認する伊豆さん(広島県三次市で)

 海に面さない中山間地域、広島県三次市に“黒い真珠”と呼ばれるブドウがある。昼夜の大きな気温差と生産者の管理で、しっかりと着色したブドウ「三次ピオーネ」だ。三次ピオーネ生産組合を技術部長として引っ張るのが、伊豆美輝さん(46)。「三次ピオーネ」を待ちわびるファンのため、基本を忠実に守り、日本一のブドウ作りを目指す。

 生産組合は1974年に設立。組合員19戸が35・6ヘクタールで栽培するブドウのうち9割を「ピオーネ」が占める。無核化栽培技術に取り組み、83年に全国で初めて種なし「ピオーネ」を出荷した、歴史ある産地だ。

 組合には販売や総務など五つの部があり、技術部では年に4回ほど開く講習会の企画や新技術の試験、生育調査などを主導する。商品の要である品質向上に取り組む重要な役回りだ。その部長に伊豆さんは今年、40代の若さで抜てきされた。

 ブドウ農家の2代目として28歳で就農し、先代から受け継いできた基本技術を守る。“黒い真珠”を生産するには、10アール当たり何万個と実るブドウの房を3500~4000個に減らし、養分が行きわたるようにする必要がある。「必要以上に房をならさず、房の形が良くなるよう摘粒に手を掛けただけ良いブドウができる」という。

 着色期に夜温が下がることも条件で、同市の気候条件は栽培に適している。ただ、近年は温暖化で夜温が下がらない日が多く、同生産組合は10年ほど前から環状剥皮を取り入れる。幹や枝の周囲の皮を剥がすことで、養分が効率的に果実に集まる技術だ。伊豆さんは「剥皮のタイミングを守らなければ成果は出ない。適期作業が大事」と強調する。

 基本を忠実に守る丁寧な作業は、ベテラン組合員に一目置かれている。石田博人組合長は「粒の大きい立派な房作りに定評がある。ばらつきも少ない。基礎がしっかりしている」と評価。組合全体のレベル向上へ技術部長の手腕に期待する。

 7月の西日本豪雨では幸い被害はほとんどなく、今月下旬から露地「ピオーネ」の出荷が始まった。「糖度が高く、とても良いブドウに仕上がった」と笑顔を見せる伊豆さん。「消費者の期待に応えられる物を出荷していきたい」と意気込む。“黒い真珠”の伝道師として、今後は異常気象に対応した栽培管理を検討していく考えだ。(柳沼志帆)
 

経営メモ


 2・3ヘクタールで「ピオーネ」を中心に栽培。生産組合の技術部に10年ほど所属した後、販売部で広報担当を6年務め、今年技術部長に就任した。

私のこだわり


 「基本を守り、見て良し、食べて良しのブドウを作ることを一番大事にしている」

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