地域の農業生産 買い支えよう 米の仕組み野菜にも ファン拡大めざす 宮城・鳴子の米プロジェクト
2018年09月16日

買い支えに期待する高橋さん(宮城県大崎市で)
宮城県大崎市の山間地、鳴子地域で活動するNPO法人鳴子の米プロジェクトは、地元産の野菜や加工品を消費者が買い支える仕組み作りに乗り出した。再生産を考慮した価格に設定し、購入者に理解してもらって販売するという、米で培ったノウハウを他品目にも広げる。地元農家の支えを充実させつつ、ファンの拡大を狙う。2019年度からの本格化を想定する。
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西洋野菜の一種、チコリの収穫が最盛期を迎えている。30年以上続く国内有数の産地、さいたま市では、浦和軟化蔬菜(そさい)出荷組合チコリー部会の農家3戸が共同で作業している。
キク科の多年性植物で芽を食べる。収穫期は1月下旬から4月上旬。今年は3万本の出荷を見込む。近年は埼玉県さいたま農林振興センターと組み、育て始めを遅くするなど夏の高温を避ける技術も試している。
チコリは輸入物が大部分といわれる。部会長の榎本昇さん(66)は「貿易自由化が進んでも国産の鮮度の良さは強み。違いを感じてほしい」と力を込める。(染谷臨太郎)
2019年02月18日

第2回落札7・9万トン 「優先枠」累計は47% 備蓄米
農水省は13日、2019年産政府備蓄米の第2回入札(12日実施)の結果を公表した。今回新たに7万9775トンが落札され、初回を加えた「優先枠」の累計落札数量は9万7403トンとなった。累計落札率は年間枠(20万9140トン)の47%だった。初回で様子見した新潟や富山といった主産地で落札が伸びるなど、取り組み拡大に向けた動きが出ている。
2019年02月14日

高速バスで野菜直送 東京便スタート JA金沢市
金沢産の野菜と農産加工品を東京に運ぶ貨客混載の高速バス「産地直送あいのり便」の初便が18日、西日本JRバス金沢営業所を出発した。バスのトランクスペースを使って生産量が少ない「加賀野菜」などを輸送し、販路拡大や運送費のコスト削減、農家の所得増大につなげる。今後、月に4便程度の運行と都内各所での即売会などを計画する。
輸送されたのはサツマイモ「五郎島金時」や「加賀れんこん」「金沢春菊」などの加賀野菜と加工品各9品目の計4ケース。JA金沢市が集荷した。金沢営業所前で積み込み、JAの辰島幹博常務は「小ロットでも可能な新しい輸送事業となる。金沢産野菜の発信の広がりに期待する」とあいさつした。
バスは午前9時半に金沢駅発、午後5時22分に新宿駅着の「金沢エクスプレス2号」。野菜マーケティング販売などのアップクオリティ(東京)が運営を担当し、19日、三菱地所(同)の社員に直販する。アップクオリティによると、バス会社と連携した農産物の貨客混載輸送は9県目。担当者は「都内のレストランやスーパーからも注文を取りたい」と話した。
西日本JRバスでは農産物の貨客混載輸送は初めて。金沢営業所の丸岡範生所長は「バスは3列シートで定員が28人と少なく、トランク収納に余裕がある。定期便を使って輸送したい」とした。
JAの辰島常務は「昨年の試験輸送では鮮度が高く、速く届くと好評だった。生産量の確保が今後の課題だ。これまで以上に、若い人にも加賀野菜を栽培してもらいたい」と期待を寄せる。
2019年02月19日

日本農業のグローバル化 知恵結集し輸出促せ 木之内農園会長 木之内均
日本社会は今、あらゆる分野のグローバル化について騒がれている。しかし、農業分野ではどうだろうか。
農水省の輸出促進対策などもあり、多くの日本の農産物や加工品が海を渡り、世界各地で日本食ブームを巻き起こしている。輸出対策が始まる前に、私は日本貿易振興機構(ジェトロ)の調査員として、東南アジア各国を回ったことがあるが、その頃は、日本の農産物を海外で販売することなど、考えもしなかった。
だが、実際に海外諸国へ行ってみると、鳥取県の梨や青森県のリンゴが既に輸出を成功させており、高い評価を受けていた。
当時は牛海綿状脳症(BSE)のため輸出できなかったが、和牛の肉は各国から要望があり、オーストラリア産「WAGYU」が知名度を伸ばしていた。
高評価に可能性
私はこの現象に驚いたと同時に、日本農業の可能性の大きさに、夢を感じずにはいられなかった。ところが日本の農業界では、まだ海外に目を向ける人はほとんどいない状況だった。
農業は大地に足をつけ、日々こつこつと動植物の世話をすることから始まる。日本の農村は、まさしく江戸時代の鎖国状態のようだった。
あれから十数年、農水省の輸出促進策の効果もあり、今では日本の農産物が世界に通用することを、多くの人々が認識する時代となった。
だが、このことが日本の農業者や産地を本当に潤しているのだろうか。私にはそう見えない。
私が会長を務める木之内農園を含めて、いくつかの農業法人や若手農家の中には海外進出を模索している人がいることは確かである。しかし、それは点にとどまる。
日本農業のように島国で閉ざされた所で育った個人や小さな法人経営体では、現実として海外進出のリスクや投資に耐えられるだけの体力を持つ経営体は、ごく一部にすぎない。
資金もさることながら、言葉や人種、宗教や文化の違いを乗り越えて、海外で本格的に農業ビジネスを展開できる経営体は無いと言っても過言ではない。
技術は世界水準
私は若い頃にブラジルで1年以上過ごし、その後も多くの国で農業に関わる仕事をしてきた。つい先日も米国のフロリダで開かれた米国イチゴ学会に参加した。
世界の農業者や研究者、農業関連企業の方と話をすると、全員が世界の市場を見据えた上で、自分の事業の進め方を考えている。日本のように、国内市場を中心に考えている農業とは全く異なっている。
日本農業は、島国で狭い耕地や四季の変化を持続的に利用し、高温多雨なモンスーン気候の中で繊細な営農技術を培ってきた。さらに、世界で最も高品質で安定的な生産ができる技術も編み出してきた。
生産現場が育んできたこの技術と、至れり尽くせりの機械や資材メーカーの技術、そして流通やマーケティング。全ての業界が協力して日本の農業と農畜産物のプラットホームを整え、世界に向けて貢献することこそが、日本農業の本当のグローバル化であり、求められる道筋ではないかと感じてならない。
きのうち・ひとし 1961年神奈川県生まれ。九州東海大学農学部卒業後、熊本県阿蘇で新規参入。(有)木之内農園、(株)花の海の経営の傍ら、東海大学教授、熊本県教育委員を務め若手育成に力を入れる。著書に『大地への夢』。
2019年02月18日

米の農産物検査の見直し 「制度継続」望む声 産地 手法効率化 流通 規格強化を 農水省調査
米の農産物検査の見直しを巡り、農水省は、産地や流通、実需など各段階の関係者に行った調査結果を公表した。同制度への要望を尋ねたところ、現状維持を求める意見が多く、同制度の廃止を求める回答はほとんどなかった。一方、検査員の確保に課題がある実態を踏まえ、産地からは検査の効率化を求める声も上がった。ただ、流通関係者は検査規格の強化を求める傾向となった。
同調査では、「生産者」「集荷事業者」「登録検査機関」「米卸」「米穀店」「炊飯事業者」の6段階の関係者に加え、「都道府県」に対し、同制度への要望を選択肢で尋ねた。
炊飯事業者は同制度について、「現状のままでいい」が43%で最多となった。炊飯事業者以外でも、全ての関係者で現状維持の回答が上位となった。一方、「(同制度の)全面的な廃止」を求める回答はどの関係者でも0~3%にとどまった。ほぼ全ての関係者が基本的に同制度の維持を求めている実態が明らかとなった。
ただ、産地からは検査の効率化を求める回答が相次いだ。「検査手法の合理化・簡素化」を回答した割合は、生産者で41%、集荷事業者で49%、都道府県で36%となり、それぞれ最多の回答となった。また、検査を行う登録検査機関では、「事務の簡素化」(49%)を求める回答が最多となった。
産地で検査員確保に課題がある実態を踏まえ、東北地方のJA関係者は「(等級などを判断する穀粒鑑定では)従来の検査員による目視鑑定に加え、機器による計測なども取り入れ、作業を効率化する必要がある」と指摘する。
一方、流通関係者からは「検査規格の強化」を求める回答が多かった。米卸で34%、米穀店で43%となり、それぞれ最多の回答だった。等級の判断に関わる基準の厳格化などを求める声がある。
同制度を巡っては、農業競争力強化支援法で今年8月までの見直し着手を明記。同省は1月下旬に産地や実需の関係者などを交えた意見交換会を開き、今回の結果を公表した。調査自体は2015年度に実施していた。
2019年02月17日
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2019年02月18日

豚コレラ 一般車両 消毒始まる 愛知
愛知県は豚コレラウイルスの封じ込めのため、田原市の発生農場から半径10キロの搬出制限区域の外でも、一般車両や畜産関係車両の消毒を始めた。県は「口蹄(こうてい)疫レベルの措置」で拡散を防ごうと必死だ。
田原市に隣接する豊橋市では、15日夜から①畜産関係車両の消毒②国道一帯に消毒液を散布③消石灰、または、消毒マットを敷設──を講じる。豊橋市の3カ所に設置した畜産関係車両の消毒ポイントは、24時間体制で稼働する。
作業員によると、週末のため関係車両の数は少ないものの「通過時には必ず立ち寄ってくれる。意識も高まっている」と話す。消毒後は証明書に、どこで何時に消毒したかを明記する。
幹線道路につながる道路6カ所にも、消石灰や消毒マットを設置し、消毒液の散水車も整備した。一般車両も消毒する。
県は16日、発生農場から半径3キロ未満の移動制限区域にある20農場について、立ち入り検査と血液検査の結果、異常はなかったことを確認した。同区域には発生農場を含めて35農場があり、15農場は関連農場として殺処分が進んでいる。
2019年02月17日
佐藤綾音さん(山形)大臣賞 農大校発表会
全国農業大学校協議会は16日、2018年度全国農業大学校等プロジェクト発表会・意見発表会の表彰式を東京都内で開いた。最高位の農水大臣賞に、山形県立農林大学校2年の佐藤綾音さんを選んだ。佐藤さんは「食品残さの飼料化で酪農経営の所得向上を目指す!」を発表。緑茶かすでベータカロテン補給飼料を開発し、乳牛の分娩(ぶんべん)間隔短縮につながったことを報告した。
2019年02月17日

[あんぐる] すき振るえ雨よ降れ 砂かけ祭(奈良県河合町)
奈良県河合町の廣瀬神社で毎年2月11日、農家役の「田人(たひと)」や参拝者が境内の砂を掛け合う、「砂かけ祭」が開かれる。砂は田畑を潤す水の象徴で、激しく飛び交うほど十分に雨が降り豊作になると伝わる。
祭りの当日、同神社の境内に、竹としめ縄で四方を仕切って水田を模した一角が現れる。広さ約60平方メートルの砂地で、砂の掛け合いに備え、世話役の農家がトラクターで軟らかく耕した。
祭りは米作りの所作を一通り行う「殿上の儀」から始まり、その後、境内に頭巾をかぶった白装束の田人が登場。砂の水田を耕しながら一周した後、手にしたすきで集まった人々に勢いよく砂を浴びせ始めた。
参拝者も田人に砂を掛け返すのが、この祭りの特徴だ。ゴーグルや雨がっぱを身に着け、手ですくい取った砂をぶつけて“応戦”。砂の応酬は休憩を挟んで1時間ほど続き、境内に人々の歓声や悲鳴が響いた。
同県橿原市から友人と訪れた吉田緑さん(60)は「見物客に砂を掛ける祭りなんて聞いたことない。逃げ回ったが砂だらけになった」と笑った。
廣瀬神社は紀元前89年創建と伝わり、日本書紀にも名が残る。675年には雨乞いや豊作祈願の祭りを行っていたとする記録もある。
宮司の樋口俊夫さん(71)は「この辺りは昔からは雨が少ない。水を求める農家の思いが祭りを生んだのだろう」と話す。
祭りの終盤には、地元産のもち米で作り、農家らが「田」の文字を押印した餅と、厄よけになる松葉をわらで巻いた松苗をやぐらからまき、五穀豊穣(ほうじょう)を願った。
世話役の一人で、稲作農家の山崎清兆さん(80)は「1000年以上受け継いだ祭りを次の世代に伝えるのが私たちの務め。砂に勢いがあったので、今年も豊作が期待できそうだ」と話した。(富永健太郎)
2019年02月17日

豚コレラ防疫 手尽くせども 疑心暗鬼 夜も眠れず 発生農家「経営再開、自力では・・・」
感染が広がる豚コレラで、岐阜県や愛知県の養豚農家が恐怖感と闘いながら厳戒態勢で経営を続けている。徹底した防疫対策をしていた施設でも発生し、感染原因が解明されていないことから「全てに疑心暗鬼になる」(養豚農家)と悲痛な声が上がる。殺処分を余儀なくされた当該農場や仲間の農家からは、経営再開に向けた支えを求める切実な訴えも出ている。
2019年02月16日

世界農業遺産に申請 日本版認定も 農水省
農水省は15日、山梨県峡東地域のブドウ栽培と兵庫県兵庫美方地域の但馬牛飼養、滋賀県琵琶湖地域の伝統的漁業の三つを国連食糧農業機関(FAO)が認定する「世界農業遺産」に申請すると決めた。秋ごろにも申請手続きを済ませ、受理後1年以内に結果が出る見込み。国内版の「日本農業遺産」として、7県7地域を認定した。
2019年02月16日

北海道 筆でレンズで 農の日々描く
日本の食を支え、俳句や写真などの創作活動で農業・農村の魅力を発信する。北海道にそんな農家がいる。題材は身近な農村の美しさや温かさ、厳しさなど、日々の営農で浮かぶ思い。多忙な作業の傍ら、作品のアイデアをつかむために周囲の観察を欠かさない。農家ならではの視点を生かした作品は、著名な俳句賞を受賞するなど高い評価を得ている。
俳句 “牛後”から表現豊かに 下川町・鈴木和夫さん
牛の尾を引き摺(ず)るやうに寒波来る
仔(こ)牛の寒衣(かんい)脱がせ裸と思ふ春
牛死せり片眼は蒲公英(たんぽぽ)に触れて
秋晴の定位置にあるトラクター
牛糞(ふん)を蹴ればほこんと春の土
トラクターに乗りたる火蛾(が)の死しても跳ね
角(つの)焼きを了(お)へて冷えゆく牛と我
(第64回角川俳句賞受賞作品より)
下川町で乳牛70頭を放牧などで飼う鈴木和夫さん(57)は、俳人としての顔も持つ。俳号は「鈴木牛後(ぎゅうご)」。「大きな組織の末端(牛後)でいるよりも小さな集団のトップ(鶏口=けいこう)になる方が良い」という意味の熟語「鶏口牛後」から、「末端(庶民)の視線を大事にしたい」とあえて「牛後」という言葉を借りた。
日頃の農作業や豊かな自然が題材だ。作品の一つ「美味(うま)き草不味(まず)き草あり草を刈る」。この作品を含む牛や風景をテーマにした50句は2018年、俳句の新人賞として名高い「角川俳句賞」に輝いた。牛や酪農を題材にした新鮮さと、確かな表現力が評価された。「牛を見ていると、おいしそうに食べる草と食べない草があることが分かってくるんです」と鈴木さん。
鈴木さんが俳句に出合ったのは10年ほど前。「酪農に従事しているからこそ、牛や風景など都会にはないものを詠める。季節や時期によってさまざまな顔を見せる自然や農業は題材に事欠かない」と話す。句集を作ることが目標だ。妻の淳子さん(55)も「これからも活躍してほしい」と活動を見守る。
鈴木さんが淳子さんに贈った句もある。「花を来し君と落花を見に行かむ」。若い頃から一緒に桜を見てきたあなたと、花が散るところまでを見たい──。新規参入で酪農経営を軌道に乗せるまで苦楽を共にした妻と、これからも2人で歩んでいきたいという気持ちを込めた。
写真 空と大地 一瞬狙う 芽室町・粟野秀明さん
芽室町で小麦やテンサイなど55ヘクタールで畑作を営む粟野秀明さん(55)は、十勝の広大な自然や生産現場の臨場感を写真で表現する。トラクターにカメラを積み、風景が美しいと感じたらすぐ作業を止めて撮影。地域の魅力を凝縮した一瞬を狙う。
写真は8年ほど前から本格的に始めた。一眼レフを買って半年後、地元の農業団体などが主催する「とかち農業・農村フォトコンテスト」に初めて応募。グランプリに選ばれ「写真熱が高まった」(粟野さん)。その後は独学で技術を磨いた。
主な撮影場所は自分の畑。今年度の同コンテストでグランプリに輝いた「大地のウェーブ」では、傾斜地のテンサイ畑を撮影。線状に並んだ苗が、地形に沿って波打って見える様子を捉えた。
作品はブログや写真展などで発表する。1月下旬には2度目の個展を札幌市で開催。作品53点を展示し、6日間で約1500人が来場したという。市内から訪れた男性は「農業をしながら素晴らしい作品を撮っていることに感動した。畑の造形美が伝わってくる」と絶賛した。
写真を通じ、粟野さん自身も農村の見方が変わったと実感する。「普通だと思っていた紅葉も、レンズを通すと美しく見えた。わが家の畑の魅力を再発見できた」。今後は風景に加え、「人物を主体にした写真などにも挑戦したい」と意気込む。
2019年02月14日

手乗りハス「種」「苗」も アイデア商品続々と 大木園芸 千葉県東金市
千葉県東金市の大木園芸は、観賞用の花ハス「手乗りハス」の苗や鉢花、その種となる「レンコン丸」を生産、販売している。「レンコン丸」はポットで根域を制限し、輪っか状に育てたもの。丸いパックに詰めコンパクトな形で流通、販売できる。園芸店や通信販売で徐々に扱いを伸ばしている。
園主の大木正人さん(67)は、かつて植木を販売していた。現在は花ハスが専門で、趣味が高じて20年近く前から販売を始めた。小型の容器で咲かせるものを集め「手乗りハス」と名付け、茶わんバスなどの一般的な呼称と差別化している。
栽培は、夏から秋に肥大したレンコンを、1~3月に株分けして植え替える。「レンコン丸」の荷造りもこの時期で、出荷は2月から3月20日ごろまで続く。
「レンコン丸」は5年ほど前から取り組み始めた。底穴のない13・5センチのポットで育てると、レンコンは輪っか状になる。ポットから出して不要な部分を切り、食品などに使うクリーンカップに水と詰めて商品とする。ふたのラベルで品種ごとの花を紹介する。
透明な容器に入っているので、客は商品の状態を見て購入できる。店にとってはクレームやトラブルが少ないのが利点だ。
販売の主力は苗で、これまで総売り上げの約8割を占めている。「レンコン丸」は1割にも満たないが、大木さんは「だんだん認知され、扱うところが毎年1、2社、増えてきた」と話す。今期は園芸店6社、通販4社となった。
「手乗りハス」「レンコン丸」は大木園芸の登録商標。「レンコン丸」では作り方などで特許出願中だ。既に2品種が登録され、6品種を出願している。
2019年02月11日

大阪 殺処分できず 愛知の肥育豚 静岡も搬入、監視 豚コレラ
静岡県は7日、菊川市のと畜場に、愛知県で豚コレラの陽性となった農場から肥育豚が出荷されていたとして、同じと畜場を使っていた農家を監視することを決めた。出荷用の車両などに付着することで、ウイルスが別の農場に持ち込まれる恐れがあるためだ。また、豚コレラの発生が確認された大阪府東大阪市の当該農場では、殺処分などの防疫措置作業ができない異例の事態に陥った。
菊川市のと畜場には、6日に豚コレラが確定した愛知県豊田市の農場の関連農場(田原市)から4日までの計5日間で200頭が出荷された。
静岡県で監視対象となる農場は最大で16カ所。県はこれらの農場に対し、28日間、豚の異常と死亡を家畜保健衛生所に報告するよう要請。出荷以外の豚の移動を自粛するよう求めた。
また、陽性が確認された5府県の農場からも、肥育豚が各地のと畜場に出荷されている可能性があるとして、長野県などでも農場の監視を検討している。
防疫作業を進める大阪府東大阪市の農場は住宅街にあるため、殺処分ができなかった。その理由について府は、事前に想定していた焼却場が遠いことに加え、住民に配慮したことを理由に挙げる。
府は事前に、国が所有する「レンダリング装置」を使い、殺処分した家畜を破砕・加熱処理する方法を想定していた。ただ、今回は農場が都市中心部で、郊外の処理場所までの移動ができない事態となった。都市で家畜伝染病が発生した場合の対応の難しさが浮き彫りになった。
2019年02月08日

二人三脚 豪雨禍乗り越え 地鶏肉加工所来月完成へ 過疎集落住民23人 「ジロー」で守る 「ここで生きる」決意新た 高知県安芸市 小松さん夫妻
住民23人の高知県安芸市の山あいの集落・畑山で、地鶏「土佐ジロー」の新たな食肉加工所が来月に稼働する。小松圭子さん(35)が代表を務め、夫の靖一さん(60)と経営してきたが、念願の加工所建設に向けて動きだした矢先、西日本豪雨が襲った。集落に続く唯一の道路が土砂崩れや崩落で寸断するなど深刻な被害に遭った。多くの人の支えとともに、夫婦二人三脚で未来を描く。
かつては800人が暮らす集落だったが、人口は激減。急峻(きゅうしゅん)な山あいに位置し、市街地からは車で40分ほどかかり、携帯電話の電波も1社を除き、届かない。圭子さんは「過疎地の最先端」と表現する。
集落に生きる場所を求めて2010年、「土佐ジロー」を飼養する地元の農家、靖一さんと結婚した圭子さん。「1000年続いた村を、消滅させてしまって良いのか」と、2人の子どもを育てながら、はたやま夢楽の代表として奮闘。土佐ジローの飼養、加工・販売、ユズの栽培に加え、行政から指定管理を受ける温泉宿、食堂「はたやま憩(いこい)の家」の運営と、なりわいづくりに汗を流してきた。今では全国から土佐ジローの味を求めて集落に年間3000人が訪れる。
自然豊かな山里の暮らしには、同時に厳しさも付きまとう。市の指定管理者として運営してきた土佐ジローの加工場が、18年度中に取り壊されることが決定。昨年6月中旬から、新施設建設費用の一部をクラウドファンディング(CF)で集めている最中、西日本豪雨が集落を襲った。
集落に続く唯一の道路は土砂崩れや崩落で寸断。電話も通じず孤立した集落で、圭子さんと子ども、集落の住民は自衛隊のヘリコプターで救助された。靖一さんたちは土佐ジローの管理や住民の安否確認に駆け回り、道路は住民が自力で直した。そんな集落の姿に、圭子さんは「集落で生きるそれぞれが、生きる知恵を発揮した。ここで生きていきたいと改めて思った」と振り返る。
CFでは、全国の400人から温かい言葉とともに847万円が集まった。「私たちの活動への通知表のようなものに思える」と圭子さん。
小松さん夫妻の存在が、同じく中山間地での暮らしを模索する人の励みになっている。同県いの町から、はたやま憩の家を訪れた植田英さん(71)と尾崎敏明さん(64)。植田さんは高知市からいの町に移住し、もち米復活へ、同町にUターンした尾崎さんは地域の猟友会や仲間と地域づくりの方策を探っている。植田さんは「地域おこしは賛同が得られずに心が折れることがある。そんな時、小松さんの所に行くと元気をもらえる」と話す。
圭子さんはインターネット交流サイト(SNS)や、講演などを通じて「田舎でそれぞれの価値観が生かされる生き方」を発信する。そのためにも「なりわいを築くことが重要だ」と言う。
靖一さんは「地域おこしはイベントやハレの日をつくることではなく、軸になるのは1次産業だ」と強調する。ササミ、砂肝、トサカまで、一切れずつ靖一さんが客の前で焼いて提供する「土佐ジロー」が、全国からリピーターを呼び込む。
古里で暮らし続けていける産業をつくろうと飼養を始めて31年目、一緒にやりたいと圭子さんが言ってくれたことで「頑張ってきたことが報われた」と靖一さんは笑う。圭子さんは「楽しく暮らせる可能性がある。やれるところまでやっていきたい」。夫妻の二人三脚は続いていく。
2019年02月08日