「土俵人生において一片の悔いもございません」

 「土俵人生において一片の悔いもございません」。大相撲の横綱稀勢の里が現役引退を決めた。初日から3連敗での結論である▼進退を懸けた「正念場」の初場所。横綱にふさわしい強さを出すことはできなかった。不戦敗を除いて、昨年秋場所千秋楽からの8連敗。貴乃花を超える不名誉な横綱ワースト記録となった。左大胸筋のけがが尾を引いたとはいえ、思うような相撲が取れないこの2年間は、いばらの道だったに違いない。会見での涙が心境を映し出す▼もともと器用な方ではない。左からの攻めにこだわっては決めきれず、押し込まれて浮き足立つ。裏返しにされて大銀杏(おおいちょう)に土をつけた逸ノ城戦が全てを物語った。格下の力を受け止められなくなっては、綱を締め続けることはできない。プロの世界の厳しさよ▼ファンの期待も重かっただろう。日本出身横綱に、勝っても負けても惜しみない声援を送り続けた。国技館の異様な雰囲気に、復活への祈るような思いをひしひしと感じたに違いない。それに応えようともがき、必死に土俵を務めた。重圧は予想を超えるものだったはず。それでも逃げようとしなかった。その姿勢こそ立派である▼まだ32歳。土俵人生は終わっても指導者としての“本場所”はこれから。今は、ただ、お疲れさま。

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