中山間地域の災害 復旧置き去り 支援急務

 条件不利地の復旧支援を充実させるべきだ。豪雨被害からほぼ3年がたつ熊本県山都町で、被災した農地と農業用施設の5割以上が手つかずのままとなっている。中山間地域のため道幅が狭く、重機が入りにくいなど作業性の悪さから、工事の引き受け手が見つからない。災害復旧では全国共通の課題だ。

 同町は、2016年に発生した熊本地震から2カ月後に、豪雨に見舞われた。1時間に126・5ミリという猛烈な雨で、水田のあぜやのり面が崩れる被害が多発。地震の揺れで地盤が緩んでいたことが、被害に拍車を掛けた。農地や農業用施設の被害は約1600件。だが、今年5月までに工事が終わったのは376件と4分の1に満たない。工事中の407件を合わせても半分以上が工事開始の見通しが立たない異常事態だ。

 地元農家は不安を募らせる。美しい景観が自慢だった棚田に土砂が流入し、雑草が生い茂る。「農業を再開するどころか、工事の見通しすら立たない」と悲痛の声が上がる。

 大規模災害の復旧工事は、通常は複数の農地をまとめて施工する。移動に時間や手間がかかる重機を効率的に運用するためだ。だが、局地的な被害の場合、そうした運用ができない。特に中山間地域は道幅が狭く、重機を入れにくいなどの問題があり、工事を請けてくれないケースが多い。

 工事の発注は、町が競争入札を行い、落札した業者が請け負う。一般的には町内や県内の業者を対象に競争入札を行うが、苦肉の策として同町は全国の業者を対象に広げる対策をとった。それでも、手を挙げる業者がなく、再入札になることが多いという。町の担当者は「熊本地震の陰に隠れて、豪雨被災地も苦しんでいる。どうか工事を請けてほしい」と切実だ。熊本地震で被災した農地の営農再開率は99・7%とほぼ100%に達した。だがその陰で豪雨被害の復旧工事は一向に進まない。崩れた水田を自ら手直しし、応急処置で稲作を続ける農家もいる。だが、再び強い雨が降れば崩れてしまい、堂々巡りが続いている。被災農家の焦りと不満は募る一方だ。

 17年の九州北部豪雨でも、平野部の水田は1年で大幅復旧が進んだが、樹園地はほぼ手つかずだった。中山間地域の復旧支援は全国共通の課題だ。

 昨年は大阪北部地震や、西日本豪雨、台風21号、北海道地震など大規模な自然災害が続発し、各地に大きな打撃を与えた。復旧のめどが立たない中山間地域の農家にどう目配りをするかが、生産基盤の維持には欠かせない。ただでさえ、少子高齢化や労働力不足などで基盤の強化は喫緊の課題となっている。

 災害によって、意欲ある農家が離農することがあってはならない。中山間地域の局地的被害に対応した予算措置など、きめ細かい支援策の確立が求められている。

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