塚原直也さん(元体操選手) みそ汁なら苦手な野菜も

塚原直也さん

 小さい頃から偏食なんです。まずいですよね、特にスポーツをやる上では。

 野菜が苦手なんです。でもキャベツとかレタス、ホウレンソウの葉っぱの部分は食べられるので、なるべく取るようにしています。

 好きなのは麺類。そば、うどん、ラーメン、きしめん、スパゲティ……なんでもおいしく感じます。ただしちゃんとこしがないといけなくて、柔らかい麺は駄目です。
 

肉で必勝験担ぎ


 大会前は肉です。自分のフィーリングでは、肉を食べないと力が出ない。必勝と言ったらやっぱり肉。験を担ぎました。選手によっては、肉を食べると体が重くなると避ける人もいました。

 体操競技では、体重が500グラム~1キロ増えると、技に影響が出ます。そのためしっかりとした自己管理が必要です。選手一人一人、体と食に関して違いがあります。同じ食材・料理を食べても、太る選手もいれば、全然影響のない選手もいます。各自が管理しないといけません。

 オリンピックの時は選手村で食事をしました。ビュッフェ式で好きなものを取って食べるんです。

 まずは肉のコーナーに。牛、豚、鶏といろんな料理があるので、おいしそうに見えたものを取ります。これだと思って取ったのに、食べたらちょっと違うなということもありました。そんな時は別の肉を取りに行きます。残すのはもったいないけどしかたない。野菜は、葉物なら食べられるので葉物を探して。海外だと見たことのない野菜ってあるじゃないですか。それには決して手を出しません。炭水化物は、パサパサの長粒米とスパゲティの両方を食べました。

 食べ物の取材なのに、申し訳ないことに僕は食べ物に興味がないんです。とにかく競技のことで頭がいっぱい。他のことが面倒くさくなってしまい、何を食べたいということに考えが回りません。
 

妻の料理に感謝


 現役時代は、体操のことを考えだすと、眠れなくなりました。大会前だけでなく、普段からそうなんです。技の向上に必要なことを考えだすときりがなくて、眠るどころではありませんでした。

 僕は38歳まで現役を続け、今は女子選手を指導しています。女子の場合、選手のピークは高校生くらい。多感な時期だし、育ち盛りなのに体重が300グラム違えば、影響が出てきます。男子と比べ力がない分、技の正確性が求められます。平均台なんて、たった10センチしか幅がない。その上での演技には繊細さが必要です。「女子は大変だな」と感じつつ、一人一人に合わせて指導をしますから、僕が考えないといけないことは無限です。結局、指導者になってからも食べ物に頭が回りません。

 この取材を受けるに当たって、好きな料理ってなんだろうと考えてみたんです。思い付いたのが、奥さんの作ってくれるみそ汁。6歳、4歳、1歳の子どもがいて、子育てで大忙しの中、僕が苦手な野菜を食べられるようにと、時間をかけて千切りにしてくれるんです。ゴロゴロした状態なら食べられないけど、とても細く切ってくれるから食べることができる。

 僕の体調を気にして作ってくれている。そう思うと感謝の気持ちでいっぱいで、みそ汁を見るとテンションが上がるんです。

 奥さんに「今度の取材でみそ汁について話そうと思う」と言ったら、反応が良くなかったんです。もっと手間を掛けて自慢の料理を作ってくれていたのでしょう。それに気付かずに本当に申し訳ないと思っています。(聞き手・菊地武顕)

 つかはら・なおや 1977年、東京都生まれ。父はメキシコ、ミュンヘン、モントリオール五輪金メダリストの光男氏、母はメキシコ五輪代表の千恵子氏という体操一家に育つ。96年から全日本選手権で5連覇。2004年のアテネ五輪男子体操団体で金メダルに輝く。16年に現役を引退。現在は朝日生命体操クラブ総監督

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