東西冷戦終結30年 多国協調実現へ主導を

 世界史上、劇的な転換点となった「ベルリンの壁」崩壊から9日で30年を迎える。東西冷戦は終わりを告げたが、その後の社会では「新冷戦」とも称される新たな対立が激化する。日本は協調型の多国間主義を掲げ国際安定に寄与すべきだ。

 30年後の今を表す言葉は分断と混沌(こんとん)だろう。自由主義陣営の中心であるべき米国の大統領には「自国第一」を唱えるトランプ氏が就き、世界に対立と不確実性の種をまき散らしている。次期大統領選まで1年を切り、米国最優先の言動が強まる。一方で中国、ロシアでは強権的なリーダーが長期政権を続け、自由主義や民主主義の価値観に挑戦している。

 30年前、1989年のベルリンの壁崩壊、それに続く同年12月の米ソ首脳会談で「冷戦は終わった」と正式に確認。平和と経済発展をもたらすと人々は期待を膨らました。国連中心に多国間協調の国際秩序の維持管理を意味する「パックスコンソルティス」の言葉も広がった。

 しかし30年後の今、希望は失望に置き換わった。民族紛争は収まらず貿易紛争も火を噴き、分断という名の新たな壁も至る所に広がっている。世界は大きな曲がり角に立っていると言っていいだろう。国内外で広がる経済格差の拡大は、人々の政治不信を募らせる。

 この30年間は昭和から平成への改元とも重なる。日本農業にとっては牛肉・オレンジの市場開放に続き93年のガット・ウルグアイラウンド合意。さらに、ここ数年の大型通商協定の相次ぐ発効は、平成の30年間が農産物自由化一辺倒の時代だったことを裏付ける。農政転換し即刻是正しなければならない。

 30年間を3区分すると分かりやすい。まず89年は二つの重要な事件が起きる。ベルリンの壁崩壊と、中国の天安門事件による民主派の武力鎮圧だ。同事件は今の香港騒乱とも結び付く。二つ目の転機は2001年以降。米国での同時テロ発生とイラク戦争など戦火の広がり。同年は、中国が世界貿易機関(WTO)に加盟し経済発展が加速。ロシアには前年、プーチン大統領が登場し米国と対抗していく。三つ目は08年の世界金融危機の引き金となったリーマンショック。国際経済問題対応へ20カ国・地域で構成するG20が発足し、中国の存在感が一挙に強まる。

 そして現在、米中は次世代通信規格「5G」などハイテク分野を中心に21世紀の覇権争いで激突し、世界経済を分断の渦に巻き込む。日米印などが中心の「インド太平洋構想」と、中国主導の「一帯一路」に二分される状況だ。民主主義と自由主義は大きな試練に立つ。

 資源の少ない日本の方向は多国間主義以外にない。日米関係を最重視しながらも、アジア全体を視野に中国との経済協力関係も強めるべきだろう。むしろ米中の仲介役を果たし、協調的な多国間主義を掲げ政治力を発揮すべき時だ。

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