国産チーズ新局面 需要創造と所得支援を

 国産チーズ振興が新局面を迎えている。中央酪農会議の国産ナチュラルチーズ全国審査会の応募は過去最高を記録し、地域色豊かな作品がそろった。需要も着実に伸びている。一方で今後、貿易自由化の影響も懸念される。生乳需要の柱である国産振興とともに、酪農家の所得確保も重要だ。

 2年に1度の全国審査会は今年12回を迎えた。応募生産者は86工房、出品は200を超えた。過去最高の参加だ。東京都内で行った出品チーズの審査と試食会には約600人が参加し、例年の2倍を記録した。国産ナチュラルチーズに関心が高まっている表れだろう。年々レベルも上がっており、世界で日本のチーズの品質も認められてきた。

 全国審査会で最優秀賞の農水大臣賞は北海道長万部町の川瀬チーズ工房。受賞作はハード系のゴーダチーズに近い「フリル」。ミルクの風味と熟成度が味わえるこくのあるおいしさが評価された。受賞作の一つ、広島県三次市の三良坂フロマージュの「じゅくし柿」は和風とヤギの乳を使ったのが特色だ。名前の通り、近くの山で採取した柿の葉に包み熟成させた。ヤギは中山間地での放し飼いに向いており、独特の風味をうまく活用すれば良質な国産ナチュラルチーズになることを証明した。

 農水省が国産チーズ振興に立ち上がったのは40年前。当時、牛乳・乳製品の需要が停滞し、生乳過剰から計画生産の徹底が叫ばれた。そこで、需要拡大の有望品目として国産チーズを増やす方向を明確にした。

 少量生産の個人の工房とは別に、量産の動きも40年前から加速した。同省は当初、約50億円のチーズ基金で支援。中酪、ホクレンなどは北海道の農協系乳業、北海道農協乳業(現よつ葉乳業)の十勝工場に国産チーズ工場を建設し、本格的なナチュラルチーズ製造に踏み出した。大手乳業も道内主要工場で相次ぎチーズ製造を拡大した。

 大きな曲がり角は、相次ぐ大型通商交渉に伴う乳製品の市場開放、チーズ自由化の動きだ。乳業メーカーに国産の使用を促す輸入原料との抱き合わせ制度も、関税削減に伴い数年で効かなくなる。欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)では需要増のソフト系チーズの市場開放にも踏み切った。

 自由化は国産振興とは逆行した動きだ。国産が今後どうなるか懸念が募る。審議中の酪農肉用牛近代化方針(酪肉近)では10年後の生乳生産目標が焦点だ。現行目標750万トンに対し乳業は800万トンの増産目標を主張。増産根拠の柱として国産チーズの需要拡大を見込んだ。一方でチーズ向け生乳増産は難題を抱える。チーズ向け乳価は1キロ当たり70円台。酪農家のチーズ傾斜は所得に響きかねない。半面、自由化で国際競争が激しくなる中で乳業は少しでも安価な生乳を求める。国産振興へ酪農家の所得支援も課題だ。
 

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