五輪まで150日余 地域で防疫体制点検を

 東京五輪・パラリンピックの開幕まで150日余り。新型肺炎がどう影響するかは現段階では未知数だが、病原ウイルスが国境を越える不安は家畜疾病も同じだ。人の往来が激しくなる国際的なイベントだけに、近隣国の動静に注意を払い、地域の防疫体制を点検しておきたい。

 新型肺炎が騒がれる前、この冬はインフルエンザが猛威を振るった。米国での大流行の影響も取り沙汰されているが、ラグビーワールドカップの開催で国境を越えた人の動きが激しくなり、ウイルスが例年より早く、日本国内で拡散したという見方を示す医師もいる。

 人の動きは家畜疾病にも影響する。五輪で訪れる外国人が、病原因子を持ち込む可能性は否定できない。

 現在騒がれているアフリカ豚熱のウイルスは、アフリカに生息するイボイノシシの体内に常在している。通常はアフリカ大陸内で収まっているが、2007年に欧州に侵入した。黒海とカスピ海の間にあるジョージアという国だ。この時は船舶の食品残さが媒介したとされる。

 翌年には隣国ロシアに広がった。両国の間には4000メートル級のカフカス山脈が横たわる。険しい山を越えて野生動物がウイルスを運ぶことがあるのかもしれないが、この年は人の行き来が激しかった。ジョージアとロシアの間で軍事衝突が起き、軍や難民も含め、人や物資が国境をまたいで右往左往したのだ。人が動けば食肉や肉加工品が動く可能性も否定できない。

 ウイルスはロシアから中国、東南アジアへと拡散した。日本獣医師会が開いた講演会で、中国では北部の養豚地帯と南部の消費地を結ぶ高速道路沿いに発生が見られるとの報告があった。アフリカから欧州への直行便の手荷物から、イボイノシシの頭や肉が見つかったエピソードも紹介された。

 日本では、中国の食肉加工品からウイルスが出た。同病で死んだ豚を廃棄せず、食肉加工場が使った可能性が疑われる。野生動物がウイルスを運ぶというより、人間の活動が拡散している可能性が大きいのだ。

 国が策定した家畜防疫対策要綱は事前対応型の防疫体制を重視。治療より予防が肝心なのだ。人間活動によるウイルス侵入を予防するため、国、都道府県、経営体などがそれぞれ防疫体制を強化するだけでなく、民間団体を含め地域単位で体制をつくり、多重に守りを固めたい。

 家畜保健衛生所や農業共済組合が農家の指導などに取り組んでいるが、畜産とは関係のない地域住民や外国人技能実習生にも、防疫への意識を持ってもらいたい。そのためには畜産農家やJAの働き掛けも必要だ。

 地域住民が集まる公園のごみ箱に食肉製品の食べ残しが落ちていたり、外国人旅行者が勝手に農場に入ったりするようでは困る。どんな危険が潜み、どんな対応策があるかを地域でチェックしてみよう。

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