食品ロス削減 着実に“一歩” 業者、消費者、農家「できること」から

手前に並ぶ販売期限が近い商品の購入を呼び掛けるポスター(神戸市で)

 食品ロス削減に向けて、農家や小売り、飲食店、消費者、協同組合、自治体などそれぞれが取り組む“小さな一歩”が鍵を握る。31日に閣議決定された政府の基本方針でも、それぞれが役割を果たし、連携する重要性が示された。専門家は「各自の実践と連携が食品ロス削減につながる」と呼び掛ける。(本田恵梨)
 

基本方針を閣議決定 規格外の活用容量適正化も


 政府は31日、食べられるのに捨てられてしまう食品ロスの削減に向けて、具体的推進方法や農業者、食品業者、消費者などそれぞれの役割などをまとめた基本方針を閣議決定した。農林漁業者や食品関連事業者、消費者の役割と行動を明確化した。国の基本計画に基づいて、都道府県と市町村が推進計画を立てる。

 基本方針策定は、昨年10月施行の食品ロス削減推進法に盛り込まれていた。消費者庁や農水省、環境省などと有識者でつくる食品ロス削減推進会議が議論して案を提示した。基本方針では農林漁業者や食品業者に対し、①規格外や未利用の農林水産物の活用②食品製造時に生じる端材や型崩れ品の有効活用③保存容器包装の工夫による賞味期限の延長④消費実態に合わせた容量の適正化──などを求めている。
 

商品棚「手前から」 期限切れ対策コープこうべ


 「すぐに食べるなら、手前から取ってね!」。神戸市の生活協同組合コープこうべは、手前に並ぶ販売期限が迫った商品を選んでもらうよう店舗で呼び掛ける「てまえどり」作戦を展開する。ポスターを全159店舗に掲示する。もともとは、古い食品から買うことが必要だと感じていた組合員有志が、手作りのPOP(店内広告)を店舗に持ち込むなどしていた。

 この店舗単位で自主的に始まった活動が、コープ全体に広がった。神戸市と2018年10月の1カ月間、市内の34店舗で販売期限が近い商品の購入を促す「てまえどり」キャンペーンを試行的に実施。棚の手前に並べた販売期限が近い商品を選んでもらおうと、店内にポスターを掲示して呼び掛ける他、買い物籠にも同様のステッカーを貼った。値引きのタイミングや発注の見直しなども併せて行い、廃棄量を前年同月に比べ1割以上減らした店舗もある。

 19年10月からは、コープこうべ単独で市外にも取り組みを広げ、「てまえどり」のポスター掲示などを全店舗で行う。買い物に訪れた神戸市の山本信子さん(71)は「ポスターを見るまでは特に意識して選んでいなかったが、良い取り組みだと共感した。今は、きょう食べる分は手前から取るようにしている」と話す。

 コープこうべ環境推進の井野健太郎環境担当係長は「事業者の都合を押し付けるのではなく、組合員と共に取り組むことが大事。協同組合の基本である助け合いの力を生かして取り組んでいきたい」と意気込む。
 

食べ残し持ち帰り ごみなしレシピ 天気で製造量調整 自治体やJA


 420自治体が参加する食品ロス削減を進める「全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会」によると、各地で創意工夫が広がっている。同一商品で前回納品したものより古い商品は納品できない日付順納品、賞味期限が残り3分の1を切ると店舗から撤去されるといった“商習慣”と呼ばれるルール見直しや、外食産業の食べ残しの持ち帰りサービス、小盛りや小分けメニューの活用など、できることは多い。家庭での食材の使い切りや生ごみ削減も重要な対策だ。

 富山市の食生活改善推進委員、舘川敬子さん(66)は、使い切れるレシピ開発や生ごみを出さない料理を地域に広めている。舘川さんは、富山県が取り組む余った食材を持ち寄っておいしい料理にしてパーティーなどで楽しむ「サルベージ・パーティー」を推進するサポーターの一人。「新型コロナウイルスの感染が終息したら、サルベージ・パーティーを開きたい。地域の身近な人と楽しんで、食品ロスを削減したい」と話す。

 同県では国の基本方針決定に並行し、JAなど生産、流通、消費者、行政、有識者などと食品廃棄物削減に向けた県民会議を開いてきた。4月上旬にも推進計画を決定し、地域ぐるみで対策をする。

 福岡県JAむなかたの「米粉パン工房姫の穂」では、天気予報を踏まえて製造量を調整する。雨天だと来客数が減ってしまうためだ。完売する量をいつも見通して製造し、売れ残りを5%以内に収めているという。同店は「食品ロス対策だけでなく、経営的にメリットは大きい」と話す。
 

「当事者意識」が運動の鍵 

 

全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会の会長で環境カウンセラーの崎田裕子氏の話


 基本計画では、それぞれ役割を果たす必要性と、消費者や事業者などが協力、連携する重要性の両方がうたわれている。例えば外食時の食べ残しの持ち帰りでも、消費者の理解がなければ広がらない。農家やJAが規格外の農作物を有効活用しようとしても、単独では流通や経費、販路の問題もある。自治体が各自をつなぐ役割を果たし、地域ぐるみで食品ロス削減を進めていくことが鍵を握る。食を生み出す生産現場の農家やJAにも当事者意識を持って関わってほしい。
 

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