生乳用途で過不足 国はバター輸入削減を

 新型コロナウイルス禍で、8月に入り生乳需給の見通しが不透明感を増している。Jミルクは12月までの見通しを発表した。用途別過不足が一段と顕在化し、綱渡りの状況を裏付けた。牛乳の逼迫(ひっぱく)が続く一方、乳製品在庫の積み増しが懸念される。国は需給実態を直視し輸入対応をすべきだ。

 Jミルクは7月末、今年度第3四半期まで(4~12月)の生乳・牛乳乳製品見通しを発表した。例年は年度末までの数字を示すが、コロナ禍で学校給食牛乳(学乳)の動向、外食、中食など業務用需要の予測が難しく、初めて12月までの見通しにとどめた。

 焦点は、夏場の牛乳最需要期に供給不足が生じないかだ。全国的に学校の夏季休業短縮に伴い、異例の8月の学乳供給となる。学乳供給が最優先となるため、8月中旬以降に首都圏のスーパーへの牛乳供給の不足も懸念される。Jミルクは、暑熱対策の徹底で都府県での生乳生産減を極力抑える一方で、流通業界には牛乳の廉売自粛、加工乳など代替品販売も強調する。

 生乳全体の約6割を占める北海道から大都市圏への大量の生乳移出が欠かせない。需給見通しでは、7~10月まで月平均で6万3000トン近い移出が必要と試算した。特に逼迫がピークとなる9月には6万5000トンと輸送能力の限界近い供給が迫られる。10月に6万トンを超す道外移出は初めてだ。

 次の懸念は、堅調な牛乳需要の半面で、コロナ禍による外食産業の不振などで業務用需要の落ち込みが続き、乳製品在庫が増大している点だ。

 在庫拡大を放置すれば、乳製品地帯の北海道をはじめ国内の生乳生産にも悪影響を及ぼしかねない。脱脂粉乳の過剰に加え、バター在庫が積み上がってきたことが大きな課題だ。バターの第3四半期末の在庫は前年同期比38%増の3万2600トン。農水省は9月末に、生乳の需給動向を踏まえ国家貿易による今年度のバター輸入枠2万トンの扱いを判断する。

 バター問題を複雑にしているのは、用途で事情が大きく異なる点だ。全体の8割近い業務用の在庫拡大の一方で、約200グラムと小ロットの家庭用は巣ごもり消費で堅調な需要が続く。乳業の製造実態は業務用の1ポンド(450グラム)単位の大ロット生産が中心で、家庭用を増産する製造ラインにはなっていない。

 生乳需給はコロナ禍で今、アクセルとブレーキを用途によって同時に踏み分ける難しい判断が求められている。今年度からスタートした新たな酪農肉用牛近代化基本方針(新酪肉近)では、10年後の生乳生産を現行より50万トン増の870万トンにする意欲的な目標を定めた。酪農家の生産意欲に冷水を浴びせる事態は許されない。既に過剰が深刻な脱粉は、当初輸入枠4000トンから750トンに大幅縮小した。バター輸入枠も在庫増加を踏まえた削減の決断が必要だ。
 

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