ワクチン効果に空白 切れ目ない豚熱対策を

 全国有数の養豚県、群馬で初めて確認された飼育豚の豚熱感染は、ワクチン接種済みの農場で感染が分かった全国初のケースとなった。感染したのは未接種の70日齢前後の子豚で、下痢の症状が治まるまで接種が見合わされていた中で起きたという。母豚から移行したワクチンの効果は50日齢程度でなくなるとされ、今回の感染は“ワクチン空白期間”を突かれた形だ。豚熱対策は新たな段階を迎えた。

 「ワクチンを接種している農場から感染豚が出るとは」。群馬県畜産協会の糸井浩専務は、26日夕に農水省から受けた電話連絡の内容に絶句した。同県は昨年10月下旬、全国の第1陣として飼育豚への接種に乗り出し、1回目の接種を終えた1月以降も生まれた子豚への接種を続けている。また、南隣の埼玉県では昨年秋に豚熱感染が確認され、群馬でも防疫対策の徹底が図られてきただけに「何が起きたのか」と疑問がわいた。
 

下痢で「接種延期」


 この農場は、繁殖から肥育まで行う一貫経営で、感染が判明した子豚もワクチンを接種した母豚から効果を引き継いで生まれてきたとみられる。

 しかし、県畜産課によると、母豚からのワクチン効果が消え、最初の接種期となる50日齢前後を迎えた9月上旬、農場から「子豚が下痢で調子が悪く、ワクチン接種を延期したい」との連絡があった。衰弱した子豚が毎日死亡しており、ワクチン接種で体調がさらに悪化する恐れがあったことから接種担当の獣医師らも延期を受け入れた。

 しかし、子豚の死亡は続き、農場から「250頭が死んだ」と異常事態を知らせる通報があったのは延期してから約20日後の25日。県はその日のうちに検体を採取し、検査を開始。12時間後、豚熱の疑似患畜と判定され、国の機関が確定した。

 糸井専務は「この20日間にワクチンの効果に空白期間があった」とみる。「いつ、どのような経路で感染したのかは国の調査を待つしかない」としながらも「子豚の体調から接種日を延ばす農場は他にもある。母豚が全て接種済みだったのであれば防疫対策を見直す必要がある」と語った。

 一方、農水省は「ワクチンを接種しても十分な抗体が得られるのは統計上8割。さらに、未接種の子豚が存在する時期は必ずある」とした上で、「接種したから安心だとは言い切れない」と強調する。

 特に群馬県のようなワクチン接種推奨地域は野生イノシシなどからの感染リスクを抱える。「畜舎ごとの服や靴の交換や、機材の洗浄消毒などを含む飼養衛生管理基準の確認、順守を徹底してほしい」と求めた。
 

「二重の危機」不安


 発生農場から10キロの距離にある高崎市内の養豚農家は「本当に気の毒だ」と思いやり、「接種時期を徹底し豚舎の見回りも増やす」と気を引き締めた。群馬県では昨年10月から55頭の野生イノシシの豚熱感染が判明しており、終息の兆しは見えない。「県内では豚の盗難も相次いでいて、侵入者がウイルスを媒介する恐れもある。二重の危機だ」と不安を口にした。

 27日朝から養豚農場の周囲に新たな防護柵を設置していた高崎市内の別の農家は、「感染防止対策を図る上で(発生農場への)感染経路を早く知りたい」と国の調査結果を待ちわびていた。
 

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