特定技能の外国人 安心して働ける環境を

 外国人の新たな在留資格「特定技能」を得て農業分野で働く人が1000人を超えた。日本の農業に限らず、外国人材は国内外で必要とされている。最大5年在留する外国人に定着してもらえるよう、安心して働き、生活できる環境を、受け入れ農家やJA、地域がつくっていくことが欠かせない。

 特定技能は改正出入国管理法で創立された在留資格で、2019年4月に始まった。3年間の技能実習生の修了者や技能に関する試験に合格した外国人が対象で、通算で最長5年間日本で働ける。人手不足が特に深刻な農業や介護など14の産業分野での労働を認めた。同じ業種であれば転職もできる。技能実習生は技能の移転を通じた国際貢献が原則だが、特定技能は即戦力の労働者。農業では、実習生はできなかった、より広範な農作業や関連業務に従事できる。

 制度発足から1年半の9月末時点で農業分野は1306人となり、全体の15%だった。都道府県別では茨城県、北海道、熊本県が100人を超える。新型コロナウイルスの感染拡大で出入国が制限され、技能実習の修了者が特定技能に移行するケースが大半を占めた。今後も、それが中心となる見通しだ。

 重要なのが、日本に長期間住むことになる外国人の受け入れ環境の整備である。制度発足前に、技能実習生が過酷な環境に置かれている実態が国会などで問題視されたことは忘れてはならない。拙速な制度設計のまま受け入れを始めたため、ベトナムや中国など送り出し国との調整は制度開始後に進められた。

 外国人の来日が難しかったことから、農家や産地には特定技能など長期間働ける労働力を求める傾向がある。ただ、彼らは労働力の前に一人の人間であり、夢を抱いて来日し、母国には大切な家族がいる。この当たり前のことを認識しなければ、日本の農業は選ばれなくなる。韓国なども外国人を求め、送り出し側だった中国は受け入れ先になりつつある。人手不足の国内の他産業も同様だ。誇りややりがいを持って働けるよう、労働と生活の両面で良好な環境をつくることが求められる。

 例えば、北海道恵庭市の余湖農園は多様な在留資格を持った外国人を受け入れ、昇給や賞与など給料体系を整備し、心地よい住まいや日本人らと交流する機会も提供。道内には日本語教室を開く農家もいる。JA北海道中央会は、特定技能の外国人の農家へのあっせんや行政手続きの支援を行う組織の立ち上げを計画。働きやすい環境を広げるため、優良事例の紹介や情報共有などにも取り組む。

 また通訳の用意や病院への付き添い、買い物の送り迎えといったJAの取り組みは全国に広がりつつある。生活面を含めた研修会や勉強会を開いたり、祭りや運動会に参加してもらったりもしている。日本での暮らしや地域になじめるよう、多様できめ細かな手助けが必要だ。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは