土壌の炭素貯留 温暖化防止に農で貢献

 地球温暖化防止を目指して山梨県が、温室効果ガスである二酸化炭素(CO2)の排出を農業で減らす取り組みを本格化させる。主力の果樹栽培で生じる剪定(せんてい)枝を炭にして土中に埋めるなど、炭素貯留という方法を採用する。温暖化防止に貢献する営農活動を各地でも積極的に進めよう。

 同県は今春、温室効果ガス削減の国際的な活動「4パーミルイニシアチブ」に日本の都道府県で初めて参加した。2015年の国連気候変動枠組条約締約国会議でフランス政府が提唱した。「パーミル」は千分の1を示す単位。世界の土壌(表層)に約1兆トンある炭素を年間、4パーミル(百分率で0・4%)に当たる約40億トン増やす。人間が排出するCO2純増分が年約40億トンで、計算上、帳消しにできるとの考えに基づく。

 その方法は農業で行っているものが多い。家畜排せつ物や緑肥の投入、草生栽培、不耕起栽培、牧草管理などだ。堆肥などを増やすと有機物として炭素が土に蓄えられ、空気中に放出されるCO2がその分減る。これを土壌への炭素貯留と呼ぶ。

 山梨県はまず果樹を対象に桃やブドウの剪定枝の炭化や草生栽培、有機質肥料の投入を進める。農家の協力で12月から実証試験を開始。炭化の方法や炭素の貯留量、土壌改良効果、果樹の生育のデータを蓄積する。炭化では煙が出にくい専用機器を使う。農家ごとにCO2削減量を評価、認証する制度もつくる。県産に「環境に優しい果物」という価値を付け、消費者の支持や共感を得たい考えだ。

 CO2吸収源として農地の炭素貯留は、各国の排出量から控除できる。政府の地球温暖化対策計画では、30年度の農林水産分野での削減目標を国全体の1割に当たる最大4063万トン(13年度比)と設定。このうち2割相当の696万~890万トンを農地土壌吸収源対策で減らす。18年度実績は750万トンで、さらに増やす必要がある。

 推進策の一つとして農水省は環境保全型農業直接支払交付金を設け、堆肥施用やカバークロップの実践農家を支援してきた。しかし、予算の制約もあり実施面積は4万ヘクタール前後と、国内農地の1%程度で伸び悩む。

 政府は、50年までに温室効果ガスの排出をゼロにすると表明した。排出量世界5位の日本がようやく各国と歩調を合わせる形だが、課題は道筋をどうつけるか。農水省は同省の地球温暖化対策計画などを見直すチームを発足させた。

 農業は、農機やハウスの暖房、プラスチック資材の利用などで温室効果ガスを排出する一方、作物の品質劣化や減収、災害など温暖化の被害を受けやすい産業だ。農地への炭素貯留は多くの農家が実践でき、温暖化防止と地力維持・増進に役立つ一石二鳥の技術だ。

 農水省には、こうした取り組みを含めて実効が上がる対策を求めたい。
 

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