ベテランの技、JA出荷データ… クラウドへ集約し経営に“最適解” 高知で始動
2021年01月21日

高知県は20日、産官学で連携して構築を進めてきた「IoPクラウド(愛称=サワチ)」を始動させたと発表した。農家の栽培ハウスから得られる園芸作物データや環境データの他、JAからの出荷データなどを集約。人工知能(AI)を使って地域に最適な栽培モデルを示し、営農指導に役立てる。収穫量予測もでき、作物の販売にも活用する。
IoPは、ナスやピーマン、キュウリなど園芸作物の生理・生育情報をAIで“見える化”するもの。2018年から構築を目指し、JAグループ高知や県内各大学、農研機構、東京大学大学院、九州大学、NTTドコモなどと連携している。
県は当面、①データ収集に協力する農家約30戸の作物の花数、実数、肥大日数などの作物データ②約200戸のハウスの温湿度、二酸化炭素濃度などの環境データ③園芸作物主要6品目の全農家約3000戸の過去3年の出荷データ──などを収集し活用する。
農家はスマホやパソコンから、クラウドに送られたハウスの環境データだけでなく、異常の監視と警報、ボイラーやかん水など機械類の稼働状況に加え、出荷状況などが確認できる。県やJAの指導員も、戸別の経営診断や産地全体の経営分析などに生かす。
22年からの本格運用を目指しており、最終的には、県内の園芸農家約6000戸のデータを連係させる。県は、「経験と勘の農業」からデータを活用した農業への転換を進めるとしている。
クラウドは県内の営農者、利活用を希望する企業などが利用できるが、まずはデータの収集に協力している約200戸の農家から利用を始める。3月末から、新規利用の申し込みができる予定だ。
農家がクラウドの機能を活用するのは無料。通信分野でシステム構築に協力したNTTドコモは希望者に対し、JAなどに出向いた「IoP教室」を開く。
JA高知県の竹吉功常務は「営農、販売でいかに活用できるかがポイント。技術の継承、出荷予測などにも使える。農家に還元できるよう、十分生かしていきたい」と強調する。
脱・経験依存、収穫予測も
IoPは、ナスやピーマン、キュウリなど園芸作物の生理・生育情報をAIで“見える化”するもの。2018年から構築を目指し、JAグループ高知や県内各大学、農研機構、東京大学大学院、九州大学、NTTドコモなどと連携している。
県は当面、①データ収集に協力する農家約30戸の作物の花数、実数、肥大日数などの作物データ②約200戸のハウスの温湿度、二酸化炭素濃度などの環境データ③園芸作物主要6品目の全農家約3000戸の過去3年の出荷データ──などを収集し活用する。
農家はスマホやパソコンから、クラウドに送られたハウスの環境データだけでなく、異常の監視と警報、ボイラーやかん水など機械類の稼働状況に加え、出荷状況などが確認できる。県やJAの指導員も、戸別の経営診断や産地全体の経営分析などに生かす。
22年からの本格運用を目指しており、最終的には、県内の園芸農家約6000戸のデータを連係させる。県は、「経験と勘の農業」からデータを活用した農業への転換を進めるとしている。
クラウドは県内の営農者、利活用を希望する企業などが利用できるが、まずはデータの収集に協力している約200戸の農家から利用を始める。3月末から、新規利用の申し込みができる予定だ。
農家がクラウドの機能を活用するのは無料。通信分野でシステム構築に協力したNTTドコモは希望者に対し、JAなどに出向いた「IoP教室」を開く。
JA高知県の竹吉功常務は「営農、販売でいかに活用できるかがポイント。技術の継承、出荷予測などにも使える。農家に還元できるよう、十分生かしていきたい」と強調する。
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[米のミライ](3) 複数年契約 価格変動リスク回避 実需にもメリット JAあいち経済連
JAあいち経済連は、県内JAと協力して、県産銘柄米「あいちのかおり」の5年間の固定価格長期契約取引を推進している。農家は米価の変動リスクを抑えて収入を確保、実需者は業務用米の調達コストを平準化でき、共に経営の安定化につながる。新型コロナウイルスの影響で米需要が見通しにくい中、生産・消費双方から改めて注目が集まっている。
契約期間は2018~22年産の5年間。……
2021年02月27日

[未来人材] 36歳。コンサルから転身 Jターンし夢を実現 雪害負けず規模拡大 岡山県高梁市 津山純平さん
岡山県高梁市の津山純平さん(36)は、13年勤めた大手流通企業を退職し、2020年春にトマト農家として新規就農した。都会でコンビニのコンサルティング業務に携わっていたが、独立への憧れと家族との時間を優先させたいとの思いから、Jターン移住を決断。物を売る側から作る側へと立場を変えた。就農直後には雪害に襲われ、自然の脅威を実感したが、それでも、失敗を恐れず挑戦し続ける。
津山さんは同県倉敷市出身。大学卒業後は、東京都と愛知県で、コンサルティング担当として業務に励んだ。個人事業主を相手に、店舗立ち上げから経営指導、品ぞろえ、従業員の教育まで、関わった店舗数は100以上だ。
激務で休日もなく、35歳を前に将来を考え直した。就職後に引っ越しを6回経験し「好きな仕事だったが、地に足を着けて仕事をしていないような気がした」と津山さん。夢だった独立を決意し、興味があった農業経営を選んだ。
移住先は、互いの実家に行き来しやすいよう、倉敷市と妻の出身地の島根県出雲市との中間地になる高梁市備中町に決めた。19年4月に移住し、採算性が高い夏秋トマトを栽培しようと、ベテラン農家の下で1年間研修した。
20年に、離農した農家のハウス12アールを引き継ぎ、独立。しかし、苗の定植直前の4月中旬、季節外れの大雪で3アール分のハウス4棟が倒壊してしまった。栽培に備え早めに準備していたことが響いた。「農業は自然との闘い」と聞いてはいたが、それを目の当たりにして落ち込んだ。同時に、自分が独立したことを改めて実感した。
無事だったハウス9アールで定植し、7~11月に12トンを出荷。栽培期間はあっという間に過ぎた。研修先の農家や県の農業普及指導センターとの連絡を密にし、疑問はすぐに解決させたことで、満足のいく収量と品質を実現した。
2年目の21年産は、高梁市が運営する営農団地「榮農王国山光園」に入植し、40アールを手掛ける計画だ。規模はかなり広がるが、津山さんに迷いはない。前職時代で培ったスケジュール管理も生かし、経営者として効率・採算性を高めた経営を目指す。
農のひととき
「これまで当たり前だったことが非日常になった」と津山さん。妻と2人で標高500メートル地点に住み、スーパーまで車で30分かかる。移住当初は不便を感じたが、今は、買い物に行くこともイベントになり、楽しんでいる。実家の家族と会う機会も増えた。これまで1年に1回しか会えなかったが、1カ月に1回は会い、交流を深めている。
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2021年02月28日

[米のミライ](4) 輸出 外・中食から家庭狙う 本物志向に応える JAグループ茨城
JAグループ茨城は、米の輸出に力を入れ「JAグループ茨城米輸出協議会」を設立、輸出用米の集荷量をこの3年で3倍にした。地道に販路を開拓し、昨年はフィンランドのスーパーで売るすし向けにも広げた。海外で日本食が広まり、粘りや香りの良い日本米の需要が高まっていて、有望な市場として開拓を進める。輸出を通じた需給調整にも期待をかける。
JA全農いばらきは2月、初めて米の県オリジナル品種「ふくまる」の輸出を始めた。3月からシンガポールの日系スーパーで、家庭用精米の売り場に並ぶ予定だ。ターゲットは中所得層以上を見込む。
JA全農いばらき米穀総合課の並木誠也課長は……
2021年03月02日

ブドウ収穫量 最低 20年産 5%減、16万トンに
2020年産のブドウの収穫量が16万3400トンとなり、前年産より9300トン(5%)減ったことが農水省の調査で分かった。1973年の統計開始以降、最も少ない。主産地の山梨県や岡山県での天候不順などが響いた。果実を収穫するために実らせた結果樹面積は、ほぼ前年並みの1万6500ヘクタールだった。
10アール当たり収量は前年産に比べ50キロ少ない990キロで、11年産(970キロ)に次いで過去2番目に少なかった。収穫量が全国1位の山梨県と同4位の岡山県で、7月の日照不足、8月の高温少雨で果粒の軟化や肥大不良が発生。山梨県でべと病や晩腐病などが発生したことも影響した。
収穫量は13年産から8年連続で減少。農家の高齢化などで、生産基盤の弱体化に歯止めがかかっていない。同省は、昨年改定した果樹農業振興基本方針で、ブドウを含む果樹の生産基盤強化に向け、生産性の向上が見込める省力樹形の導入を推進する方針を掲げた。
21年度予算案には、ブドウの改植で根域制限栽培を導入する場合に10アール当たり100万円を助成するなど果樹支援対策に51億円を計上している。
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2021年03月01日

米粉新商品投入 製法や配合工夫 製粉大手や小売り
製粉会社や小売りが米粉の新商品を投入している。各社、国産米を使い独自のブレンドや製法にこだわり、米の味を引き立たせ小麦粉と差別化する。調理用米粉やスイーツを用意して米粉ならではのもっちりとした食感が楽しめるとアピールする。……
2021年03月03日
営農の新着記事

イアコーン収穫機開発 汎用機に取り付け 濃厚飼料 自給率向上へ 農研機構とタカキタ
農研機構と農機メーカーのタカキタは2日、汎用(はんよう)型飼料収穫機に装着してトウモロコシの雌穂(イアコーン)だけを収穫する刈り取り装置を開発したと発表した。汎用型飼料収穫機に装着する。トウモロコシが倒伏していなければ、1時間に40アールを収穫できる。都府県の比較的狭い圃場(ほじょう)でも使え、国産濃厚飼料の自給率向上につながる。4月からタカキタで受注販売を始める。
イアコーンは穀実の比率が高く栄養価が高い。……
2021年03月03日

トマトにLED補光 日照不足解消へ試験 新潟のベジ・アビオ
トマトを施設栽培するベジ・アビオは2月中旬から、発光ダイオード(LED)を使った補光の実証試験を始めた。日本海側で9月から翌年7月にかけて栽培する同社は、冬場の日照不足が課題だった。LEDで日射を補って光合成を促すことで、収量と品質の安定を狙う。……
2021年03月03日
水流妨げるカワヒバリガイ対策 貯水池の落水や駆除剤が効果的 水生外来生物セミナーで報告 農研機構 茨城県
農研機構と茨城県は、水に住む外来生物の現状や対策を話し合うセミナーをオンラインで開いた。焦点を当てたのは、近年分布を広げ、農業用水路などで水流を妨げるカワヒバリガイ。貯水池の落水や駆除剤など、成果を上げつつある新技術を報告した。分布をこれ以上広げないためにも、駆除の実践は重要とした。
カワヒバリガイは、アジア原産で淡水に住む大きさ数センチの貝。……
2021年03月02日

トマト接ぎ木 自動化 テープ使い低コスト 活着率90% 農研機構、ロボ開発
トマトの接ぎ木を自動化できるロボットで、接合に樹脂製のテープを使う新たな手法を農研機構などが開発した。従来のチューブやクリップと比べ資材費は半分以下になる。農研機構はテープで接合する接ぎ木ロボットは世界初とみており、作業能率は1時間当たり450~520本で手作業の2倍以上。今春をめどに発売する予定だ。……
2021年02月28日

東海桜 挿し木で生産期間短縮 岐阜県立国際園芸アカデミー2年 西村さん
岐阜県可児市の県立国際園芸アカデミー花き生産コース2年生、西村莉穂さんが、鉢植えで開花期が早い東海桜を挿し木し、生産期間を大幅に短縮させることに成功した。桜は実生苗や接ぎ木苗が使われることが多く、商品化までに数年かかる。ソメイヨシノより……
2021年02月26日
営農技術アイデア大賞 黒壁さん(北海道)に栄冠
日本農業新聞は24日、「営農技術アイデア大賞2020」の審査会をオンラインで開き、大賞に北海道新篠津村の黒壁聡さん(64)が考案した、水稲育苗箱の運搬器具「はこらく」を選んだ。自作した金属の枠で3、4枚重ねた育苗箱を挟み込み、まとめて持ち運ぶ仕組み。機械化できていなかった育苗箱の運搬に、効率化の道を開いた点が評価された。
黒壁さんは水稲農家でシーズンには約8000枚の育苗箱を使う。……
2021年02月25日

20年度全国農大校プロジェクト 大臣賞に田中さん(大阪)
全国農業大学校協議会は24日、2020年度全国農業大学校等プロジェクト発表会・意見発表会の結果を発表した。最高位の農水大臣賞には、大阪府立環境農林水産総合研究所農業大学校2年の田中麻綾さんの「『高齢者生きがいづくり』につながる、高齢者によるぶどう栽培方法の検討」が輝いた。
田中さんは生きがいを持った高齢者が減少する現代で花蕾(からい)から大きな房ができる喜びは心を豊かにするきっかけになると考えた。……
2021年02月25日
ジャガイモシロシスト 抵抗性品種「フリア」の効果確認 北海道の産地 21年度に本格導入へ 農研機構
ジャガイモの品種「フリア」が、難防除害虫のジャガイモシロシストセンチュウの土中密度を大幅に減らせることを、農研機構・北海道農業研究センターが確認した。2015年に同線虫が見つかり、今年2月時点でも道内468ヘクタールで発生している。産地のJAでは効果的な対策として21年度から本格導入を見込む他、同センターはさらに経済的に有望な品種開発を目指す。
2021年02月24日

ビールかすで大幅増収 黒大豆 最大5割 岡山市の若手農家グループ
岡山市の若手農業者クラブ「アグリドリームSETO」は、黒大豆の栽培でビールかすを施すと、慣行栽培に比べて10アール当たりの収量が最大で5割増えることを確かめた。化学肥料との組み合わせで生育が早まり、大粒の割合も増えた。土壌の養分バランスの改善で課題だった連作障害の対策にも期待する。
同クラブは同市東区瀬戸町の若手11人で構成する。地元のキリンビール岡山工場から出るビールかすを土づくりに活用し、2020年産に市の助成を受けて試験した。……
2021年02月24日

「南農ナシ6号」育成 病害に強く高糖度 長野県
長野県は、中生品種の梨「南農ナシ6号」を育成した。黒斑病や黒星病といった病害に強い。高糖度で果汁が多く、すっきりとした甘味としゃきしゃきした食感が特徴。県では県オリジナル品種「南水」につなぐリレー品種として期待を寄せる。
県南信農業試験場が育成した。……
2021年02月24日