イアコーン収穫機開発 汎用機に取り付け 濃厚飼料 自給率向上へ 農研機構とタカキタ
2021年03月03日

汎用型飼料収穫機に装着したスナッパーヘッドでトウモロコシを刈り取る作業。イアコーンだけを飼料化できる(2020年、岡山県笠岡市で、タカキタ提供)
農研機構と農機メーカーのタカキタは2日、汎用(はんよう)型飼料収穫機に装着してトウモロコシの雌穂(イアコーン)だけを収穫する刈り取り装置を開発したと発表した。汎用型飼料収穫機に装着する。トウモロコシが倒伏していなければ、1時間に40アールを収穫できる。都府県の比較的狭い圃場(ほじょう)でも使え、国産濃厚飼料の自給率向上につながる。4月からタカキタで受注販売を始める。
イアコーンは穀実の比率が高く栄養価が高い。……
イアコーンは穀実の比率が高く栄養価が高い。……
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100歳プロジェクト 支え合う地域づくりを
JA全中は、健康寿命100歳プロジェクトの一層の推進に向けて報告書をまとめた。健康を軸に、組合員・地域住民・JAのつながりを深める。誰もが住み慣れた場所で、できるだけ長く、生き生きと暮らせる地域づくりに生かしたい。JAの組織基盤強化にも結び付けよう。
プロジェクトは、2020年度で開始から10年。健康寿命を伸ばすため「健診・介護」「運動」「食事」を3本柱に、JA介護予防運動やウオーキング、乳和食などさまざまなメニューを提供してきた。今回、内容を改善し、地域活性化に貢献する具体策を検討、報告書をまとめた。
健康の概念を身体中心から精神的なものにまで広げ、3本柱を「からだ」「こころ」「つながり」に再編。体と心の健康と、社会とつながる活動に取り組む。対象も高齢者というイメージが先行していたため、改めて「全世代」を提示した。プロジェクトによって、世代を超えた組合員・住民の仲間意識を醸成する。JAとの接点も増やし、信頼感を高めることで、アクティブメンバーシップを拡大、組織基盤の強化にもつなげる。
10年間を振り返ると、①取り組みにJA間、県間の格差がある②活動が助けあい組織や女性組織、担当部署にとどまっている③行政との連携が不足している――といった課題も見えてきた。健康を軸に地域づくりを進めるには、事業や部署の枠を超え、JAが一丸となる必要がある。
報告書では、農を軸とした健康に結び付く取り組み(アグリ・サイズ)を新たなメニューとして開発、農作業の準備運動、整理運動やフレイル(虚弱)対策となる料理レシピ紹介などを提案する。いずれも共済連や厚生連などの事業連との連携が期待できる。
団塊ジュニア世代が65歳以上となり、高齢化が加速する「2040年問題」も見据える。国の推計では、40年時点で65歳の人のうち、男性は4割が90歳まで、女性は2割が100歳まで生きるとされ、“人生100年時代”が視野に入る。一方で、少子化などで現役世代は急減する。
プロジェクトが掲げる「つながり」が、同問題への対策の鍵の一つだ。JAが起点となり、健康を軸に、組合員・住民同士のつながりをつくる。例えば体の健康には健診や運動を、心の健康には社会参加など生きがいを得られる活動をJAが働き掛け、それぞれの取り組みの場所や場面でつながりを生み出す。それを網の目のように張り巡らせ、老若男女問わず支え合う地域づくりにつなげる。
組合員・住民の健康を守り、誰もが安心して長く暮らせる地域づくりはJAの役割である。行政などと連携し、推進しよう。
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2021年04月10日
〈女性の力の及ぶところ はじめて平和の光あらん〉
〈女性の力の及ぶところ はじめて平和の光あらん〉。女性参政権の必要性を訴える「婦選の歌」の一節である。与謝野晶子が作詞し、1930年に発表された▼女性を含む普通選挙の実施はその16年後、敗戦翌年4月10日の衆院選である。きょうで75周年。39人の女性議員が誕生した。紅露みつもその一人。学徒出陣で息子を失い、反戦への強い思いで立候補した。『新しき明日の来るを信ず―はじめての女性代議士たち』(岩尾光代著)で知る。「あとにつづくお母さんたちにこの悲しみをさせてはならない」。紅露の言葉だ▼榊原千代は女性差別に憤り「政界と家庭の浄化」を訴えた。暴力で家庭に君臨したり、愛人を妻と同居させたりする男性も少なくない状況に我慢ならなかった。同書にそうある。人口の半分は女性。その意見を政治に反映させる一歩だった▼その後の歩みは遅い。国会議員に占める女性の割合は、今年1月が日本は9・9%(衆院)で190カ国中166位。候補者男女均等法が3年前に施行され、男女数の「できる限り均等」を目指す▼「婦選の歌」には〈男子に偏る国の政治 久しき不正を洗い去らん〉との歌詞も。秋までに衆院選がある。「政治を洗濯」できるか。各党が問われる。
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2021年04月10日

ダイダイ地域の顔に 「サワー」PR実行委も発足 静岡県熱海市
ダイダイで熱海を元気に――。全国有数のダイダイ産地・静岡県熱海市では生産者と食品卸、飲食店などが一体となって、地域活性化とダイダイのブランド化に注力する。その一環として熱海市の飲食店関連団体は9日、「熱海だいだい実行委員会」を発足した。ダイダイの活用によって地域経済を循環させ、縮小するダイダイの生産基盤維持にもつなげたい考えだ。
委員会は熱海料飲連合会、熱海社交業組合、県飲食業生活衛生同業組合熱海支部の3団体が立ち上げた。……
2021年04月10日

本田武史さん(プロフィギュアスケーター、スポーツコメンテーター) 海外生活支えた現地の日本料理
小さい頃は、福島県郡山市で農業をやっていた祖父母の家の近くに住んでいたので、よく米作りの手伝いをしました。種まき、田植え、稲刈り……。その頃はまだ機械化が進んでいなくて、機械でできないところを人の手で一本一本補っていました。
田んぼの他に畑もあって、米と野菜は自給自足だったと思います。田んぼもかなり広くて、米蔵があり、精米機もありました。
もち米も作っていて、お正月になると毎年、杵(きね)と臼を使って餅つきをしていました。餅は焼いて砂糖しょう油で食べたり、あんこやきな粉で食べていました。
中学になるとスケートのため、母と2人で仙台に引っ越しました。母はパートで仕事をしていたので忙しかったし、僕は朝早くから夜遅くまで練習があったので、ゆっくりと2人で食事をする時間がありませんでした。
練習中、整氷のために15分ほど休み時間があります。その時に母の作ってくれたおにぎりを素早く食べました。
好き嫌いがなかったので、食べたい物をたくさん食べていました。練習量が多いので、減量に苦しんだことはありません。体脂肪が1桁しかなかったため、下手に体重を落とすと体調を崩すんです。しっかり食べないと、体がもたなかったです。
海外に住んでいた時は、やはり日本食が恋しくなりました。
最初に行ったのは、米国のコネチカット州。日本人がほとんどいない田舎町で、ホームステイをしました。ホームステイ先での料理は肉が中心。もちろんご飯ではなくパンです。
町に1軒だけ日本食レストランがあって、そこですしやそば、うどんを食べました。
その店のオーナーは日本人で、以前はマサチューセッツ州で働いていて、僕が試合に出るためそちらに行った時に会ったことがあったそうです。
そんな縁もあり、すごくよくしてくれました。力になるようにとメニューをいろいろ考えてくれ、時々弁当も作ってくれました。大会前にはカツ丼を作ってもらったこともあります。日本人の客がいないので、日本人に食べてもらうのがうれしかったのかもしれません。
長野オリンピックの後、カナダのトロント郊外に移りました。
トロントは大都市で、日本食レストランがいくつかありました。日本の食材などを扱う店もあったんです。そこで炊飯器を買いました。僕の住んでいたのは車で1時間くらいの小さな町でしたが、週末の練習が休みの時にはトロントでまとめ買いをしました。
売っている米はタイ米でしたが、たまに日本の米も入ってきました。タイ米は細長くパサパサしていますが、水の量を多くして炊いたり、チャーハンやお茶漬けにするなど工夫をすれば、全然大丈夫。
海外生活で気になったのは、野菜ですね。どうしても肉の量が多いので、できるだけ野菜をたくさん取ろうとしました。でも向こうの野菜は大味じゃないですか。いつも蒸して食べていました。その方が体にいいと聞いていましたし、甘味が増すから。
現役を引退してからは、食べ過ぎないように気をつけています。筋肉が落ちやすいし、疲労回復にも時間がかかるので、意識してタンパク質を取っています。それに合わせるようにビタミンも。日本の野菜はおいしいので、生野菜でも温野菜でも食べています。(聞き手=菊地武顕)
ほんだ・たけし 1981年福島県生まれ。7歳からショートトラックスケートを始め、その後フィギュアに転向。史上最年少の14歳で全日本選手権優勝。98年の長野五輪に史上最年少の16歳で出場した。99年、四大陸選手権大会の初代王者に。現在はプロとしてアイスショーに出演する他、後進の指導にも当たっている。
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2021年04月03日
JA相談機能強化 経営支援へ人材育成を
大規模化が進む地域農業の担い手に対して、経営戦略や営農計画などの策定、実践を支援する総合的な相談機能の強化が、JAには求められている。経営環境の変化に対応した提案で目標達成や経営改善に貢献し、JA事業への満足度の向上につなげたい。
効率的な農業経営に向けて担い手の大規模化が進む。担い手への農地の集積率は徐々に高まり、2009年度の48%から19年度には57%になった。複数の市町村で農地を利用する農地所有適格法人は19年が2243に上る。
一方、JA全中の調査によると、生産販売データに基づく経営コンサルティングを実施しているJAは20年度で、個人対象が16%、法人対象が9%だった。
JAグループは、第28回JA全国大会で農業所得の増大に向けてコンサルティングの強化を決議した。JA全中は組合員の経営支援ができるJA職員を育成するため、営農指導員にとって上位資格の一つとなる「JA農業経営コンサルタント」の資格を新設。21年度から本格実施する。
JAの担当職員には、どのような能力が求められるのか。先行するJA滋賀中央会の取り組みを参考にしたい。
農家組合員の経営課題の解決策を提案する能力を備えた職員の育成を20年度、県域で開始。コンサルティングを行う職員に求められることとして農業、農政、経営戦略、マーケティング、財務の知識などに加え、経営課題を聞き取り、整理・分析し、改善提案ができることを挙げる。経営課題を聞き取る傾聴、承認、質問をする能力と、農業者の経営を良くしたいという強い意識が必要だとした。
これらの知識と能力は、座学だけでは難しい。そこで研修には、営農指導員らが、農業法人の経営者から課題を聞き取り、整理・分析した上で具体的な経営改善策を提案する実習を取り入れた。JAグループの県域で、こうした実習を取り入れたのは全国初だという。同中央会は、滋賀県のJAでは、販売額の大きい農業法人との関係構築が今後、求められているとみている。
JAの営農指導員は、他のコンサルタントよりも生産現場をよく知っていることが最大の強みだ。コンサルティング能力を身に付けた職員が担い手の多様な悩みを解決し、JAとの関係強化につなげたい。JAが相談機能強化に注力するのは農業経営だけではない。神奈川県のJA相模原市は、メガバンクなどに対抗するため総合事業を生かした資産相談に取り組む。
JAに求められるコンサルティングの分野と能力はさらに多様化するだろう。営農や暮らしなど各分野の環境変化に対応した提案ができる人材を育成しよう。
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2021年04月08日
営農の新着記事

緑肥作物でリン酸減肥 キャベツ、ニンジン2割 ソルガムのすき込み有効 千葉県農林総研センターが実証
千葉県農林総合研究センターは、冬取りキャベツと秋冬ニンジンの作付け前に緑肥作物を栽培してすき込むと、元肥のリン酸を2割ほど減らせることを確認した。土壌微生物中のリン酸が増え、リン酸の吸収量が増えたとみる。有機物の補給効果で、土づくりにもつながると期待する。
冬取りキャベツの作付け前にすき込むために、5月下旬から6月上旬に緑肥作物のソルガムを播種(はしゅ)し、8月にすき込む。……
2021年04月09日
農機 交通死亡事故減らず 8割単独、誤操作が主因 昨年23件
トラクターなど農耕作業用自動車が絡んだ交通事故のうち、死亡事故はほとんど減らず、横ばいで推移していることが警察庁の集計で分かった。死亡事故の8割が単独事故で、その要因はハンドルなどの「操作不適」が7割を占めた。警察庁は農水省と連携して確実な運転操作や、シートベルトとヘルメットの着用などを呼び掛けている。
警察庁がまとめた「農耕作業用自動車の交通事故発生状況」によると、2020年の死亡事故は23件、重傷事故は31件。……
2021年04月08日
省力樹形で事例集 果樹作業負担を軽減 農研機構
農研機構は、果樹の省力樹形の栽培事例集を作成した。国のプロジェクト研究の成果をまとめたもので、開発した自動走行車両や収穫ロボットも盛り込んだ。機械が導入しやすく、作業者の負担が少ない樹形を提案し、高齢化や人手不足への対応を目指す。同機構のホームページで公開している。
対象の品目は温州ミカン、中晩かん、リンゴ、日本梨、西洋梨、ブドウ、柿、オウトウ、桃、栗。……
2021年04月08日

ICTを駆使 水害対策に
水害対策に、川や池の増水を知らせるシステムが相次いで登場している。近年相次ぐ水害から情報通信技術(ICT)を駆使して命を守ろうとするものだ。地域の防災関係者などに通知し、住民に知らせるなど“防災力”の向上に期待をかける。
内水氾濫を検知 亀岡電子が京都で実証
センサーメーカーの亀岡電子は3月から、水路脇や道路脇に設置する浸水検知センサー「KAMEKER(カメカー)3」を売り出した。……
2021年04月07日

農家から店舗へ イチゴ積み公道走る ロボ2台リレー自動配送 任せて 茨城県で初実験
新型コロナウイルス下、高齢化が進む農村部での新たな物流技術の開発へ──。農家から集荷した農産物をロボットが公道を走行して店舗まで自動で配送する実証実験が、茨城県筑西市の道の駅「グランテラス筑西」で始まった。自動運転技術と配送ルートを最適化する技術を組み合わせた2台が、公道を利用して作業を行うのは国内初という。担い手不足対策や高齢化などで運転免許を返納しても農産物を出荷でき、コロナ禍での接触感染防止にも期待がかかる。実験は13日まで。(木村泰之)
労力減、感染予防も
実験では、原動機付き自転車の扱いでナンバープレートを付けた公道走行用と、道の駅の敷地内を走るロボットを組み合わせて、農園前から店舗まで届ける。初日、道の駅近くの90アールでイチゴを栽培する石川正吾さん(46)が、公道走行用ロボットにイチゴ約2キロを積み入れた。ロボットは農園前から道の駅へ出発し、無人で走行した。道の駅に着くと、関係者の手で構内用ロボットに積みかえた。安全を確認する随行者と店舗までの合計約200メートルを時速3キロで走った。
石川さんは「直売所には1日7、8キロのイチゴを出荷する。忙しくなると人手もままならない。コロナ禍で人との接触を避けたい農家が、道の駅まで出向かなくても出荷できるようになる」と新たな相棒を歓迎した。
13日までに石川さんの他、片道1キロ圏内の農家から小玉スイカやミニトマトなどを集荷したり、道の駅の商品を近隣の民家に届けたりする。
このロボットは、電動車椅子を改造したものだ。ベンチャー企業のティアフォーなどが開発した。三次元地図を記憶させてセンサーで感知した周りの状況を、人工知能が選んだ最適なルートで重さ10キロまでの荷物を運ぶ。人が遠隔監視をするが、障害物があれば自動で止まる。
実験の事務局を務める東京海上日動営業企画部の松下雄担当課長は「1台で作業を完結できることが目標だ。農家からJAの集荷場など基地までの1、2キロを自動配送ロボットが出荷を担い、免許がなくても農業を続けてもらえる社会にしたい」と力を込めた。
須藤茂市長も「自動配送ロボットは、高齢化など農業を取り巻く課題の解決だけでなく、コロナ禍で求められる非接触物流システムの可能性も検証できる」と期待した。
動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=yswKRrjaVxs
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2021年04月06日

無角牛の精液発売 事故軽減、乳量も豊富 ジェネティクス北海道が国内初
ジェネティクス北海道は1日、生まれつき角が生えない無角遺伝子を持つホルスタイン種の種雄牛2頭の精液を発売した。同法人によると、無角遺伝子を持つ種雄牛の精液販売は国内初。無角の牛は管理作業中に人がけがなどをするリスクが減り、除角で牛にかかるストレスをなくすことができるという。……
2021年04月02日

家畜改良センター 共同利用の新種雄牛公表 「美津福重」など10頭
家畜改良センターは、広域後代検定に参加した各県の黒毛和種種雄牛から、新たに10頭が共同利用種雄牛に選定されたと発表した。選ばれた種雄牛は全国で精液が利用できる。同センターによると今年はロース芯面積に優れる牛が多いという。
次ページに「共同利用種雄牛の血統」(表)があります
2021年04月02日

堆肥だけで野菜栽培 畜ふんをブレンド 化学肥料使わずに 畜産環境技研が実証
化学肥料を一切使わず、畜ふん堆肥だけで野菜が栽培できることを、畜産環境技術研究所が実証した。窒素が主体の鶏ふん、リン酸が豊富な豚ぷん、カリが多い牛ふんそれぞれの堆肥の特性を生かし、野菜に合わせた比率でブレンドする。粒状に加工し、追肥はせず元肥だけで栽培する。安価に堆肥を粒状にする造粒技術、造粒堆肥向けの施肥設計用ソフトも開発した。
有機農産物への需要増に応えるとともに、家畜ふん堆肥の利用拡大を狙ったもの。……
2021年04月01日

イチゴのアブラムシ防除 天敵集まる大麦活用 農研機構、資材化へ
農研機構・中央農業研究センターなどはイチゴのアブラムシ対策で、大麦に集まる天敵を使った効率的な防除を実証する。天敵のアブラバチ類とすみかの大麦、餌をセットにして資材化し、従来より導入しやすく、安定した効果を狙う。実証に参加する農家の評価も高い。2021年度中に製品化を目指す。
大麦には、イチゴに無害で天敵の餌となる昆虫(トウモロコシアブラムシなど)がすみ付く。……
2021年03月31日

起源品種の遺伝追跡 リンゴで手法開発 東京大など
東京大学などの研究グループは、国内のリンゴ品種について、起源となる品種の染色体断片(ハプロタイプ)の遺伝を追跡する方法を開発した。ゲノム選抜に活用すれば、効率的な品種改良が期待できる。
国内のリンゴは主に7品種をもとに育種されてきた。多くのリンゴは母と父から1組ずつ染色体を受け継ぐ二倍体で、七つの起源品種は14種類の染色体で表せる。
研究チームは、農研機構が保有する659個体を使い、1万カ所以上のDNAの違いから、起源品種の染色体断片を追跡する手法を開発した。使用した全個体の92%を起源品種の14の染色体断片で示せた。各個体の染色体を14色で塗り分けるもので、どの品種が育種に使われたか把握できる。
染色体断片の情報と果皮色の関連を調べたところ、起源品種「ウースターペアメイン」の染色体断片が強く関連すると分かった。近年開発された品種には、この染色体断片が含まれる頻度が高いため、着色に優れるリンゴの育成に利用されてきた可能性がある。
ゲノム選抜にも活用できるとみる。酸含量が高い品種の予測では、従来のDNAマーカーを使った手法よりも精度が高かった。日本学術振興会の南川舞特別研究員は「特性の種類によって精度は異なるが、新たなゲノム選抜の手法として期待できる」と説明する。
開発技術は他の作物に応用が可能で、生産者や消費者ニーズに対応した品種開発に役立つとみる。
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2021年03月31日