先日亡くなった俳人の金子兜太さんの句に

 先日亡くなった俳人の金子兜太さんの句に、〈三月十日も十一日も鳥帰る〉がある▼東日本大震災の日もその前日も、同じように鳥は北に飛び去る。そこに大自然の悠久を見るが、73年前の3月10日の東京大空襲を重ねると、情景は一変する。東京は空前の大空襲を受け、被災者は100万人を超えたと記録に残る。戦争と地震という災禍におののく人々。「社会性俳句」に取り組んだ俳人ならではのメッセージがこもる▼原発事故で“暴走”したエネルギーの前に、誰もが立ちすくむ。つい最近、福島第1原発を取材した小紙記者は、近隣の地域を見て、「荒野と化し、静まり返っていた」と総合・社会面に書いた。破壊された原子炉内に人は入れず、「溶け落ちた核燃料(デブリ)は把握すらできない」。大事故から32年となるチェルノブイリでも廃炉作業に手を焼く▼闘いはここでも続く。封切り間もない映画「一陽来復」は、岩手、宮城、福島の被災地で生活を続ける市井の人々を追った。食うことを禁じられた米をあえて作ってすき込んだ農家。「農業は農業で生きていく他ない」。身内を失っても気丈に生きる被災者の言葉が胸をえぐる▼東日本大震災からきょうで7年。現地では「もう」と「まだ」が交差する。心の復興は途上である。 
 

おすすめ記事

四季の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは