農業体験 学生を魅了 住民1000人 受け入れ年100人 和歌山県湯浅町田村地区

大学生にレモンの収穫を指導する井上さん(中)(和歌山県湯浅町で)

労力確保に一役


 農業の労働力確保や交流人口の増加につなげようと、和歌山県湯浅町の若手農家らが、休みを利用して農作業などをしてもらう大学生の受け入れに力を入れている。年間100人ほどを受け入れ、大学生はミカンの収穫や箱詰めなどを手伝う。改装した古民家に寝泊まりし、地域の若者らと食事を共にする。地域との交流や農家の生活に魅了された大学生から「また来たい」と声が相次ぎ、継続的な活動につながっている。(藤田一樹)
 

古民家寝泊まり 若手農家と交流も


 高齢化が進む同町田村地区の一角に若者が出入りする古民家がある。「ここは都会と田村地区を結ぶ場所」。そう話すのは、かんきつ農家の井上信太郎さん(27)。同地区で大学生の受け入れを始めた発案者だ。宿泊場所として2016年に改装し、コミュニティーハウス「紀家(きち)わくわく」と名付けた。2階建てで約10人が泊まれる。学生に需要があると見込み、Wi―Fiも完備する。

 学生の利用は2泊3日が多い。紀家わくわくに寝泊まりし、午前8時から昼食を経て午後5時ごろまで農作業をする。夕方には近場の銭湯に出向く。夜は主に自炊し、農家や地元の若者らと交流しながら食事をする。食事場所の1階の広間には笑い声があふれる。

 和歌山大学2年生の高橋優希さん(19)は「将来は農業関係の仕事に就きたいので、農作業などが体験できて勉強になる。地域の若い農家らとの交流が楽しく、また来たくなった」と笑顔を見せる。

 井上さんが受け入れを始めたのは16年。実家は代々続くミカン農家で、井上さんは7代目だ。「田村みかん」のブランドで市場出荷するが、「誰が食べているか見えないのが昔からの悩み」(井上さん)だった。加えて、同地区の人口減少が進んでいたことも気掛かりだった。

 解決策として思い付いたのが、大学生の受け入れだった。「交流人口が増えて地域が活性化し、出荷したミカンを食べている人の顔が分かるようになる」と踏んだ。若い人に農業に興味を持ってもらい、少しでも農業を盛り上げたいとの思いもあった。

 当初は井上さん一人で始めたが、賛同する農家が増え、現在は5戸の農家が学生を受け入れる。食事や宿泊代など参加費は無料で、学生には代わりに農作業をしてもらう。学生が行う農作業は特産のミカンなどかんきつの収穫、箱詰め、木にかかったネットの撤去、倉庫の改装など多岐にわたる。

 受け入れに参加する同町のかんきつ農家、大谷英士朗さん(21)は「家族経営で労働力が限られるため、大学生の力はありがたい。一緒に農作業すると楽しい」と歓迎する。

 土・日曜日や祝日を中心に受け入れ、これまでに東京都や同県など約250人の学生が参加した。学生がインターネット交流サイト(SNS)や口コミで広め、参加者は徐々に増えており、リピーター(再来訪者)も多いという。井上さんの元には、SNSなどを通じて周年で参加の申し込みがあるという。

 地域の若者同士の交流にも役立てようと、紀家わくわくでは、農家や漁師、公務員など地元の若者を集めた食事会「ごろり会」も毎月1回ほど開く。参加費は1500円で、紀家わくわくのガスや通信代といった運営費に充てている。

 今後は、新たな宿泊場所の開設も計画。井上さんは「田村地区の人口は1000人を切った。交流人口を増やし、地域を盛り上げたい」と意気込む。

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