対中摩擦 苦しい米国農家 日本市場開放に照準 特別編集委員 山田優

 米中貿易摩擦の直撃を受ける農家を支援するため、米農務省は先週木曜日、最大で160億ドル(約1兆7000億円)の支援策の一部を8月半ばから支払うと発表した。農家のオンライン申し込みが29日から始まった。輸出促進経費の補助や、市場にだぶつく農産物を買い上げる対策も発動する。

 米国の制裁に対抗して中国が大豆などの農産物関税を大幅に引き上げ、米国内の農家は販路を失い苦境に陥っている。中国商務部によると、1~4月の米国産大豆の輸入量は7割、豚肉は5割も減った。最大のお得意さまからしっぺ返しを食らった上、米国の農家は今年、洪水や高温という異常気象にも見舞われている。

 トランプ米大統領は、支持基盤である農村向けに、昨年に続いて多額の一時金をばらまく。貿易摩擦の対策で政府からお金をもらえるのは農業分野だけ。来年の大統領選挙を控え、農業にはあまり関心がないとみられてきたトランプ氏だが、票田としては重視していることが読み取れる。

 最大手の米国農業団体連合会(AFB)は直ちに声明を発表し「苦境に直面する農家を配慮してくれた」と歓迎。1頭当たり約1200円の補助金を受ける養豚の全国団体NPPCも「収入減少の一部を埋め合わせるものだ」と支援策を評価する。

 しかし、農業団体が発表した声明文を注意深く読むと、政権の対応を手放しで歓迎しているわけではない。小麦業界のトップは「解決には程遠い“ばんそうこう”にすぎない」と厳しい言葉で政権の通商政策を批判する。現金の支援はあくまでも一時しのぎ。早く中国などとの摩擦を収め、輸出拡大路線に戻りたいという不満だ。

 AFBやNPPCも同じような主張を盛り込んでいる。その焦点となっているのは、日本市場の一層の開放だ。声明は「日本が米国以外との自由貿易協定を結び、米国の農家が不利な立場に置かれている」という論理を振りかざす。

 「環太平洋連携協定(TPP)水準までは譲る」と事実上公言している日本政府の弱腰ぶりを見れば、「早く日本から成果をもぎ取ってくれ」というのが米国の農業団体の本音だろう。日米間の貿易協定交渉は8月に閣僚級協議が予定され、9月下旬に日米首脳会談での合意が見込まれている。参議院選挙が終わるまで交渉を待ってもらった安倍首相は、どんなお土産を準備しようとしているのだろうか。 
 

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