ラグビーW杯きょう開幕 キーマンは農家育ち SH・田中史朗選手

息子の活躍を期待する義明さん(京都市南区で)

 「ラグビーワールドカップ(W杯)日本大会」が20日、開幕する。日本代表は今大会、W杯初のベスト8以上が目標だ。そのキーマンとして注目されるのは、京都市南区出身で実家が野菜農家の田中史朗(ふみあき)選手(34)。幼少期から農作業に関わり、「ラグビーをしていなかったら農業をしていた」と明言するほど、農業愛にあふれたプレーヤー。ラグビーファンだけでなく、農業関係者の期待も一身に背負い、きょう初陣のロシア戦に臨む。(前田大介)
 

キャベツ運び筋トレ


 田中選手は、前大会のW杯で“スポーツ史上最大の番狂わせ”と評され、日本が歴史的勝利を収めた強豪・南アフリカ戦に出場。この試合で最優秀選手の「マン・オブ・ザ・マッチ」に選ばれた実力者だ。国代表同士の対抗試合に出場した回数は、今大会の日本代表選手の中で最も多い70を数え、高い経験値も兼ね備える。

 実家では55アールの農地で「九条ねぎ」やナス、エダマメを中心に栽培する。3兄弟の中で最も農業を手伝っていたという田中選手は、幼少期から家族と一緒に畑に通い、土いじりするのが習慣だった。「おとんが運転する耕運機に乗るのが楽しかった。今でも鶏ふんの臭いがすると懐かしい気持ちになる」と、思い出を語る。

 中学生になるとラグビーにのめり込み、農作業が筋力トレーニングを兼ねるようになっていた。当時は重量野菜のキャベツを生産。1ケース20キロあるキャベツが入った容器を一度に2ケース担ぎ、何度も畑と軽トラを往復。大人顔負けの腕力を発揮していたという。

 166センチ、72キロと小柄な田中選手は攻撃の起点となるスクラムハーフ(SH)がポジション。持ち味はボールを的確に操る高いハンドリング能力だ。「もしかしたら、ラグビーボールに似た楕円(だえん)形のキャベツをつかみ何度も運んでいたから、能力が養われたのかも」と笑う。

 田中選手を含む3選手の巨大田んぼアートが埼玉県行田市の水田に描かれるなど、全国の農業関係者の期待も大きい。田中選手は「体を維持できているのも、農家が作る農産物のおかげ。農家のためにも精いっぱい戦いたい」と意気込む。

 田中選手の父、義明さん(68)は「『ラグビーをやらへんかったら百姓する』とよく言っていた。ラグビーファンの中では『農家のせがれ』というイメージが定着しているだけに、ふみのプレーを見て、農業に関心を持つきっかけになってくれればうれしい」と期待を寄せる。

 

「精神的支柱」 教え子に期待


 高校ラグビーチームの成長を描き人気を博した1980年代のテレビドラマ「スクール☆ウォーズ」のモデルとなった伏見工業高校(京都市、現京都工学院高校)ラグビー部の元総監督、山口良治さん(76)も教え子の田中選手の活躍に期待を寄せる。

 山口さんも43年、福井県で農家の長男として生まれた。家業を継いでほしいと願う父親の方針で半強制的に進学した若狭農林高校(若狭町、現若狭東高校)でラグビーとの運命の出合いを果たす。「農林高校に進まなければ今の自分はいない」と振り返る。

 田中選手には「代表のバックスの中で一番のキャリアを積んでおり、チームの精神的支柱。日本ラグビーのため頑張ってほしい」とエールを送る。


<ことば> ラグビーW杯日本大会


 20チームが参加する4年に1度の世界一決定戦。20日から11月2日までの日程で、国内12都市で熱戦を繰り広げる。夏季五輪、サッカーW杯と並ぶ世界3大スポーツイベントの一つ。
 

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