スマート農業 体系的な学びの場を 北海道大学農学部教授 野口伸

野口伸氏

 農業のスマート化は情報通信技術(ICT)やロボットなどの先端技術により「農作業の姿」を大きく変えるものだ。スマート農業の本質は、農家の「経験」と「勘」に依存した従来農業から「データに基づいた農業」への転換と作業の省力化である。新規就農の促進にも有効であるため農業のスマート化は日本農業が抱える諸問題を解決する上で期待が大きい。

 内閣府戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)「次世代農林水産業創造技術」では2014年度から5年間をかけてスマート農業の技術開発を行った。今年度から現場実装が本格化した。SIP以外にも衛星リモートセンシング、ドローン(小型無人飛行機)、ロボット草刈り機、アシストスーツなど、様々なスマート農業に資する製品・サービスが続々と販売されている。
 

全国に実証事例


 今後、これらスマート農業技術の導入効果を多くの担い手に速やかに肌で感じてもらう必要がある。農業はいうまでもなく地域産業であり、作目、気象、土壌、地理的条件など地域特性を十分考慮して、地域に適合したスマート農業技術の導入が成功のカギである。そのためには日本全国に広くスマート農業実証モデルを設置して、その成功事例を対外的に示すことである。スマート農業によって農家が“稼げる”ことを証明することが、担い手に対して最も説得力のある普及推進活動である。実際に農林水産省は19年度から2カ年の事業で「スマート農業技術の開発・実証プロジェクト」と「スマート農業加速化実証プロジェクト」を全国69カ所で開始した。この事業成果には大いに期待したい。

 ICTやロボットを活用するスマート農業は従来の農機をはじめとした作業技術と大きく異なり、導入に大きな投資を必要とするため、円滑な普及には、新技術の効果的な利用法に対する「学びの場」を必要とする。言い換えると現場実装にはユーザーである担い手に、スマート農業の潜在力を理解してもらうことから着手しなければならない。

 そのためスマート農業に関するセミナーや実演会はもちろんであるが、技術から経営まで体系的に学べる研修プログラムも必要である。その研修プログラムも「ワカモノ」「地域農業をけん引する専門人材」「担い手」に分けて整備する必要がある。次世代農業を担う若者に対してはスマート農業をフル活用できる人材を養成すべく農業高等学校、農業大学校にカリキュラムを編成すべきであろう。単なる新技術のトピックスとしてでなく、スマート農業体系を学べる科目編成であることが要求される。
 

eラーニングも


 専門人材や担い手には切れ目ない研修の機会を自治体、JAなど関係機関が連携して構築することが望まれる。実務を抱える専門家や担い手向けの教育システムには効率的に学習できるeラーニングの導入を検討した方が良い。自治体―企業―地元大学・研究機関がコンソーシアムを組み、スマート農業を核にした地域農業のグランドデザインの策定とその実現に必要な人材育成の取り組みがこれからの農業の活路である。

 のぐち・のぼる 1990年北海道大学大学院博士課程修了。農学博士。同年北海道大学農学部助手、97年助教授、2004年より教授。19年3月まで内閣府SIP「次世代農林水産業創造技術」プログラムディレクター。スマート農業研究に従事。

おすすめ記事

論点の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは