農業・燃える思い 聖火に託す

 東京オリンピックの聖火リレーが3月26日、福島県のサッカー施設「Jヴィレッジ」(楢葉町、広野町)から始まる。7月の開会式まで121日をかけ、全国47都道府県を巡る予定だ。農業や地域への思いを胸に、聖火ランナーとなった農家らは、今から本番を心待ちにしている。
 

酪農の代表 元気に復興 千葉県南房総市・三浦直登さん


 千葉県南房総市の酪農家、三浦直登さん(42)は「酪農家の代表として走り、昨秋の台風の被災地を元気にしたい」と意欲的だ。
 
「酪農家の代表として走りたい」と話す三浦さん(千葉県南房総市で)
 
 祖父の代から酪農を営む家に生まれた。東京都庁に勤めた後、33歳で就農。「酪農を継ぐことで自分がやれることを精いっぱいやれば、良い人生になるのではないか」と思ったという。地元の酪農発展のため、中・高生向けの農業体験の受け入れなどにも積極的だ。

 「五輪に関わりたい」と思った三浦さん。千葉県の聖火リレーを調べると、7月2~4日に県内21市町を巡るコースに、南房総市も入っていることが分かった。「酪農発祥の地、千葉・南房総の酪農家としてぜひ走りたい」と昨年夏に応募した。

 県が公募した聖火ランナーは、33人に対し5758人が応募。書類選考を通過し、昨年10月の面接が決まった三浦さんだったが、9月の台風15号で自宅や牛舎の壁、屋根瓦が飛ばされるなどして損壊した。

 「2週間停電したが、自家発電で対応した。慣れない状況に体調を崩したり、ストレスがかかったりして乳房炎になった牛もいた」。面接ではそんな体験を基に、台風の被災地を元気にしたいとの思いを訴えたという。

 決定の通知は12月中旬に県からメールで届いた。三浦さんは7月2日に走る。距離は約200メートルと短いが、剣道やサッカー、東京マラソン完走の経験もあり、体力には問題ないという。「自分が走ることで周りの人が五輪への関心を持ち、身近に感じてくれるのが楽しみ」と期待している。
 

スポーツで 子どもに夢 山梨県南アルプス市・小田切信哉さん


 山梨県南アルプス市の果樹農家、小田切信哉さん(68)は、トヨタ自動車が募集した聖火ランナーに応募。20代の頃からプレーするバトミントンを地域に普及し、素直な子どもたちを育てたいとの思いを伝え、ランナーに決まった。
 
聖火ランナー決定通知を持つ小田切さん(山梨県南アルプス市で)
 
 小田切さんは、柿、サクランボ、スモモなどを約1ヘクタールで栽培。2018年からは柿の乾燥施設などを新たに造り、あんぽ柿も生産している。

 一方で、40年以上もバドミントンを続けており、県シニア大会の60歳以上の種目で4連覇を達成したスポーツマン。地域の体育協会の会長を務め、スポーツ活動の普及啓発運動に取り組む。

 同社は昨年、「地域をより良くするために現在挑戦していること、今後挑戦していきたいこと」をテーマに聖火ランナーを募集。小田切さんは「地域の子どもたちにバドミントンを普及し体力向上を促し、素直な子どもたちを育てることにチャレンジしたい」と応募し、ランナー正式決定の通知が届いた。

 山梨県で聖火リレーを行う6月27日か28日に走る。ランナーに選ばれたことについて、小田切さんは「家族や周りの人も喜んでくれて、人生の記念に走るのが楽しみ」と笑顔を見せた。
 

若手の活躍 発信へ好機 秋田県大仙市・齊藤拓さん


 秋田県大仙市の齊藤拓さん(27)はJA秋田県青年部協議会や4Hクラブでの活動をPRし、聖火ランナーに決まった。若手農家として走る機会を生かし、「若い人が農業に魅力を感じられるようにしたい」と意気込む。
 
本番に向けガッツポーズをする齊藤さん(秋田県大仙市で)
 
 齊藤さんは父親と共に水稲30ヘクタール、スイカ20アールを栽培する。高校時代は陸上の短距離選手として活躍し、高校2年生の時に100メートルを10秒8で走った記録を持つ。

 昨年、県実行委員会が募集した聖火ランナーに応募。その際、地域での活動を記入する欄では、青年部や4Hクラブなど地元での農業関係の活動を前面に出した。その結果、12月に当選のメールが届いたという。

 県内の聖火リレーは6月9、10日に行われる。

 聖火リレーではPRなどができないため、齊藤さんは聖火ランナーに決定したことを機に、インターネット交流サイト(SNS)やメディアを通じて、農業を特に若い人にPRしたいという。地元の高校生たちは農業に関心を持っている一方で、マイナス面の情報が伝えられることも多いからだ。齊藤さんは「若い人がやりたい職業の選択肢に農業が入るようになってほしい」と願う。
 

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