東京五輪と農業 次代への遺産つくろう

 東京五輪・パラリンピックまで25日であと150日。農家やJAなど各地の農業関係者はこだわりの農産物や伝統の食で選手や観客を迎えようと準備を進める。五輪に向けた工夫や努力、挑戦を大会で終わらせず、次世代につなぐ日本の「食と農のレガシー(遺産)」づくりの契機にしたい。

 東京五輪での飲食提供に向け多様な取り組みが広がる。茨城県は「県GAP(農業生産工程管理)第三者確認制度」を作り、認証農場を増やしてきた。農産物の安全確保や環境との調和、労働安全への対応の証明として、GAPは選手村などで使う食材の条件で、既にJAなど27団体・個人、延べ34品目が認証を取得した。日本貿易振興機構群馬貿易情報センターでは、欧米などの菜食主義者の需要に応えようと、同県特産品のコンニャクや梅を使った料理を飲食店に紹介するなどして、食材を売り込む。

 食べ物にとどまらない。サーフィン会場に近い千葉県いすみ市は農山漁村滞在型旅行(農泊)の拠点づくりを推進。農家らが宿泊客を受け入れ、農業体験などを提供する。サッカーなどの会場になる埼玉県は駅や商店街を花で飾る準備を進める。農家の協力を得てケイトウやニチニチソウなど、夏の暑さに強い花を選んで植栽する計画だ。

 大会期間の7月24日~9月6日に国内外から集まる選手や観客数は、1000万人超と見込まれる。食材や飲食提供の役割は重要で、選手が力を発揮できる品質の確保と、大会関係者や観客らの分を含め短期に大量に供給する力が求められる。一大商機に違いなく的確・迅速な対応が重要だ。併せて、取り組みを五輪限りの一過性のものに終わらせるのは惜しい。

 東京五輪後を考える視点を持つことが大切だ。今回は「全員が自己ベスト」「多様性と調和」「未来への継承」をコンセプトとし、飲食提供の基本戦略に「持続可能性への配慮」を掲げる。安全確保、環境との調和、労働安全はその一環で、有機農産物や有機畜産を推進、農福連携も推奨。食品ロス削減にも取り組む。日本産の品質を内外に発信、13年にユネスコ無形文化遺産に登録された「和食」の良さを再認識し、世界に紹介する機会としても期待される。

 「オリンピックで重要なのは勝つことではなく参加すること」「人生で最も大切なのは成功でなく努力すること」。近代五輪の父、クーベルタンはこんな言葉を残した。農業関係者は多様な形で主体的に関わってほしい。また関わりの有無にかかわらず、東京五輪を通じて次代の農業に何を生かし、次代の担い手に何を残し、消費者に何を伝えるか考えることは重要だ。

 飲食提供の基本戦略は持続可能な農業に通じる。自身の経営や地域農業を見つめ、より良くする取り組みにつなげてはどうか。日本の食と農にとってかけがえのない経験と財産になる。
 

おすすめ記事

論説の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは