豪雨、氾濫…台風19号から半年 営農再開道半ば

泥がたまり、雑草が生える田んぼに立つ塩野目さん(栃木県那須烏山市で)

 記録的な豪雨で深刻な農業被害をもたらした昨年10月の台風19号の上陸から、12日で半年を迎える。東日本を中心に河川の氾濫や堤防の決壊が起き、広範囲で農作物や農地の被害が発生した。一部は現在、回復に向かい本格的な生産管理を進めているものの、多くの農地では土砂に覆われ、栽培を断念する農家もいる。
 

いまだに泥堆積 見えぬ堤防復旧


 茨城県や栃木県では河川が氾濫して農作物を押し流し、土砂や稲わらが農地を覆うなどの被害が相次いだ。被災自治体は大半の農地や農業用施設で、田植えの時期である5月上旬までの復旧を目指すが、被災箇所が多く、工事が広範囲のため、いまだに復旧のめどが立たない場所もある。今年の営農を諦める農家も出ている。
 

栃木県那須烏山市


 農作物や農地・農業用施設の被害総額が177億5934万円に上った栃木県。国による災害査定の現地調査が2019年12月までに農地・農業用施設の1094カ所で行われ、市町が順次復旧工事を発注し、工事が完了する場所も出始めているが、手つかずの農地もある。

 那珂川が氾濫した那須烏山市下境では農地に大量の泥や石が堆積したままだ。米「コシヒカリ」を作る塩野目富夫さん(71)の水田の半分に当たる30アール分には高さ30センチ以上の泥がたまり、雑草も生えている。復旧工事のめどは立たず、「今年の田植えは難しい」と肩を落とす。被災から免れた30アールの田も農業用水路の復旧が進まず、悩みは尽きない。
 

茨城県常陸大宮市


 97億3010万円の農林水産業被害が発生した茨城県。大雨による川の増水や堤防の決壊で土砂が流入した水田の復旧が急ピッチで進む。被災を受け、堤防の拡張工事が進む一方で、堤防近くで稲作を行っていた農家や地権者は、水田がどこまで収用されるかが不透明で、気をもんでいる。

 那珂川の堤防が長さ250メートルにわたり決壊した常陸大宮市下伊勢畑地区では新たな堤防の工事が進む。国土交通省関東地方整備局常陸河川国道事務所によると、国と県は約665億円をかけ再整備。水田を土地収用した上で堤防の土台部分の幅を従来の3倍の約30メートルにする予定だ。新たな堤防建設に必要な測量がまだで、水田にどれほどせり出すかが不明のため、堤防に近い農地の復旧に着手できていない。

 同地区の稲作農家で、水田3ヘクタールが水没する被害に見舞われた蓮田和美さん(59)も堤防工事の影響を受ける。被災農地のうち2ヘクタールは復旧が進み田植えができる見込みだが、堤防付近の借地1ヘクタールは難しそうだ。「収用に関する説明は一度きりで、耕作者への補償などの話もない」と不安を募らせる。
 
田んぼに土砂が堆積した状況を話す高玉さん(福島県相馬市で)
 

稲作を断念―福島県相馬市 やっと消毒―長野市のリンゴ


 福島県相馬市で水稲を3・3ヘクタールで作る高玉伸重さん(56)は今年、その半分の作付けを断念した。台風19号の上陸から半年がたった今も、田んぼの土砂が撤去されていない。田んぼの復旧工事はようやく7日に始まったものの、今も川から流れてきた土砂や流木が田んぼにたまり、今後の作付けは見通せない。

 当時、高玉さんの自宅すぐ横を流れる宇多川が氾濫。同市全体で、494カ所の農地が被害を受けた。市内の災害査定は1月下旬に終了し、2月下旬から順次工事が始まった。

 しかし、農業用水関連から始まり、田んぼの土砂を取り除くまで至っていないのが現状だ。市や地元のJAふくしま未来も、作付けを中止する農家の戸数や面積を把握できていない。

 高玉さんの田んぼに土砂がたまったのは2回目だ。1度目は関東・東北豪雨の2015年。以降、高玉さんは行政に堤防のかさ上げなどを求め、18年に堤防のかさ上げが事業化されたが、着工を待たずに台風19号の被害に遭った。「2度目の被害に関しては悔しさがある」と高玉さんは話す。

 工事を担当する県は早期に発注をする意向だが、高玉さんは「ここ10年は東日本大震災もあり、災害続きだ。今年の台風シーズンも災害が起きるのではないか」と不安を募らせる。
 
JAからレンタルしたSSで農薬の散布作業を進める徳永さん(長野市で)

 千曲川の堤防が決壊した長野市穂保とその周辺の地域では、復旧作業が進み、スピードスプレヤー(SS)を使ったリンゴの消毒作業が始まった。JAながのやNPOなどが連携して取り組んだ農業ボランティアや災害復旧事業によって園地に流入した土砂の一部が撤去されたからだ。

 同地域ではJAの2カ所の薬液調合施設で7日から10日にかけて、黒星病などの防除のために調合した薬液20万リットルを農家に配布。JAはSSを21台を準備し、水没した農家に無料で貸し出し、約100人の農家が交代で利用した。

 農機の収納庫や住居が浸水被害を受けたリンゴ農家の徳永慎吾さん(39)もSSを使い、消毒作業に汗を流した。徳永さんは、この半年で多くの人からの支援を受けたことを取り上げ「支援者と新たに関係を持てたのは財産だ。おいしいリンゴを作って恩返しがしたい」と力を込める。

 ただ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響にも気をもむ。「今後のリンゴの販売に与える影響が読めず不安だ。復興への歩みをアピールしたい」と強調する。
 

動画が正しい表示でご覧になれない場合は下記をクリックしてください。
https://www.youtube.com/watch?v=8EV43SzKOGc 

おすすめ記事

動画ニュースの新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは