旅はいろんなことを、気づかせてくれる

 旅はいろんなことを、気づかせてくれる。見失いがちな大切なものまで▼外出自粛が緩和されても、首都圏などでは巣ごもり生活が続く。朝から晩までのコロナ報道で感染したような不安が募り、検温で平熱を確認して落ち着きを取り戻す。「小さな旅」(NHK)のような番組なら気分転換にいい。地方ならではの景色や農村に伝わる文化、郷土料理に、心が救われる▼機内誌『スカイワード』に作家浅田次郎さんの一文があった。外国の観光客に気に入れられようと、日本そばまで音を立てずにすすろうとする日本人への苦言である。観光地の魅力は、いたずらに国の文化や習慣を捨てない、その誇らしさにあると。「変わるな、ニッポン。それがほんとうのおもてなし」との結びに、留飲を下げた▼きょうは旅の日。松尾芭蕉が江戸からみちのくに出発した日である。全行程2400キロを150日余りかけて回り、紀行文「おくのほそ道」をつづった。その序文には、「月日は百代(はくたい)の過客(かかく)にして、行きかふ年もまた旅人なり」。月日や年を旅人に例える風流さに、日本らしさがにじむ。そんな粋な文化が消えれば観光の魅力も無くなるのだろう▼芭蕉が歩いた道を俳句でたどれば、時空を超えた発見がある。家にこもっていても、気分は旅に酔う。
 

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