民俗学の宮本常一は、20歳そこそこで放送にのめり込む永六輔さんに言った

 民俗学の宮本常一は、20歳そこそこで放送にのめり込む永六輔さんに言った。「電波の届く先に行って、そこに暮らす人の話を聞いてほしい」▼全国の農村を歩き回った人ならではの、アドバイスである。「スタジオで考えないで、人びとの言葉を届ける仕事をしてほしい」とも。永さんは生前、これを肝に銘じ、ラジオの長寿番組「永六輔の誰かとどこかで」の出発点になった。『伝言』(岩波新書)に書いている▼全ての媒体に通じる忠告だが、最近は政府広報や商品宣伝の垂れ流しが目立つ。そんな中、以前深夜ラジオで聞いた歌「帰らんちゃよか」(関島秀樹作)が、今も心に残る。都会に出て行った子どもに、戻ってこなくてもいいと言う。「親のためにお前の生き方かえんでよか」。本音か、強がりか。田舎の悲哀が伝わってきた▼映像がない分、想像力をかき立てるラジオ。その魅力は、「ながら」ができることでもある。聞きながら、農作業をする。余計な宣伝映像は、見なくて済む。民間会社の調査によると、新型コロナ禍が始まってからリスナーは緩やかに増加し、緊急事態宣言時には顕著に増えたという▼1925年のきょう、ラジオの本放送が始まった。媒体の主流をテレビやネットに譲っても、魅力は捨てたものじゃない。
 

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