国産「新麦」 魅力知って 収穫前線合わせ全国で「フェス」 九州皮切り パン店、通販で“解禁”

 国産小麦の収穫に合わせ「新麦」を使ったパンや料理の売り込みが始まった。NPO法人新麦コレクションは全国で新麦収穫前線のイベント「麦フェス」を進める。10日には、九州産が販売を解禁。2カ月かけて収穫前線が北海道まで北上する。新型コロナウイルスの感染拡大で大がかりなイベントは見送られるが、パン店(ベーカリー)店頭やオンライン販売で、地域の旬の味が楽める。

 10日、福岡市で地産地消を掲げるベーカリー、ブルージャムの店頭に新麦を利用したパンが並んだ。原料の小麦粉は熊本製粉(熊本市)がひいたプレミアムT。シェフの櫻井広基さん(38)は「九州産の中で小麦の特徴をよく表している。今回は北海道産とのブレンドでおいしさを引き出してみた」と話す。

 熊本製粉によるとプレミアムTは、収穫されたばかりの熊本県玉名市産小麦「ミナミノカオリ」を使う。小麦振興に熱心なJAたまなが、タンパク質含有量の多いものだけを選別し、豊かな風味が特徴だ。同製粉は取引先のベーカリーなど50社に、新麦を伝えるのぼりやポスターを配布。自社サイトでも新麦の小麦粉販売を始めた。

 新麦コレクション代表の池田浩明さん(50)は、ルポライターとしてベーカリーや製粉会社を数多く取材。多様な味が特徴の国産小麦に大きな可能性を感じた。しかし製粉と加工が必要な小麦はチームプレーが重要だが、当事者に一体感がなく盛り上がりが欠けると感じてきた。

 ワインの新酒「ボージョレ・ヌーボー」に触発され、2015年からイベントを始めた。「小麦は年によって作柄も風味も異なる。収穫前線は少しずつ北上する。新鮮な粉を使ったパンやケーキ、パスタを食べて、みんなで祝い連携するのが狙い」と池田さんは説明する。全国で1000店舗が新麦製品を発売するのが目標だ。

 NPOは10日、麦フェス・オンラインというサイトを開始。九州産の新麦を使う12ベーカリーのパンを期間限定で販売する。九州産に続き9月10日に東海・山陰、26日に関東・東北、10月20日に北海道産の販売を解禁。今年は記念のイベントが中止になった分、通販で盛り上げる考えだ。

 国産小麦は昨年、約21万ヘクタールで100万トンが生産された。一方で500万トンが輸入されている。国内では10年ほど前から製パンに向くとされる「ゆめちから」など新品種の割合が高まってきた。農水省は「大手企業の食パンなどで国産小麦を利用する比率が高まってきた」と期待する。

 ただ新麦を祝うのは、特徴のある商品を開発する中小規模の製粉企業やベーカリーが大半。「品種改良で国産小麦が使いやすくなってきた」と評価する人がいる半面、製法によっては「むしろ既存の品種の方が風味が個性的でおいしい」と語るベーカリーも多い。

 戦後の製パン技術は、米国産小麦を業界標準として発展してきた。10日に始まった麦フェスは、多様性の欠けた米国式パン文化とはひと味違う、個性的な日本のパン文化を目指す試み。ベーカリーからのラブコールに農業の側がどう応じるかが問われている。(特別編集委員・山田優)

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