地域の高校魅力化 農村再生の拠点になる

 公立高校がない市区町村が3割に上る。特に、中山間地や離島では「高校の過疎化」に歯止めがかからない。財政事情や効率化といった基準だけで統廃合を進めるべきではない。高校を核に地方創生に取り組む「高校魅力化」を広げたい。農山村の教育力は計り知れない。高校生にとっても大きな財産になる。

 公立高校の立地状況は2019年度で、文部科学省が今年7月に初めて公表した。ゼロもしくは1校の割合も6割を超えた。割合は10年度より高まっている。

 全国で高校が消えていく一方、政府は「高校魅力化」を地方創生政策の柱に据える。高校と地域社会との協働で地域密着での教育を行い、人材の育成や地域の課題解決などにつなげる。高校との連携には、農業をはじめとした産業界や自治体・自治会、住民グループ、地域運営組織、NPOなどが参画。各地で実践が進み、地域づくりに大きな可能性が芽生えている。

 例えば大分県竹田市久住地区の県立久住高原農業高校。70年以上も分校だったが、19年度に単独校として再スタートした全国でも珍しい農高だ。地域住民と手を取り合って、地域づくりを進める。農高は全国から生徒を募集する仕組みを作り、新規就農者や地元の農家も集う場と位置付け、地域や農業に活気を呼び込む考えだ。「地域にかっこいい大人がたくさんいる」「先進的で地域密着の農業を学べる環境は他にない」など、農高の生徒は地域密着で学べる意義を実感する。

 人口減少が進む中で、財政事情や効率化だけを考えれば過疎地域の高校は統廃合を迫られる。しかし、地方創生の柱と位置付ける一方で、生徒が減ったから閉校するというのは矛盾だ。高校は、地域を担う人材育成の拠点として捉えるべきだ。

 地域の教育力も評価すべきである。高校を進学や就職のための通過点とはせずに、生徒が地域の魅力を学ぶ価値を見直したい。農家らから直接教わったり、地域課題の解決策を共に考えたりするなど過疎地域の高校だからこそできる教育がある。

 新型コロナウイルスの影響により、オンライン教育も一般的になりつつある。これを過疎地域と都会の高校の連携に活用したい。19年度の高校数は全国4887校で09年度から296校も減った。農業系学科がある高校は19年度792校で10年間で53校も減ってしまった。高校の価値を再考し、オンライン教育の活用も進めれば、高校をなくすだけではない選択肢も出てくるはずだ。

 文科省は22年の春から、都道府県など学校設置者の判断で新しい学科の新設や再編ができるようにする方針だ。農業や地域を包括的に教えることも可能になる。地域に密着した魅力ある高校づくりに、JAや農家などは積極的に関わってほしい。高校は、農山村再生の拠点になる可能性を秘めている。
 

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