ちょっと女優の故高峰秀子さん似の美しい方である

 ちょっと女優の故高峰秀子さん似の美しい方である。ノンフィクション作家・後藤正治さん描く評伝『清冽(せいれつ)』の表題通り、凛(りん)として在り続けた▼詩人茨木のり子さんは14年前に天国に旅立つ。享年79。発した言の葉はいまだに生命を宿す。そして、いつも問う。〈自分の感受性くらい 自分で守れ ばかものよ〉と。昨年末に出た別冊太陽「茨木のり子」(平凡社)は丸ごと彼女の感性が伝わる▼同人誌『櫂(かい)』を立ち上げ、本格的に詩作に励みだす。その後の詩壇で輝く谷川俊太郎、吉野弘、大岡信ら各氏が集う。文の大海に小舟を出し自らの力でこぎ続ける“櫂”を担う。彼女を貫いたのは〈自身と日本社会〉である。「自分の感受性くらい」に加え、「わたしが一番きれいだったとき」「倚(よ)りかからず」の3部作は常に心が洗われる▼理系の頭脳を持つ。医者の娘で、自身も薬科系の学校へ。父が亡くなった時には〈吉良町のチエホフよ さようなら〉と。ロシアの作家・チェーホフも医者だった。生粋の関西人と思っていたが、母・勝は山形の庄内出身で、家の中では東北弁で奔放にしゃべり、外では標準語に。二刀流の母の言葉の不思議さが詩人誕生にも影響した▼きょう報道カメラマン沢田教一没後から50年。鋭い感性に、先の詩人の問いを思う。
 

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