東京の一極集中に「文化」の面から風穴が開いた

 東京の一極集中に「文化」の面から風穴が開いた。皇居近くにあった国立美術館が金沢市に移転し、先月末開館した▼正式名は東京国立近代美術館工芸館。わが国で唯一、工芸専門の国立美術館として四十数年親しまれてきた。それが「国立工芸館」として金沢の地に。政府機関を地方に移す施策の一環で、日本海側初の国立美術館となる。同館は陶磁や漆工、木工、ガラス、染織などの名品、逸品約1900点を所蔵する▼移転先は兼六園にほど近い。建物は、国の登録有形文化財である旧陸軍の施設を移築し復元した。明治時代の瀟洒(しょうしゃ)な洋館は、それ自体が歴史的遺産である。名誉館長は、日本の伝統文化の魅力を発信する元プロサッカー選手の中田英寿さん。工芸作家と消費者、地方と世界を結ぶ役割を担う▼開催中の開館記念展は「工の芸術―素材・わざ・風土」。石川出身の人間国宝、蒔絵(まきえ)師・松田権六の仕事場を再現するなど地元にも目を向ける。出色は、沖縄から北陸までの工芸品を地域別に配置したコーナーであろう。「工芸の技術や素材には、その土地の歴史が織り込まれている」という添え書きは、今回の地方移転の意味も教えてくれる▼眼福の時を経て、兼六園へと向かえば、風物詩の雪つりが、北陸に冬の訪れを告げていた。
 

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