イチゴ つり下げ式高設 高収量&作業効率化 静岡・磐南ファーム
2020年11月22日

栽培ベッドを全部上げ、SSを女性従業員が1人で運転して防除する(静岡県磐田市で)
磐田市の磐南ファームは、欧州から約1・8ヘクタールの大型ハウスとイチゴのつり下げ式高設栽培システムをセット導入し、今シーズンから本格栽培を始めた。10アール当たりの定植本数は、慣行の1・6倍。高収量を期待する。作業時は、栽培ベッドを上げて通路を作る。全部上げるとスピードスプレヤー(SS)が自在に走行でき、1時間で30アールの高速防除を実現した。
約3・5ヘクタールの敷地にフランス・リッシェル社の丸屋根型鉄骨大型ハウスを建設した。間口12・8メートル、棟高8メートルの18連棟で、内部は1室になっている。側面は二重構造で、ビニールの間に空気を送る。空気膜となり保温性を高めている。両開きの幅2メートルの大きな天窓で換気する。
栽培ベッドはオランダ製で、約5メートルの高さからつり下げる。モーターで地上から高さ0・7~2・3メートルの範囲を上下する。収穫や管理作業の時は作業しやすい高さに下げ、作業者の通路はベッドを上げて確保する。
通路が無い分、定植本数は10アール当たり1万1000本と多い。今シーズンの目標収量は113トンに設定。10アール当たり約6・5トンになる。
ベッドの長さは1本35メートルで重さが1トンある。つり下げるには強度が必要で、ハウスとベッドをセットで輸入した。
床は収穫果の輸送時の荷傷みを防ぐため、農地法上できるようになった全面コンクリート張りにした。防除は果樹用のSSを使う。同社技術部の竹内常雄部長は「慣行の動力噴霧器による手散布は、30アールを2人で8時間かかるが、女性が1人でできて驚いた。下から散布するので、葉裏に薬剤が掛かりやすい」と話す。
用水は天井に降った雨をタンクにためて賄う。ベッド脇に設置したチューブで温湯暖房する。ヤシ殻培地に点滴チューブで自動給肥し、複合環境制御装置も導入した。コンクリート張りで乾燥するので、近く加湿用のミスト装置を設置する。
事業費は約12億円。同社は石川建設の子会社で、磐田市、JA遠州中央、静岡県信連、日本政策金融公庫が連携して建設を支援した。
約3・5ヘクタールの敷地にフランス・リッシェル社の丸屋根型鉄骨大型ハウスを建設した。間口12・8メートル、棟高8メートルの18連棟で、内部は1室になっている。側面は二重構造で、ビニールの間に空気を送る。空気膜となり保温性を高めている。両開きの幅2メートルの大きな天窓で換気する。
栽培ベッドはオランダ製で、約5メートルの高さからつり下げる。モーターで地上から高さ0・7~2・3メートルの範囲を上下する。収穫や管理作業の時は作業しやすい高さに下げ、作業者の通路はベッドを上げて確保する。
通路が無い分、定植本数は10アール当たり1万1000本と多い。今シーズンの目標収量は113トンに設定。10アール当たり約6・5トンになる。
ベッドの長さは1本35メートルで重さが1トンある。つり下げるには強度が必要で、ハウスとベッドをセットで輸入した。
床は収穫果の輸送時の荷傷みを防ぐため、農地法上できるようになった全面コンクリート張りにした。防除は果樹用のSSを使う。同社技術部の竹内常雄部長は「慣行の動力噴霧器による手散布は、30アールを2人で8時間かかるが、女性が1人でできて驚いた。下から散布するので、葉裏に薬剤が掛かりやすい」と話す。
用水は天井に降った雨をタンクにためて賄う。ベッド脇に設置したチューブで温湯暖房する。ヤシ殻培地に点滴チューブで自動給肥し、複合環境制御装置も導入した。コンクリート張りで乾燥するので、近く加湿用のミスト装置を設置する。
事業費は約12億円。同社は石川建設の子会社で、磐田市、JA遠州中央、静岡県信連、日本政策金融公庫が連携して建設を支援した。
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外国人材の確保 通年雇用と環境整備を
農繁期の異なる産地間での人材リレーなど、外国人の新たな活用の仕方が農業分野で広がってきた。新型コロナウイルスの感染拡大で昨年、外国人技能実習生らが来日できなかった状況に対応するものだ。継続して働いてもらえるように受け入れ側は、通年雇用の体制と労働環境などの整備・改善を進めたい。
農村の人口減少や高齢化、規模拡大などによる労働力不足で、農業分野で働く外国人が増えてきた。技能実習生は2019年10月末で3万1900人、同年に始まった新たな在留資格「特定技能」の外国人も20年9月末で1306人になった。特定技能は、農業や介護など14業種が受け入れ対象で、労働者と法的に位置付け、同一業種なら雇用先を変更できる。
ところが昨年、新型コロナの感染拡大を防ぐために政府が入国を規制。2900人の技能実習生が来日できず、受け入れ予定だった産地は人手不足に陥った。こうした中で始まったのが外国人のリレーである。繁忙期が重ならない産地間で人材を共有。外国人は通年で働くことができ、農家には毎年同じ人に来てもらえるメリットがある。
先行事例とされるのが長野と長崎での県間リレーだ。長野県では冬に、長崎県では夏に農作業が減少。外国人は、夏を中心に長野のJA木曽やJA洗馬でリンゴやキャベツなどの収穫に当たる。その後、JAながさき県央に移動し、ニンジンやジャガイモの収穫などを行う。熊本県では平場が中心のJA熊本市と高冷地のJA阿蘇で、青果の出荷繁忙期が異なることに着目。熊本市ではナスやトマト、阿蘇ではアスパラガス、イチゴの選果などに従事する。
産地リレーを担えるのは特定技能か「特定活動」の外国人だ。特定活動はコロナ禍で解雇されるなどした技能実習生に、一度に限り職種変更と滞在期間の延長を認める在留資格。昨年11月時点で職種を変更したのは約1300人で、うち農業が約400人だった。
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それには外国人の声を聞くことも重要だ。外国人にとっては母国語で相談できる人がいると心強いだろう。JA熊本うきは、日本語、英語、ベトナム語、中国語に堪能なベトナム人を正職員に採用している。選果場などで働く特定技能外国人の管理の円滑化などを期待する。
技能実習生や農業分野の特定技能外国人は滞在期間が決まっており、帰国が前提だ。地域農業の持続的な発展には、担い手の確保・育成が必要である。外国人材の活用と両輪で進めなければならない。
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2021年01月14日
環境・所得に配慮を みどりの食料システム戦略 意見交換で全中会長
農水省は1月から、農業の生産基盤強化と環境負荷の軽減を両立する技術・生産体系「みどりの食料システム戦略」の策定に向け、農家や団体などとの意見交換会を進めている。14日に行ったオンライン会合には、JA全中の中家徹会長が出席。……
2021年01月15日
初のノウフク・アワード 優秀賞にJA松本ハイランド(長野)など 16団体 先進事例を評価
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2021年01月13日

11県合同トマト販促 首都圏100店舗で 鍋料理や機能性宣伝
冬春トマトの主産11県のJAグループが、首都圏のスーパーで合同販促を展開している。11県合同での冬季の店頭販促は初めて。17社と協力し、先週の3連休と今週末に、100を超える店舗で実施する。鍋など体が温まる料理やトマトの機能性を伝えるポスター掲示や推奨販売を通じ、厳寒期の販売を盛り上げる。
参加するのは、茨城、栃木、群馬、千葉、静岡、愛知、岐阜、福岡、佐賀、熊本、宮崎11県のJA全農県本部や経済連。……
2021年01月15日

本紙モニター調査 米需給対策=4割「課題あり」 輸出5兆円=「対策次第」3割
日本農業新聞が12月中下旬に行った農政モニター調査で、主食用米の需給均衡に向けた農水省の対策について「課題がある」との回答が39%に達した。米政策の改善には「転作メリットの拡充」が必要との声が最多だった。農林水産物・食品の輸出額を2030年に5兆円にする政府目標の達成の成否は「対策次第」とみる回答が33%で最も多かった。
農水省は昨年12月、輸出・加工用米や麦・大豆などへの転換に10アール当たり4万円を助成する「水田リノベーション事業」をはじめ、転作支援の拡充や米の需要喚起に向けた対策を発表。調査では「評価している」は12%にとどまり、「課題があり見直しが必要」が39%、「どちらともいえない」が47%だった。
「米政策を改善するとしたら、どういった視点が必要になるか」との質問には、回答を二つまで選んでもらった。最も多かったのは「転作推進のメリット拡充」で36%、「生産費を補う所得政策の確立」が35%で続いた。「資材価格の引き下げ」と「米の消費喚起」も30%の人が選んだ。
売上高が最も多い品目に「水田農業」を選んだ人に限ると、米対策については「評価」が14%、「課題がある」が44%、「どちらともいえない」が42%だった。米政策の改善については、「所得政策」が42%、「転作メリット」が36%、「資材価格」が35%の順だった。
農水省は21年産の米生産を「正念場」(野上浩太郎農相)とし、需給均衡には過去最大規模となる前年産比6・7万ヘクタールの作付け転換が必要とみる。対策の実効性確保には、こうした農家の意見も踏まえ、理解を求める必要がありそうだ。
輸出5兆円目標の達成については「対策次第」が33%だった一方、「達成できない」が27%、「過大だ」が16%で、「達成できる」の6%を上回った。経営品目別に見ると、「達成できる」と考える割合が最も高かったのは肉用牛肥育で14%、低かったのは畑作物と養鶏でゼロだった。水田農業や花きは5%、施設園芸は3%にとどまった。
政府は昨年11月、輸出目標達成に向けた実行戦略を策定したが、輸出の拡大には同戦略に沿った十分な支援策とともに、農家の意欲喚起も求められそうだ。
調査は、農業者を中心とした本紙の農政モニター1133人を対象に昨年12月中下旬、郵送で実施。756人から回答を得た。
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2021年01月17日
営農の新着記事

種子繁殖イチゴ 民間企業で初開発 育苗期間を半減 ミヨシグループ
種苗会社のミヨシグループは15日、日本の民間企業では初となるF1種子イチゴを開発したと発表した。国内向けに2品種を展開する。種子系品種はランナーで増殖する品種と比べて育苗期間が半減でき、省力化や病害虫リスクの軽減、コスト削減などが見込める。農家が果実の品質を見るための試作用苗を今秋に販売する。同日から予約受け付けを始めた。
輸送性も良好 今秋、試作苗販売
同社は高品質なイチゴの安定収穫や作業負荷の軽減を目指し、7年をかけて種子系品種の開発に取り組んだ。……
2021年01月16日

施設キュウリで 葉面積指数を活用 収量予測めざす 愛知・JA西三河
施設キュウリを栽培する愛知県のJA西三河きゅうり部会は、40人の全部会員が圃場(ほじょう)に葉面積指数を計測するLAI計測センサーを設置した。施設キュウリの生産者が導入するのは全国でも珍しい。樹勢やかん水の目安に役立て、将来的には収量予測への活用を目指す。
LAI計測センサーは植物群落の上下に照度センサーを設置し、上下の散乱光を採光する装置。葉が繁茂する状態によって上下の散乱光の光量比が変わる原理を活用し、自動で継続的に葉面積指数を計測する。静岡県農林技術研究所のトマトでの研究成果を基に、キュウリの葉面積指数を計測できるようにした。
センサーは昨年12月、開発したIT工房ZやJAあいち経済連、JAの担当者が圃場を巡回して設置作業に当たった。
農水省2019年度スマート農業技術の開発・実証プロジェクトを通じて実用化した装置で、新型コロナウイルスの影響を克服するための「経営継続補助金」を活用して全部会員が導入。産地全体でスマート農業を加速化させる。
JA営農企画課の大島健一課長補佐は「産地全体の栽培技術の高度化を図ることができる。LAI計測データを使って収量を予測し、販売にもつなげていきたい。他品目への応用にも期待している」と話す。一部の部会員は、生育の最適化に向けて排液カウンターや流量センサーの取り付けも行った。
部会は15年から、他産地に先駆けて部会全体で農業用情報通信技術(ICT)ツールを積極的に活用。導入以後、10アール当たりの収量・販売金額は約15%向上した。技術力の高い農家による栽培環境・肥培管理のノウハウを共有し、産地のレベルアップを図っている。
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2021年01月15日
稲わら還元+牛ふん堆肥10アール1トン カリ施用不要に 農研機構
農研機構は14日、水稲の元肥施用で、前作の稲わらを水田に還元して牛ふん堆肥を10アール1トン以上まけば、カリを施用する必要がないことを明らかにした。土壌診断でカリが一定程度あれば、稲わらの還元だけでも半減できるという。カリの減肥に向けた指針をまとめて同機構のホームページで公開し、施肥コストの削減に期待する。
同日公表した「水田土壌のカリ収支を踏まえた水稲のカリ適正施用指針」で明らかにした。……
2021年01月15日
チバクロバネキノコバエ イチゴで特殊報福島県内初めて
福島県病害虫防除所は14日、いわき市のイチゴ圃場(ほじょう)でチバクロバネキノコバエの被害を県内で初めて確認し、特殊報第3号を発表した。イチゴへの被害は長野、茨城県などに続き7県目。……
2021年01月15日

レモン新品種「璃(り)の香(か)」初収穫 かいよう病への強さ確認 静岡県東伊豆町 白鳥岳寿さん
静岡県東伊豆町のかんきつ専作農家、白鳥岳寿さん(64)は、難防除病害のかいよう病に強いレモン新品種「璃の香」を今シーズン初収穫した。同病に強いとされる主力のニューサマーオレンジ(日向夏)は一昨年の台風の影響で発病したが、「璃の香」は発生せず、同病に対する強さを実感している。……
2021年01月14日

遠隔で指導 時間差なく 熟練技の習得 相棒は“眼鏡”「おけさ柿」で実証 新潟県×ドコモ
新潟県とNTTドコモなどは、佐渡市の「おけさ柿」産地で眼鏡型ウエアラブル端末「スマートグラス」を活用した栽培指導の実証実験に乗り出した。眼鏡のレンズに文字や映像などが映し出されるスマートグラスを農業初心者が装着し、離れた場所にいる熟練の指導者と双方向で情報を共有しながら剪定(せんてい)技術などを学ぶことができる。
県内では、高齢化による生産者数の減少が深刻で、新たな担い手の確保が課題となっている。新規参入者への技術習熟支援を目的とした同実証実験は、国の2020年度「スマート農業実証プロジェクト」に採択され、県を代表機関とした実証コンソーシアムがスマート農業技術の実証に取り組んでいる。実証期間は22年3月まで。
スマートグラスには、カメラ、マイク、スピーカーが内蔵されている。リアルタイムで遠隔地の指導者側が園地の映像を確認でき、音声で指示を出したり、剪定すべき枝を写真で送ったりできる。作業手順を表示する機能や果実のカラーチャートなどの画像を確認できる機能も備える他、音声による操作も可能で、両手が空いた状態で使用できる。
実証圃場(ほじょう)を提供するJA佐渡のグループ会社・JAファーム佐渡の川上輝雄社長は「遠隔地からタイムリーに指示が来るので、まるで隣で指導を受けているようだ。剪定作業は習熟するまで5~10年はかかるが、スマートグラスによって、その期間を短縮できるのではないか」と期待する。
NTTドコモ新潟支店によると、今後は熟練者の技を3D映像で記録し、マニュアル化する試験も行っていくという。県農産園芸課園芸拡大推進室の横山登室長は「スマート農業によって省力化や人件費削減につなげ、県内の園芸生産拡大につなげていきたい」と意欲を示す。
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2021年01月11日

[営農ひと工夫] ポカポカ長靴で履き替え快適 農場の防疫に貢献 ウオーマー自作 北海道の酪農家・坂井さん
北海道根室市の酪農家、坂井敏明さん(57)は、畜舎内外で長靴を清潔に履き替えやすくする「長靴ウオーマー」を考案した。畜舎の入り口での靴の履き替えは、外部から病原体を持ち込ませないために必要な作業。簡単、便利で衛生的だと地域に広がっている。冬に暖かく乾燥した長靴は、毎日のように訪れる授精師らから「快適」と好評だ。
畜産農家にとって病原体は最大の敵だ。……
2021年01月05日

温暖化や労力不足に対応 深肥+密苗300ヘクタール試験 石川・ぶった農産、片倉コープアグリ
石川県野々市市のぶった農産と片倉コープアグリは、ペースト肥料の深層施肥技術を密苗に組み合わせた水稲の新技術の実証のため、2021年に全国300ヘクタール以上で試験をすると、24日発表した。作業の大幅な省力化、温暖化への対応、環境負荷の軽減など、水田農家が直面する課題への解決につながるとする。ペースト肥料の2段施用技術を「深肥(しんぴ)」と名付け、密苗と合わせて普及を目指す。
デモ用農機用意
ペースト肥料は粘性のある液状の肥料で、田植え機で移植と同時に施肥する場合、ポンプを使って楽に補給できる、機械が詰まらないので雨でも作業できるなどさまざまな長所がある。
片倉コープアグリがデモ用の田植え機を用意し、21年に東北から九州まで全国10県以上で実証試験をする……
2020年12月25日

春ニンジン トンネル穴開けマニュアル化 急な気温変化避けて増収へ ウェブでモデル畑の状況公開 徳島県
徳島県立農林水産総合技術支援センターは、春ニンジンのトンネルに穴を開けて温度を管理する栽培方法で、穴開けのポイントをまとめた。減収につながる急激な温度変化を避ける穴開けの方法をまとめたもので、マニュアルを基に管理したところ1割ほど増収した。穴開けの判断材料になる温度データをインターネット上で農家と共有し、データを基にした穴開けによる収量・品質の底上げを目指す。
春ニンジンの産地である同県内では、間口3メートル、高さ130~160センチほどの大型のトンネル内に10月から翌年1月にかけて種をまき、3~6月に収穫する……
2020年12月23日

イメージ向上“演出” 農家ライフ“おしゃれ”に ファッション企業とコラボ 東京農大@北海道プロジェクト
北海道網走市に拠点を構える東京農業大学オホーツクキャンパス発の、農家のファッション、料理、暮らしをおしゃれにするプロジェクトが始まった。若者に人気のあるカジュアルファッションブランドとのコラボレーションで「東京の渋谷や青山でも歩ける」農作業着を開発した他、一流シェフとの勉強会も開催。企業との連携を仕掛けて“演出”することで、農業の負のイメージを払拭(ふっしょく)する戦略だ。(尾原浩子)
「街で着こなして」
プロジェクトの発起人は東京農業大学生物産業学部の小川繁幸助教。本来は創造的で魅力ある仕事のはずの農業だが、「もうからない」「休みがない」といった負のイメージが付いてしまっていることを憂慮。農業を憧れの職業にするため、地元の農家と多彩な活動を展開する。
重視するのは企業とのコラボだ。米国発のファッションブランド「UNIVERSAL OVERALL(ユニバーサルオーバーオール)」を展開するドリームワークス社と、3年前から農作業着を企画・開発している。機能性や快適性を追求しつつも、何よりおしゃれさにこだわった。
例えばコート。農機に乗っても邪魔にならないように、裾をえんび服のようにカットした。他にも内ポケットにスマートフォンを入れやすいようにしたり、蚊取り線香をぶら下げやすいようにしたりと機能性にこだわりながら、一見すると農作業着とは分からないように工夫した。
10月には農家らの企画で、同社の農作業着のファッションショーを開いた。企画した森谷ファーム(北見市)の森谷裕美代表は「ライフスタイルそのものをおしゃれに発信したい。農家はクリエーティブな仕事だということを併せて知ってもらえば、農家の自信にもつながる」と期待する。ドリームワークスの奥山哲朗常務取締役営業本部長は「街で着こなせて農業もできるという新たなジャンルが定着しつつある。農業はアパレルの面でも可能性が高い」とみる。
シェフと交流カフェ提案も
料理の分野でも連携を進める。「農家は誰よりも良いものを食べている」ことを知ってもらうため、都会の一流シェフと勉強会やフェアを開く。テンサイ、エゾシカなどオホーツク地方の食材の提供だけでなく、農家の思いや風景なども伝える。東京・麻布のフレンチレストランで働く大井健司シェフは「科学的にも、農家や地域の物語としても、食材に魅力があることを知った。まだまだ農と食はつながることができる」と考える。
さらに、農家のライフスタイルも豊かにしようと、小川助教は農家に「畑カフェ」を提案している。週に1度でもいいので、農家同士が集まっておしゃべりし、おいしいお菓子を食べる「おしゃれな時間」を取ってもらう。観光客などに魅力ある空間として映ることを狙う。
この他、農福連携や観光との連携などのさまざまな企画を進める小川助教。「農業に誇りを持っている農家はたくさんいる。いろいろな人の力を借りて農業を演出することでファンを増やし、農業が可能性に満ちていることを発信したい」と語る。
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2020年12月17日