外食売上高21%減 1月、時短営業で客足激減
2021年02月26日


日本フードサービス協会が25日発表した1月の外食売上高は、前年同月比21・0%減となり、3カ月連続で前月より悪化した。新型コロナウイルス感染再拡大に伴う緊急事態宣言が再発令され、飲食店の時短による客足激減が響いた。
同協会の調査(有効回収222事業者、3万7475店)によると、ファストフードは1・4%減と、2カ月連続でマイナスだった。好調なハンバーガーなど「洋風」は2桁増と、全業態で唯一プラスだった。
ファミリーレストランは34・6%減と、前月より悪化した。このうち「焼き肉」は32・0%減と、下落幅が前月の約3倍に拡大した。
パブ・居酒屋は74・9%減と、最初の緊急事態宣言が発令された昨年5月並みの低水準だった。このうちパブ・ビアホールは79・0%減、居酒屋は73・5%減と、前月より大幅に悪化した。
同協会は「2度目の緊急事態宣言で、対象地域は酒類提供が午後7時まで制限され、飲酒業態は営業にならなかった。休業を選ぶ事業者も出ている」と、危機感を示した。
同協会の調査(有効回収222事業者、3万7475店)によると、ファストフードは1・4%減と、2カ月連続でマイナスだった。好調なハンバーガーなど「洋風」は2桁増と、全業態で唯一プラスだった。
ファミリーレストランは34・6%減と、前月より悪化した。このうち「焼き肉」は32・0%減と、下落幅が前月の約3倍に拡大した。
パブ・居酒屋は74・9%減と、最初の緊急事態宣言が発令された昨年5月並みの低水準だった。このうちパブ・ビアホールは79・0%減、居酒屋は73・5%減と、前月より大幅に悪化した。
同協会は「2度目の緊急事態宣言で、対象地域は酒類提供が午後7時まで制限され、飲酒業態は営業にならなかった。休業を選ぶ事業者も出ている」と、危機感を示した。
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広葉樹に目を向けよう 森林の燃料資源化
木質チップを燃料にした発電が広がりを見せ、放置されてきた広葉樹林が、新たな燃料資源として注目されている。作業の安全性や経済性などの課題はあるが、里山を生かすチャンスでもある。地域で活用の可能性を探りたい。
日本木質バイオマスエネルギー協会は、法令などで伐採の制限がかかっていない広葉樹の民有林が、全国に474万ヘクタールあるとの調査結果をまとめた。全国の森林の19%に当たる。傾斜度や林道の整備状況などもあり、全てがそのまま資源として使えるわけではない。それでも、同協会が現地を調査した3カ所では、広葉樹全体の2~5割が利用可能だとしている。
広葉樹はかつてまきや炭の原料確保に利用されていた。それが1960年代に起きたエネルギー革命で薪炭の利用がなくなり、荒廃し始めた。
真っすぐに伸びる針葉樹と違い、建築材にはなりにくい。現在は家具材や製紙原料が主な用途で、放置されたままの樹林も多い。中には低木が密生し、人が入れないほどに荒れた森もある。広葉樹が茂る里山が荒廃したことで山と里の間の緩衝帯がなくなり、耕作地に鳥獣害を呼び込む原因にもなっている。
70年代からはミズナラやコナラ、クヌギが集団で枯れるナラ枯れ現象が起き、荒廃を加速させている。ナラ枯れは甲虫が木の幹に穴を開け、媒介する菌類が木に感染して起きる。これらが直接の原因だが、下草刈りなど手入れが行き届かなくなったことも感染拡大の一因といえる。
利用されなくなった広葉樹に、燃料としての期待が高まっている。政府は、国内で使う電力の電源構成を見直し、太陽光発電などの再生可能エネルギーの比率を高める方針だ。木材チップを使ったバイオマス(生物由来資源)発電も含まれ、現在の電源比率2・3%を2030年には3・7~4・6%程度に引き上げるとしている。
広葉樹を発電燃料に生かせれば、伐採で更新が促される。手入れも行われ、里山の景観保全につながる。鳥獣害対策にもなる。また、家畜の敷料を輸入木材チップから地元産に置き換えられる可能性もある。木質バイオマス発電は地元で燃料を作るため、地域経済への貢献度が高いのも特徴だ。地域に新たな仕事ができる。
広葉樹は伐採中に裂けたり、思わぬ方向に倒れたりすることもあり、針葉樹以上に作業の安全への配慮は必要だ。枝が多く輸送効率も悪い。こうした課題に対して、山で木材をチップにできる移動式チッパーを利用するといった新技術の導入など、改善策が開発されてきた。地域に埋もれた森林資源に、もう一度目を向けよう。
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2021年04月20日

「しみずみらい応援団」プロジェクト テーマ曲CD化 静岡・JAしみず
静岡県のJAしみずは、農産物買い取り販売の売り上げの一部をあしなが育英会に寄付する「しみずみらい応援団」プロジェクトのテーマソングCDを制作した。楽曲で活動を広げようと、歌手を全国から募集。応募者32人の中からオーディションで、京都府出身の本井美帆さんを選んだ。
やさしさを少しずつ
作詞作曲はJA元常務の池田省一さん。……
2021年04月16日

いただきまーす あさくら味噌(みそ)汁 福岡・JA筑前あさくら
福岡県のJA筑前あさくら特産の「博多万能ねぎ」、大豆「フクユタカ」をはじめ地元農産物などを使って手作りしたみそ汁。湯を注ぐと、「博多万能ねぎ」とみそが織りなす香りが食欲をかき立てる。「忙しい朝や弁当の一品にうれしい」と人気。2020年度県6次化賞品コンクールで福岡県農業協同組合中央会会長賞となった。
1袋5個入り500円。JA農産物直売所「きばる」や「JA FARMERS 旬菜ひろば とまと」、JA管内Aコープ各店、楽天サイト「JA筑前あさくら旬菜広場」などで販売中。(福岡・筑前あさくら)
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2021年04月19日
生乳増産2年連続 都府県も8年ぶり 指定団体20年度
中央酪農会議(中酪)によると、2020年度の指定生乳生産者団体(指定団体)の受託乳量(生産量)は2年連続で前年を上回り、700万トン台に回復した。北海道がけん引し、都府県でも増頭対策の効果が現れ、8年ぶりに前年を上回った。今後、増産を軌道に乗せるには都府県の酪農基盤強化や、指定団体による需給調整機能の発揮が引き続き求められる。
指定団体の受託乳量は国内生乳生産量の9割強を占める。20年度の受託乳量(うるう年修正後)は前年比1・4%増の707万トンとなり、4年ぶりに700万トンを超えた。北海道は2・3%増の401万トンで、初めて400万トンを突破した。乳用雌牛が増加し、粗飼料も良く、1頭当たり乳量も安定していた。
都府県は0・3%増の306万トン。中国地方が6%増と最も拡大し、近畿や九州も1、2%増産した。最大の関東は0・6%減だったが、2月以降に生産が伸び、当初の見通しから上振れした。
生乳生産量が上向く中で課題もある。全国的にメガファームが増産をけん引するものの、小規模・家族酪農の離農が進み、空き牛舎も目立つ。都府県酪農の基盤を強化するため、関東生乳販連は「第三者継承など担い手確保に向け、実態に即した支援が必要」(迫田孝常務)と指摘する。
新型コロナウイルス下の生乳流通では、指定団体が全国連や乳業メーカーと緊密に連携し、生乳廃棄を回避したことに成果があった。その結果、20年度の脱脂粉乳・バター向けは増加し、年度計では6・6%増の169万トンに拡大。家庭需要が伸びた飲用向けは1・4%増の325万トン、業務需要の低迷で生クリーム等向けは4・8%減の125万トンと縮小した。
コロナ禍の生乳需給への影響は長期化する見込み。業務需要の回復はいまだ不十分で、バターなど乳製品在庫が積み上がる課題も残る。不透明な消費環境の下で増産を軌道に乗せるには、「需給調整の要である指定団体の機能発揮が重要」との声が強い。
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2021年04月19日
評価低い「菅農政」 現場の声 反映が不可欠
菅義偉内閣の支持率が続落している。日本農業新聞の農政モニター調査では、菅政権発足時の期待が、半年で失望に変わりつつある様子が見て取れる。米の需給緩和など直面する課題への対応が不十分と見られている。農政展開に当たり、生産現場の声を丁寧に聞くことが求められる。
調査は農業者を中心に3月中・下旬に行った。内閣支持率は40%で、昨年12月の前回調査に比べ4ポイント減った。政権発足当初の9月は6割を超えていたが、2調査連続で下落。支持理由は「他にふさわしい人がいない」が最多の34%で、次いで「自民党中心の政権だから」が27%、「菅首相を信頼する」が23%だった。
前回と比べて特徴的なのは「首相を信頼」が9ポイント減る一方、「他にふさわしい人がいない」という消極的な支持が6ポイント増えた点だ。「農家の長男坊だ」と地方重視の姿勢をアピールした首相に当初は農家の期待も膨らんだが、半年でしぼみつつあるようだ。
支持率低下の理由では、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず農業にも影響が出ていることや、元農相による収賄事件や総務省幹部の接待問題といった不祥事が相次いでいることなどが考えられる。加えて調査では「菅農政」への評価の厳しさが目立つ。
菅内閣の農業政策を評価する人は25%にとどまる。評価しない人は56%で、前回より11ポイントも増えた。今回「分からない」と答えた人は19%で、前回から10ポイント減ったことを考えると、評価を決めかねていた人が、評価しない方向に移ったことがうかがえる。
調査の自由記述には、率直な声が上がる。首相肝いりの農産物輸出拡大には「現場目線に欠け、2030年の輸出額5兆円も妄想」と、手厳しい。「大規模経営、スマート農業に偏重し過ぎ」との意見も多い。昨年見直した食料・農業・農村基本計画には、中小・家族経営への政策支援を明記したが、実際の農政運営では実感できず、不満となって表れているようだ。
コロナ禍や米の需給緩和により「市場での野菜の価格が安過ぎる」「米価下落で農地の保全が大変な状況になる」と、農業経営や地域農業への影響を心配する声も上がる。米の転作支援策では「(施策の見直しに)振り回されている感が否めない」との指摘もあった。生産現場の実態や課題をよく見るよう政府に求めていると言える。
調査では、新型コロナの感染拡大で打撃を受けた農業経営への対策を「評価しない」が57%で、転作支援など米の需給緩和を受けた対策は「効果がない」も57%だった。
「地方重視」を実感できるよう、生産現場の声に基づく政策を積み重ね、着実に成果を上げることが重要だ。
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2021年04月19日
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生乳増産2年連続 都府県も8年ぶり 指定団体20年度
中央酪農会議(中酪)によると、2020年度の指定生乳生産者団体(指定団体)の受託乳量(生産量)は2年連続で前年を上回り、700万トン台に回復した。北海道がけん引し、都府県でも増頭対策の効果が現れ、8年ぶりに前年を上回った。今後、増産を軌道に乗せるには都府県の酪農基盤強化や、指定団体による需給調整機能の発揮が引き続き求められる。
指定団体の受託乳量は国内生乳生産量の9割強を占める。20年度の受託乳量(うるう年修正後)は前年比1・4%増の707万トンとなり、4年ぶりに700万トンを超えた。北海道は2・3%増の401万トンで、初めて400万トンを突破した。乳用雌牛が増加し、粗飼料も良く、1頭当たり乳量も安定していた。
都府県は0・3%増の306万トン。中国地方が6%増と最も拡大し、近畿や九州も1、2%増産した。最大の関東は0・6%減だったが、2月以降に生産が伸び、当初の見通しから上振れした。
生乳生産量が上向く中で課題もある。全国的にメガファームが増産をけん引するものの、小規模・家族酪農の離農が進み、空き牛舎も目立つ。都府県酪農の基盤を強化するため、関東生乳販連は「第三者継承など担い手確保に向け、実態に即した支援が必要」(迫田孝常務)と指摘する。
新型コロナウイルス下の生乳流通では、指定団体が全国連や乳業メーカーと緊密に連携し、生乳廃棄を回避したことに成果があった。その結果、20年度の脱脂粉乳・バター向けは増加し、年度計では6・6%増の169万トンに拡大。家庭需要が伸びた飲用向けは1・4%増の325万トン、業務需要の低迷で生クリーム等向けは4・8%減の125万トンと縮小した。
コロナ禍の生乳需給への影響は長期化する見込み。業務需要の回復はいまだ不十分で、バターなど乳製品在庫が積み上がる課題も残る。不透明な消費環境の下で増産を軌道に乗せるには、「需給調整の要である指定団体の機能発揮が重要」との声が強い。
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2021年04月19日
コロナ下 消費行動変化 「食品保存増」2割 自宅で料理増3割 JCA調査
新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米や肉、野菜など食品の各品目で、保存量が増えた消費者が2割に上ったことが、日本協同組合連携機構(JCA)の2020年度の調査で分かった。自宅での料理回数が増えた人は3割いた。外出自粛や在宅勤務の増加が背景にある。食品の販売は、消費者の生活様式変化に対応した戦略が鍵になる。
JCAの「農畜産物等の消費行動に関する調査」で、毎年実施する。20年度は20年8~9月にインターネットで全国の2159人が回答した。
自宅での食品(冷凍を含む)の保存量が増えたと……
2021年04月18日
ペルーで新パナマ病 バナナの大敵、まん延防止へ
ペルー政府は、バナナの大敵である新パナマ病(TR4)が、最北部に位置するスヤナ州のバナナ農園で確認されたと発表した。ペルー全土を対象に植物防疫対策の緊急事態宣言を発令し、隔離の徹底などまん延防止に取り組む方針だ。
南米ではコロンビアで2年前にTR4の侵入が確認され、今回ペルーに広がった。世界最大のバナナ輸出国であるエクアドルが両国に挟まれる所に位置し、南米バナナ業界では大きな衝撃が走っている。
世界のバナナは、1950年代にフザリウム菌によるパナマ病によって主流品種の「グロスミシェル」が一掃された。現在は抵抗品種の「キャベンディッシュ」がほとんどを占める。ところが、フザリウム菌の別の系統TR4による新パナマ病が80年代になってアジアから猛威を振るい始め、アフリカなどに広がり、南米に侵入した。
栄養繁殖の商業用バナナは世界中でTR4に弱い「キャベンディッシュ」一色のため、感染の広がりを防ぎにくい。日本が多くを輸入するフィリピンでもTR4は深刻な打撃を与え、園地の改廃などが進んでいるという。
南米の研究者らとTR4の研究をしている東京農工大学の有江力教授は、人や車の往来で汚染された土壌を通じて感染が広がり「バナナの生果実から病気がうつる心配はないだろう」と指摘する。
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2021年04月18日

走る、つなぐ 地域の食 [コロナが変えた日常]
新型コロナウイルスの感染拡大で、外出自粛や飲食店の営業短縮が長期化する中、東京都三鷹市では、地域密着の宅配サービス「チリンチリン三鷹」が1周年を迎える。
JA東京むさしの直売所「三鷹緑化センター」を拠点とし、農家が生産する野菜などの生鮮食品と、地元の飲食店が作った弁当などを自転車で宅配。コロナ禍で休業を余儀なくされた人らが配達員となり、市内全域に届けている。
この仕組みに、農産物の新たな販路を探していた農家が加わることで、消費者は新鮮で安心な野菜や肉、卵などを在宅のまま買えるようになった。購入者は配達員に1回500円の支援金を支払う。
参加農家は1年で2戸から20戸に広がった。直売所にない物は配達員が協力店に立ち寄って調達。注文を受ける電話の応対は、地元の葬儀社が担当するなど、地域挙げての協力体制だ。多品目の供給ができるようになり、地元産の食材にこだわる飲食店も増えた。
市内在住の発起人、濱絵里子さん(38)は「みんなの『困った』を結び付けたら面白い展開になった。今後は野菜ごみを再び農地に返すなど、地元で活動の輪を広げていきたい」と話す。(仙波理)
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2021年04月17日
切り花 品目間で明暗 洋花好調、菊は葬儀用が苦戦
春の需要期が過ぎ、切り花相場は品目で明暗が分かれている。家庭用など用途の広いカーネーションやバラといった洋花は平年と比べ1~3割高で推移。一方、葬儀や供え花に使う輪菊や小菊は1~3割安と低迷する。業務用の仕向けが多い産地は、新型コロナウイルス禍の需要不振から販売が減少する中、新たな販路を模索している。(柴田真希都)
直近の取引があった14日の日農平均価格(全国大手7卸のデータを集計)は、カーネーションやバラ、ガーベラが平年比2、3割高。いずれも小幅だが3営業日連続の上昇で、この時期には異例の高値基調だった。「家庭での普段使いの他、開店の祝い花や装飾など用途が広く、売れ行きが良い」(大田花き)。
今年の切り花全体の相場を見ると、1、2月は大きく下落した。大都市圏の緊急事態宣言再発令と低温が直撃し、月別の日農平均価格は平年比2割安の1本当たり53円と低迷。一方、3月は送別会や彼岸向けの仕入れが進んだことから70円と高水準で、販売量も過去2年を上回り、活発な取引となった。
しかし、彼岸が明け通常期に戻ると、菊類などが再び平年を下回る展開に。輪菊は彼岸後から11営業日連続で平年比1、2割安で推移し、14日は39円と2カ月ぶりに40円を割った。小菊も8営業日連続で平年を1~3割下回る。「量販店の仏花束の動きが鈍い。新型コロナの感染再拡大によって、主要な購入層の高齢者が店に行く頻度が減っている」(同)。
通常であれば、小売りや加工業者が前もって多めに仕入れるケースも多いが、コロナ下では消費の先行きが不透明なため、仕入れを必要最小減に抑える傾向だ。物日向けは間際に足りない分をせりで買う業者が増え、せりよりも高く売れるはずの注文販売分があおりを受け、苦戦している。
輪菊の主産地、JA愛知みなみ(田原市)では、今年度の注文の年間契約分が大きく減った。「コロナ禍による葬儀縮小で上位等級の減少が大きい」(同JA)。減少分を補うため、従来輸入品を使っていた業者に置き換えを提案したり、5月の「母の日」に向けた墓参り需要(母の日参り)を当て込み、積極的に注文を取るなど、新たな販路の開拓に努めている。
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2021年04月16日

米の新顔 期待と不安 福島「福、笑い」 秋田「サキホコレ」 需給緩和、コロナ…
米どころの東北地方で、今年から来年にかけて福島県と秋田県のオリジナル品種が相次いでデビューする。県はブランド化に力を入れるが、米の需給緩和や新型コロナウイルス禍が影響し、販売環境は決して良くない。他県の銘柄米も数多くある中、幸先の良いスタートが切れるのか──。生産者は気をもんでいる。(音道洋範)
福島県からは2021年秋に「福、笑い」がデビュー。秋田県では22年秋のデビューを前に、今年から「サキホコレ」の販促を本格化させる。両品種とも、県は“最上位品種”と位置付けている。
「福、笑い」は21年に25ヘクタール、130トンの生産を計画。県やJAなどでつくる協議会が、毎年需給を見極めて生産量を調節することで希少価値を高め、高価格の維持とブランド確立を進める。
「『福、笑い』の存在感を高めていきたいい」と話すのは福島県農産物流通課だ。パッケージは青色を基調にして人々の顔を描いたものを採用。農業生産工程管理(GAP)認証の生産者だけが栽培できるなど、独自性を打ち出す。
福島県白河市で、新品種を栽培する入方ファーム代表の薄井惣吉さん(67)は、福島県産米は原発事故の「風評被害」が残ることを挙げ、「福島の生産者が、希望やプライドを取り戻すきっかけになれば」と思いを込める。
薄井さんによると昨年、「福、笑い」の生産者買い取り価格は1俵(60キロ)1万8000円前後と、同県産「コシヒカリ」を6000円ほど上回った。香りが立ち、強い甘味があると評価され、生産者の期待は大きい。
一方、販売環境は悪化している。農水省によると2月の福島中通り「コシヒカリ」の相対価格は前年比12%値下がりした。今秋以降も米価下落への懸念は根強く、薄井さんは「『福、笑い』がデビュー後にどれだけ市場に受け入れられ、価格を維持できるかが鍵だ」と語る。
秋田県産の「サキホコレ」も、21年秋にプレデビューする。味にこだわりを持つ消費者や飲食店などを主な顧客と想定し、今年は80ヘクタール、約400トンを生産する予定だ。
県は知名度の高い「あきたこまち」で培った販路や米どころのイメージを活用し、販路拡大につなげる考え。首都圏と県内の米穀店や百貨店を中心に売り場を広げていく計画で、「価格以上に価値のある米だと消費者に感じてもらいたい」(秋田米ブランド推進室)と期待する。
ただ、秋田米もコロナ禍や近年の豊作傾向で在庫が増加。県農業再生協議会が20年に行った試算では、21年6月末時点の推定在庫量は15万5733トンと、過去5年で最大となる見込みだ。県の担当者は「『サキホコレ』は販売サイドの関心が高く、数量も少ないため影響はない」とみるが、秋田米を扱うある米穀業者は新品種に期待しているとした上で「メイン品種の値下がりが止まらない中、ブランド米への下押し圧力も相当なものになるだろう」と不安を抱える。
明確な印象 打ち出せるか
農産物のブランドづくりに詳しい静岡県立大学の岩崎邦彦教授
米は毎年さまざまな銘柄米が出ているが、消費者が明確なイメージを持っている銘柄米は極めて少なく、ブランドではなく商標にとどまっているのも多い。
農産物のブランドを確立させるためには、産地が明確なイメージと特徴を持ち、それを消費者に共有してもらうことが大切だ。
味や食感などはもとより、形状、栽培方法など何らかの形で日本一と打ち出せるほどの個性を持つことが必要ではないか。
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2021年04月13日

イチゴ輸出に勢い 2カ月で前年の8割 アジア圏中心
イチゴの輸出に勢いがある。財務省貿易統計によると2月のイチゴ輸出量が493トンとなり、単月では初めて10億円を突破。輸出量も、1月から2カ月連続で前例のない400トン超えとなった。日本産の品質面への評価に加え、新型コロナウイルス下の巣ごもり需要を海外でも獲得している。(高梨森香)
大粒・食味に定評 コロナ下の巣ごもり需要つかむ
日本産イチゴは香港、シンガポール、タイ、台湾、米国などに輸出。2014年から輸出量が伸び、18年には過去最高の1237トンを記録した。19年は不作で1000トンを割り込んだが、コロナ下で物流が停滞した20年も1179トンと18年に次ぐ輸出量を維持。10年と比べて11・5倍になったが、21年はその20年の年間量の8割に当たる913トンを2カ月間で輸出している。
日本産イチゴは海外市場では国内価格の3~6倍で流通するが、大粒の見た目や食味の良さから現地の富裕層を中心に人気が高い。福岡県のJA全農ふくれんの担当者は「コロナ下で輸送用の航空便が減便となる課題があった一方、訪日できない外国人の現地での家庭消費が旺盛だった」と指摘する。
イチゴは輸出の有力品目で、「今後、さらに需要は拡大する」(全農インターナショナル担当者)との見方は多い。越境のインターネット通販サイトを活用した輸出を進める主産地の栃木県は、シンガポールやマレーシアなどで県産イチゴを使った料理教室をコロナ下も開催。海外市場への売り込みを強める姿勢だ。
政府は農林水産物・食品の輸出拡大実行戦略で25年にイチゴの輸出額86億円を目標に掲げ、全国12産地を「輸出産地」に指定。国内需要を満たした上で輸出向けも確保できるよう生産基盤の強化を急ぐ。農水省は「基盤強化を軸に、流通段階での品質保持、相手国の防除基準やニーズに合わせた生産で輸出量を伸ばしていく」(園芸作物課)と話す。
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2021年04月11日
台湾、56年ぶり干ばつ 農産物被害 日本産に期待高まる
台湾で昨年、1964年以来初めて台風が上陸せず、降雨量は、地域によっては例年の2~6割に減少した。その影響で、タマネギなどの農産物に被害が生じている。今後も干ばつ傾向が続くことが見込まれることから、有力な輸入国である日本に期待する見方も出ている。
日本の農水省に当たる農業委員会(農委会)によると、昨年、台風が上陸しなかったため降雨量は例年の2~6割に減り、56年間で最も少ない年となった。&
干ばつの影響で、8日現在、3715ヘクタールの農産物に被害が生じている。品目別では、マンゴーへの被害が2162ヘクタールと最も多く、次に茶、梅、タマネギの順となった。
今年1期作としてかんがいが必要な面積は、23万6000ヘクタール。しかし、75%に当たる17万8000ヘクタールで水不足が深刻になる恐れがある。農委会は、今後も干ばつ傾向が続くとみて、関連病害虫の防除を進め、農業被害を最小限に抑えるように呼び掛けている一方、干ばつによるタマネギなど野菜生産量の減少で日本産の需要が高まるとみられている。台湾は昨年、日本から前年の4・3倍に当たる3万7624トンのタマネギを輸入した。日本は、米国や韓国を抜いて初めて輸入量が1位となった。今年1~2月の輸入量も、前年同期の2・8倍の5269トンと1位を維持している。
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2021年04月11日

和子牛せり 名簿にゲノム育種価 能力判断の新指標 群馬・渋川市場
和牛子牛を取引する群馬県の渋川家畜市場で9日、せり名簿への「ゲノミック育種価」の表記が始まった。血統や体格などに加え、子牛の能力を判断する新たな指標として提示し、評価向上や取引の活性化につなげる。分析を担う家畜改良事業団によると、ゲノミック育種価をせり名簿に記載するのは全国初の試み。(斯波希)
ゲノミック育種価は、和牛の能力をゲノム(遺伝子)の違いで評価する。
2021年04月10日

ダイダイ地域の顔に 「サワー」PR実行委も発足 静岡県熱海市
ダイダイで熱海を元気に――。全国有数のダイダイ産地・静岡県熱海市では生産者と食品卸、飲食店などが一体となって、地域活性化とダイダイのブランド化に注力する。その一環として熱海市の飲食店関連団体は9日、「熱海だいだい実行委員会」を発足した。ダイダイの活用によって地域経済を循環させ、縮小するダイダイの生産基盤維持にもつなげたい考えだ。
委員会は熱海料飲連合会、熱海社交業組合、県飲食業生活衛生同業組合熱海支部の3団体が立ち上げた。……
2021年04月10日