農機事故対策 高齢者に目を向けよう

 全国農業機械士協議会は、秋の農作業シーズンに焦点を当て、7月からベテラン農業者の農業機械を対象にした点検作業を始めた。農作業事故死亡者に占める65歳以上の割合は、ここ数年8割を超える。高齢者の農機を重点的に点検するような、高齢者を巻き込んだ農作業安全対策を各地で進めよう。

 「ベテラン農業機械点検」と名付けた農水省の事業の一環。高齢者の事故を減らせれば、農作業事故は劇的に減少する。農業機械について専門的な知識を持ち合わせている農業機械士が、高齢者の所有する農業機械を点検し、その結果を高齢者に伝えながら、農機整備の大切さを訴える。同時に、この機会に農作業安全への注意を呼び掛ける狙いだ。

 昨年から始まり、今年で2度目。7月から12月を現場点検の実施期間とし、特に秋の農作業繁忙期を重点的に点検していく。全国の農業機械士が、65歳以上、特に75歳以上の農家の農機を優先する。

 高齢農家の農機を重点的に点検するのは、一つには農機事故が高齢者の間で多発しているからだ。農水省の農作業事故死亡者数調査によると、直近の2017年は84・2%が65歳以上、80歳以上は42・1%だった。しかし高齢農家の農機を点検する理由は、それだけではない。高齢者が使う農機そのものも注意を要する。

 高齢者の農機は長年使われているケースが多く、不具合が生じている可能性がある。タイヤの摩耗、ブレーキランプの故障、ユニバーサルジョイントのカバー破損などが、昨年の点検では見つかった。

 最近の機種なら普通に付いているような安全対策の装備が、古い機種には備わっていないこともある。安全フレームが付いていない旧型のトラクターが、今でもそのまま使われていないだろうか。点検することで、こうした機械側の改善すべき点を明るみにできる。

 さらに点検を通じて、高齢農家の意識改革ができることも大きい。高齢者は農機の研修会や農作業安全講習会などにあまり参加しない。長年慣れ親しんだ農作業だから、特に変える必要はないと思ってしまいがちだ。死亡者が年間300人を超えていること、農作業事故はどこでも起こる可能性があること、明日はわが身かもしれないことなど、点検を通じて話をすれば、高齢者に農作業事故について意識してもらう機会になる。

 市町村の健康診断など、高齢者が集まりやすい場所で農作業安全の研修会を開く取り組みもある。指導機関は農機の点検も含めて、農作業安全について高齢者と共に考える機会を、もっと設けるべきだ。

 家族に高齢農家がいたら、安全作業に気を配るよう声を掛けよう。高齢者の研修への参加を増やすこと──。それが農作業事故を減らす大きな一歩になる。
 

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