早期米 概算金上げ 所得確保集荷増へ 300~1000円高で設定
2019年07月21日
2019年産の早期米産地の概算金が出そろった。前年産に比べて1等60キロ当たりで300~1000円高の設定が中心となった。生産者所得の確保や集荷の積み増しを意識したとみられ、上げ設定が相次いだ。……
1 2
おすすめ記事
暑さを逃れる生き物が大移動する
暑さを逃れる生き物が大移動する。そんなSF小説のような現象につながる前兆かもしれない▼地球温暖化に伴う異変である。ヒートアップした地球上で異常気象が相次ぐ。南半球のオーストラリアでは、空気が乾燥した南東部を大規模な森林火災が襲った。北半球でも、経験したことのない大雨や高温に悩まされている。日本が頼る農産物が気に掛かる▼“ゆでガエル”の例えでもないが、金もうけに忙しい指導者の危機感は高まらない。国連の報告書では、昨年の温室効果ガス排出量はCO2換算で、過去最高だった。このペースで出し続けたら「破壊的な影響」が出ると警告する。にもかかわらず、米国は温室効果ガスを減らす「パリ協定」から離脱すると通告した。トランプ大統領の気が知れぬ▼楽観できないのは日本も同じ。今世紀末には、温暖化のスピードに生物の移動が間に合わず、絶滅の可能性が高まる。長野県環境保全研究所や国の農研機構等の試算で分かった。気候変動は全国平均で年249メートルの速さで進むが、年間移動がせいぜい40メートルの植物は適応できないという。野菜や果樹の産地地図ががらりと塗り替わることも考えなければならないのだろう▼既に米に高温障害が目立ち始めている。「飽食ニッポン」。うかうかできない。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月02日

[未来人材] 39歳。かんきつのソムリエ制度立ち上げ 歴史、外観にも注目 二宮新治さん 愛媛県宇和島市
愛媛県宇和島市のかんきつ農家・二宮新治さん(39)は、“かんきつの文化の目利き”を育てるソムリエ制度を立ち上げた。果皮にある粒(油胞)のきめ細かさや、果実の曲線美、香りなど、独自の視点で食味に限らない魅力の発信に力を尽くす。自ら運営主体となるNPO法人の理事長を務め、1月下旬にも松山市で同制度のお披露目会を開く予定だ。
「『せとか』には色っぽさを感じる」。二宮さんが、果実を擬人化しながら品種それぞれの特徴を説明する様子は、かんきつ愛にあふれている。「せとかは、軸(へたの部分)に近づくにつれて、油胞の配列が果頂部に吸い込まれていくよう。どの果実と比べても美しく、口に入れた瞬間の香りも良い」
ミカンや「紅まどんな」など2・5ヘクタールでかんきつを栽培する生産者。普段、農家は高く売れるといった経済性を重視するし、消費者はおいしさに注目しがちだ。だが、かんきつの魅力はこれだけにとどまらない。
制度では、かんきつの見た目や歴史、品種の特徴など、あまり注目が集まってこなかったことへの学びを深める内容にする。二宮さんは「かんきつの面白さを分かってもらえる仲間を、もっと増やしたい」と話す。
二宮さんの人柄に引かれ、さまざまな人が集まってくる。兵庫県西宮市の高橋利弥さん(20)は12月下旬まで二宮さん宅で、収穫や選別作業を手伝っている。
「選別作業場がおしゃれだし、何より宇和島の農家の人柄に引かれる」と、これまでに4回訪れた。他にも二宮さんは、大学サークルなど多くの人と交流する。ソムリエのイメージと重なる人との出会いもあったという。
制度の設立を披露した後の3月から、「ソムリエ」のライセンス講座をスタートする予定だ。二宮さんは「(宇和島を援農で訪れる人など)関係人口は徐々に増えているが、地域振興にはまだまだ足りない」と考える。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月08日
日米協定参院委可決 牛肉SG、追加交渉分野 懸念拭えぬまま
日米貿易協定の承認案を巡る参院外交防衛委員会の審議が3日、終了したが牛肉セーフガード(緊急輸入制限措置=SG)の発動基準数量の引き上げや、追加交渉での農産品の扱いなど、同協定が抱える多くの懸念事項は払拭(ふっしょく)されなかった。野党側が追及するも政府側は従来の答弁に終始。国会での議論は消化不良のまま、協定の発効へ最終局面に入る。
農産品で議論になったのは、SGの発動基準の見直しだ。協定の補足文書では、発動した場合、基準を一層高いものに調整する協議に入ることを明記。初年度の基準が2018年度の輸入実績よりも低くSGが発動しやすい半面、協議による基準引き上げの動向が焦点になっている。
立憲民主、国民民主など野党でつくる共同会派の舟山康江氏は「(日本側が)相当不利な書きぶりだ」、共産党の井上哲士氏も「極めて特例的な規定だ」と批判。協定発効後はSGが発動しても税率は発効前の38・5%にしか上がらないことを踏まえ、輸入抑制効果を疑問視した。
茂木敏充外相は、SGの発動について、輸入業者が発動基準をにらんで年度末に輸入量を調整すると見通し、「毎年そういう(発動する)ことが起きるとは想定していない」との認識を示した。内閣官房の渋谷和久政策調整統括官は「協議することは同意したが、先は予断していない」と従来の答弁を繰り返した。
日米が発効後4カ月以内に予備協議し、追加交渉の分野を決めるという規定も論点になった。政府は交渉でまとまらなかった自動車・同部品の関税撤廃期間を追加交渉で扱うと説明してきた。
舟山氏は「自動車の関税撤廃を獲得する時は、何も譲らないと約束すべきだ」とし、農産品などの一層の市場開放をしないよう強く求めた。
渋谷氏は「協定を誠実に履行することが米国にとって望ましい」と協定の基本的な在り方を述べるにとどまり、具体的な対象分野への言及は避けた。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月04日

[岡山・JA岡山西移動編集局] 冬まで高品質桃 10品種で長期リレー 労力分散贈答品に
JA岡山西吉備路もも出荷組合は、10品種の桃をリレー形式で長期間出荷し、ブランドを築いている。6月中旬から12月上旬までの長期出荷は全国的に珍しい。中元や歳暮の贈答需要に対応した所得安定や、労力分散を図っている。現在は、高糖度で日持ちが良いJA独自ブランド「冬桃がたり」を出荷。シーズン最後に高品質桃を出荷し、消費を取り込み、来季の販売につなげる。
同組合は、6月中旬の極早生品種「はなよめ」を皮切りに、12月上旬まで「冬桃がたり」を出荷する。
近年、力を入れているのが、シーズン終盤の「冬桃がたり」の生産、販売だ。極晩生種で、1玉約250グラム、平均糖度は15以上。品質や日持ちの良さから、歳暮やクリスマスの贈答需要が強い。卸売価格は、夏に出荷する主力「清水白桃」の2倍以上。今季は11月20日から出荷を始め、12月10日ごろまでを計画する。
「冬桃がたり」は2011年に栽培を始め、組合員94人のうち今は35人が1ヘクタールで生産している。生産量は増え、19年産は前年比4割増の3・5トン、販売額は5割増の1000万円を計画する。
栽培管理は4~11月まで8カ月を要する。一般的な剪定(せんてい)は夏と冬の2回だが、「冬桃がたり」は、夏も果実が樹上にあるため、冬の1回で作業を終わらせる必要がある。剪定場所の判断が重要で、組合内で研究を重ねている。収穫から出荷までは、室温7度に設定したJAの予冷庫で貯蔵。温度変化を抑え、品質を保持する。
1ヘクタールで10品種を栽培する組合長の板敷隆史さん(46)は「労力が分散され、安定収入につながる。増産して需要に応えたい」と意気込む。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月06日

輪島功一さん(元プロボクシング世界王者) 王座で味わった最高の肉
私は樺太で生まれたんですけど、ソ連が来たから両親は兄と私を連れて北海道に逃げたんですよ。3歳の時のことです。
開拓一家で育ち
北海道では厳しい暮らしが待っていました。おやじはクマザサをバリバリッと切って、馬を使って荒れ地を開拓しました。山の方なので米は取れず、ジャガイモと小麦を育てていました。本当に貧しく、私は落ちているものは何でも拾って食べました。ドングリをゆでるとおいしかったなあ。
小学校6年生の時、久遠村(現・せたな町)で漁師をしているおやじの兄のところに養子に出されました。「もっといい生活ができる」と思い、うれしかったですね。
実際に行ってみて分かったんですが、伯父は労働力が欲しかったんです。山に木を切りに行かされました。中学生なのに大人と同じだけの荷物を背負わされて歩きました。私が、がに股になったのは、その時の木材運びのためです。
夜はイカ釣り漁船で働かされました。朝まで釣って、大人たちはその後で眠るんですけど、私はそのまま学校に行かないといけない。授業中に居眠りをして、先生に「この野郎」と殴られました。
私は船酔いがひどくて、船の上で必ず戻してしまいました。だから私のところには、イカがたくさん寄って来たんです。
慣れれば良くなると思っていたんですが、いつまでたっても駄目。三半規管が弱かったからなんですね。それが分かって漁師は向かないと思い、実家に逃げ帰りました。伯父の家では商売にならないような魚を料理してもらうことがあったから、食事は実家より良かったんだけど、それでもね。
実家に戻ってから1年くらい働いて、そのお金を全部両親に渡して、上京しました。新聞配達や牛乳配達など、いろんな仕事をしました。東京に出て初めて、肉を食べました。こんなうまいものがあるのかと、たらふく食いました。
仕事で一番長かったのが、建設現場。羽田空港の滑走路は私たちが作ったんですよ。高度経済成長期。景気が良かったのでお金はたくさんもらいましたが、変なことに使いたくはなかったんです。会社の寮のそばに、ボクシングジムがありました。このジムで汗を流せば悪い誘惑に乗ることもないだろうと考えて、入門しました。
私は当時24歳。ボクサーとしては引退間際の年齢です。ジムの方も「金を払うならいい」という態度。で、なにくそと思ったんです。今に見てろ、と頑張ったね。
恩人との出会い
私はファイティング原田と同じ年なんです。原田が引退した69年に新人王になりました。チャンピオンになって、ぜいたくな暮らしをする。うまいものをたらふく食ってやる。そういうハングリー精神を持つのが普通ですが、私はそんなことはなかった。ジムの人を見返す。故郷の同級生で大学を卒業して「いい会社」に入った連中に負けたくない。その思いで練習しました。
69年に日本チャンピオンになりました。建設会社の社長は大のボクシング好き。私のことをとてもかわいがってくれて、「会社員としての給料は払うけど、会社に顔を出すだけで仕事はしなくていい。ボクシングに専念して頑張れ」と言ってくれました。その上よく瀬里奈(東京・六本木の高級料理店)に連れて行ってくれました。
ぜいたくをするために練習に励んだわけではありませんが、その成果で食べた瀬里奈の肉は本当においしく、今でも覚えています。(聞き手・写真=菊地武顕)
わじま・こういち 1943年、樺太生まれ。71年、世界ボクシング協会(WBA)・世界ボクシング評議会(WBC)世界ウェルター級チャンピオンに。かえる跳びなどの変則ボクシングで相手を翻弄(ほんろう)した。WBAで3度、WBCで2度王座に就いた。現在は輪島功一スポーツジムで後進を育成している。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月30日
経済の新着記事

機能性に魅力 実需が国産要望 もち麦1年で3・5倍
もち性大麦の2019年産生産量が8000トンを超え、前年産に比べ3・5倍と急増した。健康食品としての認知度が高く、国産志向もあり市場が拡大。機能性成分が多く、各地の気候に適した新品種の導入が進み、実需の要望で産地が形成されつつある。急増してもなお需要が供給を上回っている状況で、国産の増産への期待が高まっている。
19年8000トン超 需要伸び品種充実 産地追い風
農水省がまとめた大麦の農産物検査結果(10月末時点)によると、もち麦の検査数量は8581トン、18年産実績を6000トン上回った。
県別で最も多いのは福井県の2357トン。機能性成分が多い新品種「はねうまもち」を導入し、約800ヘクタールを作付けた。4JAが取り組み、大手精麦メーカーに仕向ける。「メーカーの強い要望に応じ、従来の大麦品種を転換した」とJA福井県経済連。交雑や異品種の混入を防ぐため、産地を限定する。
次いで増やしたのが福岡県。九州が栽培適地の「くすもち二条」を前年の4倍、1243トン生産する。うち、JA全農ふくれんは県内の精麦メーカーの求めで試験的に約70ヘクタール栽培した。20年産はこれを上回る注文があるが、「他の麦類の要望もあり、そうは広げられない」(全農ふくれん)と悩ましい現実もある。
宮城県はもち麦「ホワイトファイバー」を前年の11トンから764トンに拡大。実需の関心が高く、県は種子の生産体制を整え一般栽培に踏み切った。今後も増やす計画だ。
もち麦の普及は、県が奨励品種にして、産地品種銘柄として流通させることが欠かせない。産地品種銘柄の採用は、この3年間で6県から18道県に拡大した。大半が、健康機能性が多い品種への転換だ。ビール麦産地の栃木県は、ビール麦から県育成品種「もち絹香」に替えた。「健康志向で今後の需要が見込まれるため」(生産振興課)だ。
もち麦品種は、3年前の5品種から8品種に増えた。国内最大面積となった「はねうまもち」は農研機構が開発、17年に品種登録を出願した。寒冷地向きで、新潟県、北海道でも展開中。暖地向けは「くすもち二条」「ダイシモチ」がある。各地の気候に適した品種開発も、産地化を後押ししている。
農林水産政策研究所企画広報室の吉田行郷室長は「需要に対応するには産地がまとまって品種を統一したり、十分な生産量を確保したりする必要がある」と指摘する。
もち麦は食物繊維の一種、βグルカンを豊富に含む。腸内環境改善や血中コレステロール低減に効果があるとされる。国内流通量に占める国産の割合は1割に満たない。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月08日
輸出3カ月前年割れ 10月農林水産物 目標達成遠く
10月の農林水産物・食品の輸出額は751億円で、前年同月比で5・9%減った。前年同月を下回るのは3カ月連続。2019年の累計(1~10月)は前年同期比0・8%増の7396億円。水産物が落ち込み、緑茶やリンゴなど主要果実も振るわず、伸びが鈍化している。「19年に1兆円」という政府目標の達成は厳しい。
財務省が発表した貿易統計を基に日本農業新聞が調べた。
農林水産物の輸出は例年、収穫期の秋以降、年末にかけて増える傾向にある。しかし、政府目標1兆円達成には残る2カ月で合計2600億円以上の実績が必要。単月で1000億円を超えたことは近年なく、このままのペースでは達成は難しい状況だ。
輸出額の1~10月の累計を品目別に見ると、水産物は、6%減の2313億円と落ち込んだ。輸出先で他国産と競合したり、サバなどで相場が良い国内向けに販売を振り向ける動きがあった。
日本食の人気を背景に、牛肉は25%増の235億円と好調が続いている。日本酒も8%増の192億円、サツマイモは23%増の13億円と伸び幅は大きい。リンゴは8%減の82億円、ブドウは4%減の28億円と落ち込んだ。緑茶も2%減の119億円となった。
輸出額が伸び悩む背景には、最大の輸出先・香港の政情不安定化や、韓国との関係悪化などもあるとみられる。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月08日
担い手サミット開幕 きょうまで静岡
第22回全国農業担い手サミットinしずおかが5日、静岡市で始まった。認定農業者ら2000人が参加し、先端技術の導入や、食料自給率の向上、農業の持続的発展などに取り組むとしたサミット宣言を採択した。6日まで。
県、JA静岡中央会などで組織する実行委員会と全国農業会議所が主催。寛仁親王妃信子さまが「農業に携われる方々が絆を深め、活力ある農業の実現に向けて力強く発展することを願います」とあいさつされた。
大会会長を務める静岡県の川勝平太知事は「農業を担う人材不足は全国的な課題になっている」と述べ、スマート農業の開発や普及を進めていくことを伝えた。
県内の担い手4人がメッセージを発表。直接販売に取り組み、経営改善したり、豚の人工授精液生産を続けたりする今後の経営や農業振興への思いを訴えた。事例発表では担い手らが、6次産業化や農産物の海外輸出について議論を交わした。
全国優良経営体の表彰があり、加藤寛治農水副大臣が農林水産大臣賞を受賞した12経営体に賞状を贈った。
6日は、県内7地域の38会場で現地視察と情報交換会を開く。次回の開催は茨城県。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月06日

豚肉在庫が最多水準 9月時点3割増に 輸入多く国産苦戦
豚肉の在庫量(輸入含む)が過去5年の最多水準に積み上がり、国産相場の不安材料になっている。中国でまん延するアフリカ豚コレラ(ASF)の影響で国際相場に不透明感が増していることや、大型貿易協定で関税が下がったことで、食肉メーカーや商社が輸入品の調達を強めているためだ。国産は加工向けの下位等級を中心に需要を奪われ、苦戦を強いられている。
農畜産業振興機構のまとめによると、9月時点の推定期末在庫量は、前年同期比3割増の21万8205トン(国産品が同13%増の2万351トン、輸入品は同32%増の19万7854トン)。近年の在庫量は約17万トン前後で推移しており、過去5年で最多水準だ。
豚肉の国際相場は、世界最大の豚肉消費国である中国でのアフリカ豚コレラの拡大で、引き合いが強まった欧州産を中心に高値基調が続いている。大手食肉メーカーは「これからもう一段上げる可能性があり、高騰する前に調達を強めている」と明かす。
在庫過多の輸入品に押され、国産品にも影響が出ている。「国産、輸入ともに、裾物の在庫が多く、国産は加工筋などで需要を奪われている」(大手メーカー)という。環太平洋連携協定(TPP)や欧州連合(EU)との経済連携協定(EPA)で輸入品の関税が下がったことも、国産品の価格面での競争力に影を落とす。
国内生産量(と畜頭数)は、今年度上半期の累計が約788万頭で前年同期比ほぼ横ばい。しかし消費は鈍く、在庫が積み上がる状況だ。
全国指標となる東京食肉市場の29日の豚枝肉価格は1キロ459円(上物平均)で前年並み。一方、格付けで最も低い「等外」は300円台半ばで6月以降、前年を下回る取引が目立つ。
「10月以降、出荷量が例年以上に多くなっている」(市場関係者)など、この先は不安材料が多い。豚コレラ(CSF)ワクチンを接種した豚の流通も始まった。現状、目立った混乱は見られないが、取引動向には注視が必要だ。
大手食肉メーカーは「安価な輸入品に押され国産が苦戦する状況は長期的に続くだろう」と見通す。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月02日

特産エダマメビールに加工 秋田・大館市 観光地域づくり法人発案
秋田県大館市特産のエダマメを副原料に使ったクラフトビール「秋田枝豆ビール」が登場した。地元の日本版観光地域づくり法人(DMO)秋田犬ツーリズムが発案し、同市産のエダマメを原料に供給。委託醸造を経て、酒類販売業のルーチェ(東京都大田区)が地元スーパーや首都圏のデパートなどで11月から販売している。同法人は同市産エダマメの知名度のアップと消費拡大を狙う。
同法人は市内の農家が朝に収穫したエダマメを仕入れ、ペースト状に加工し「田沢湖ビール」(秋田県仙北市)に供給し、ビールに醸造してもらう。後味にエダマメの風味が残るのが特徴だ。ラベルには、秋田犬がエダマメを食べているイラストを採用した。
同法人の大須賀信事務局長は「大館のエダマメは知名度がまだ低く、取引価格が伸び悩んでいる。ビールを通してブランド力を高めたい」と期待する。イベントで先行発売した際には、用意した500杯が完売するなど関心を集めた。
1瓶(330ミリリットル)700円(税別)。大館駅前の観光施設「秋田犬の里」や市内のスーパーで販売している他、東京・新宿のデパートでも扱う。今年度は5700本を販売する予定。飲食店向けに、たる詰めでの出荷も検討している。
秋田県では近年、転作作物としてエダマメの生産が盛ん。8~10月には、東京都中央卸売市場で1位の取扱量を誇る。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年12月01日

世界都市農業サミット開幕 体験農園の魅力実感 5カ国が参加 東京都練馬区
東京都練馬区が主催する世界都市農業サミットが29日、同区で始まり、参加する5カ国(米国、英国、カナダ、韓国、インドネシア)の都市の行政関係者や専門家ら15人が区内の農業体験農園や観光農園、直売所を視察した。サミットは12月1日まで。
参加都市はニューヨーク、ロンドン、トロント、ソウル、ジャカルタ。都市農業の魅力と可能性を学び合い、発展の場にしようと区が初めて開いた。
参加者は区内でキャベツやネギを栽培する高橋正悦さん(68)の畑を訪問。高橋さんは「近隣の人とは直売所で新鮮な野菜を買ってもらい、良好な関係だ」と話した。
加藤義松さん(65)が運営する体験農園「緑と農の体験塾」も訪れた。加藤さんは「野菜の栽培方法を示すことで、初心者でもプロ並みの野菜が作れる」と説明した。
視察した韓国・ソウル特別市の都市農業課長は「体験農園の活性化について知見を深めたい」と述べた。インドネシア企業の植物防疫研究所長も「日本の都市で市民主体の農業が営めているのは興味深い」と、農園をカメラで撮影していた。
区の毛塚久都市農業課長は「都市の中に農地が必要という方向性は各国共通だと思う。サミットを機に世界の都市農業の発展につながれば」と期待する。
30日と12月1日に国際会議を開き、「サミット宣言」をまとめる予定だ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月30日
無洗米 SDGsに貢献 国連会議で東洋ライス
米の総合メーカー・東洋ライス(東京都中央区)は27日、スイス・ジュネーブの国連欧州本部で開かれた人権などに関する国際会議に参加し、同社の米の加工技術による環境や健康への貢献と、国連が掲げる持続可能な開発目標(SDGs)との関わりについて報告した。同社によると、日本の企業がSDGsについて国連で報告するのは今回が初めて。
会議は25~27日までの日程で開かれ、世界約190の国と地域から3日間で約2000人が参加した。
同社が独自に開発した「BG無洗米」の普及で、下水処理などで発生していた二酸化炭素(CO2)の排出量をこれまでに50万トン以上削減したことなどを紹介。加工過程で取り除いた米のとぎ汁成分を有機質資材として活用し、循環型農業を実現していることなども説明した。日本の主食である米に関する多様な事業を通じ、「気候変動に具体的な対策を」など、17項目を掲げるSDGsの目標のうち、14項目に寄与していることを報告した。
雑賀慶二社長は「(今回の報告を)日本の農業や米の文化が、SDGsの取り組みとつながっていることを国際社会に発信するきっかけにしたい」と話した。(ジュネーブ斯波希)
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月29日

汚泥肥料、ハウスの熱源、農業用水… “下水パワー”発揮 国交省と公共団体が推進チーム
全国各地で、下水道から発生する汚泥やメタンガス、再生水を農作物の栽培に有効活用し、ブランド化する自治体が増えてきた。国土交通省などは下水道を生かした農作物を「じゅんかん育ち」と名付け、地域と共に安全性や効果の分析、周知を行う。タマネギやニンニクなど“下水道パワー”で多様な農作物が育ち、食に大きく貢献している。
安全実証、広がる活用
汚泥や再生水の中には農業に欠かせないリンなどが含まれ、肥料にしたり、処理水を農業用水に活用したり、発生する熱や二酸化炭素(CO2)をハウス栽培の熱源として活用したりできる。下水道由来の肥料は、葉の成長を促す窒素の含有量が高いことが特徴だ。
同省は2013年から地方公共団体と「BISTRO下水道推進戦略チーム」を結成し、“下水道×農業”の普及を進めてきた。科学的に安全であることも実証されており、下水道法では現在、下水汚泥再生の努力義務が課せられる。
ただ、課題は下水道のイメージの悪さだ。そこで同省では名称を公募。現在は、人が排出した下水を作物の栽培に利用して再び生かすなど、食の循環に貢献することから「じゅんかん育ち」としてPRする。
同省によると、下水道から発生する汚泥は18年度で242万トン。そのうち肥料や土壌改良材に生かされる「緑農地利用」は14%に上る。処理水は18年度で155億立方メートル。全国各地で「じゅんかん育ち」食材が生まれている。
土壌改善、食味向上も
酪農が盛んな北海道標津町。役場は乾燥させた汚泥を農家に配布している。受け取った農家は窒素の含有量が比較的少ない牛ふんを混ぜた混合肥料を作り、牧草地の肥料にしている。同町汚泥肥料研究会によると、汚泥肥料の方が従来の化学肥料に比べて牧草の生育が良好で、窒素化学肥料の使用量も従来の3分の2まで減らすことができた。土壌中の栄養成分も増え、搾乳量の増加や肉質向上にもつながったという。
秋田県大仙市の上野台堆肥生産協同組合は、下水道由来の汚泥を発酵させた肥料「アキポスト」を製造・販売する。15年度の販売量は475トンで、全量を県内で売る。稲作を中心にそば、エダマメ、ホウレンソウなどの肥料として使われている。
アキポストを使う水稲農家の中には「米・食味鑑定コンクール」で米の味や色つやなどが評価され、5年連続で「ベストファーマー認定」を受けた農家もいるほどだ。一方で、安全性や効果の周知はさらに必要で、下水道の汚泥と聞くだけで否定的な反応をする人も少なくないという。
同組合の山岡和男専務は「適切な処理を施せば、汚泥は素晴らしい肥料になる。何より行政の後押しが必要だ」と訴える。
5ヘクタールの農地で枝豆を作る大仙市の農家、鈴木辰美さん(72)はアキポストを10年ほど利用する。「エダマメの味が良くなった気がする。糖度も上がり、甘くておいしいと評判だ」とうれしそうだ。
印象の改善や 管理周知必要
下水道資源による特産品の栽培や、循環型農業を学ぶ体験授業なども広がっている。一方で、製造方法によっては特有の臭気が気になる他、牛鶏ふんとの混合や攪拌(かくはん)する作業の手間、イメージの悪さなどの課題も残る。
東京農業大学の後藤逸男名誉教授は「国や地方自治体が農家に向けてガイドラインの作成や、効果や適切な管理方法の周知に力を入れていくべきだ」と指摘。また、再生エネルギーや下水道資源の活用に詳しい長岡技術科学大学の姫野修司准教授は「農業分野にとって下水道資源の活用は可能性のある分野。自治体やJAによる普及推進活動が必要だ」と説明する。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月29日

SNS料理コン 知恵絞って“カボス映え” 大分県振興協議会
あなたなら何に絞る?──。大分県カボス振興協議会は27日、カボスを使った料理の投稿をインターネット交流サイト(SNS)のインスタグラムで募った「マイカボ選手権」の入賞作品を発表した。グランプリは、アカウント名「kiirokabosu」さんの「カボスバーガー」。ハンバーグ種にカボスを絞り、さらに皮もトッピングするなどカボス満載の一品だ。
選手権は、カボスの消費拡大を目指して初めて開いた。8、9月に募集し、756件の投稿があった。審査基準は、画期的なアイデアや、プロが見ても納得し“カボス映え”することなど。
カボスバーガーは、ハンバーガーと、カボスを餌に与えて育てた「かぼすブリ」のフィッシュバーガーの2種類。ハンバーグ種に果汁を絞ったことで、ふっくらジューシーでさっぱり仕上がったという。大人用はカボスのスライスも挟む。
特別審査員を務めた料理家の栗原心平さんは「カボス満載のハンバーガーだ。パティの肉汁にカボスが寄り添い、絶妙なうま味を引き出しそう」と講評した。協議会は「カボスの使い方が分からないと言われることが課題だ。受賞作品を紹介して消費拡大につなげたい」と意気込む。
準グランプリは、アカウント名「sakurazusa」さんの「桃とカボスのレアチーズケーキ」を選んだ。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月28日

有機食品 週1回以上飲食 3割超 増やしたい1位は生鮮野菜 農水省調査
有機(オーガニック)食品が消費者に注目されている。過去1年以内に有機食品を飲食した経験のある人を対象にした農水省の調査では、「週に1回以上食べる」と答えた人が3割以上を占めた。「購入を増やしたい」品目は生鮮野菜が最多で、国産を求める割合も7割近くに上る。高い頻度で有機食品を購入する消費者がいるため、小売りは取り扱い拡充の動きを強める。
同省は8月下旬~9月上旬、1年以内に有機食品の飲食経験がある20歳以上の男女1099人を対象に、購入意向を調査した。
有機食品を食べる頻度が「ほとんど毎日」と答えた割合は5・9%。「週に2、3回」(12・1%)、「週に1回」(16・7%)と合わせ、週に1回以上食べる人の割合は34・7%に上った。年代別では「ほとんど毎日」と答えた割合が最も高かったのは40代(7・6%)だった。
家庭消費用に購入を増やしたい有機食品の品目では、生鮮野菜が59・5%と最多。続いて生鮮果実(25・8%)、パン(25・3%)、米(22・6%)だった。同省は「生鮮野菜は購入経験が多く、売り場が広がったこともあり、消費者に浸透している」(農業環境対策課)と分析する。
また、有機食品は「国産しか購入しない」「割高でもできるだけ国産を購入する」と答えた割合は米が86・2%と最多で、豆腐・納豆(77%)が続いた。生鮮野菜(67・4%)、冷凍野菜(56・6%)、生鮮果実(54・7%)と青果物に国産を求める声も強い。
有機食品のニーズに応えようと、小売りは供給体制を強化。イオングループで有機食品などの専門店を展開するビオセボン・ジャポンのスーパー「ビオセボン」は今年、6店舗を新たに構え、首都圏の総出店数を14店舗に拡充。「安全・安心な食品を求める子育て世代をターゲットに出店を増やしている」と同社。
イオンは10月、生産者の有機JAS認証取得や物流、販売を支援する提携制度「イオン オーガニック アライアンス(AOA)」を始めた。生産者の負担軽減と、青果物の安定供給を図る。
日本農業新聞の購読はこちら>>
2019年11月26日