選挙戦が終わって、茨木のり子さんの詩の一節がふと浮かんできた

 選挙戦が終わって、茨木のり子さんの詩の一節がふと浮かんできた▼〈言葉が多すぎる/というより/言葉らしきものが多すぎる/というより/言葉と言えるほどのものが無い〉(「賑々(にぎにぎ)しきなかの」)。声高に、大仰に、悲壮に、候補者の言葉が賑々しく飛び交った。相手をおとしめたり、自慢を振りまいたり。論戦や舌戦というけれど、空回りする言葉はどれほど有権者に届いただろうか▼政権は継続しても、投票率はこの梅雨寒のように寒々しい。不信と無関心と諦め。それが今の政治への意思表示だとしたら、選挙結果は白紙委任を意味しない。勝てば、謙虚の二文字を忘れるのがこの政権の常である。選択肢を十分に示せなかった野党の責もまぬがれず、その存在意義が問われよう▼古語に「君は舟なり、庶民は水なり、水は舟を載せ、また水は舟を覆す」とある。中国戦国時代の儒学者・荀子が説いた治世の教えである。国をつかさどる者は、公正な政治を行い、人民を愛することを要諦(ようてい)とした。水(庶民)を侮ると、舟(政権)はすぐに傾く▼冒頭の詩に次の一節もある。〈この不毛 この荒野/賑々しきなかの亡国のきざし〉。選挙後に先送りした難事難題の数々に亡国の兆しなきや。舟に多くの国民を乗せていることをお忘れなきよう。
 

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