大戦80年の教訓 自国主義の台頭を憂う

 80年前の9月1日、ドイツがポーランドに侵攻して第2次世界大戦が始まった。戦争の反省を踏まえ、人類は進歩したのか。政治情勢はむしろ、ここ数年で平和から遠ざかり、厳しさを増しているようにすら見える。80年の節目に、改めて政治の在り方を問いたい。

 第2次世界大戦のきっかけは、米ニューヨークから始まった経済大恐慌が遠因とされる。英国やフランスはその防衛策としてブロック経済という手法を取り、自国と植民地の間だけの交易体制をつくり上げ、物流を囲い込んだ。第1次世界大戦で多額の負債を抱えたドイツは植民地をほとんど持たなかったため、貿易から締め出されることになった。英仏の自国第一主義の影響をもろに被った形だ。結局、他国へ侵攻することで物資を確保することになった。

 戦後、交易を広く盛んにしていこうとの動きに代わったが、80年たった今、極端な自国第一主義が息を吹き返している。米国のトランプ大統領は「米国第一」を掲げた。メキシコとの国境を固め、対中国の関税を引き上げるなど貿易を規制する。

 欧州でも移民を排斥し、自国第一主義を掲げる政治家が支持を集めている。英国のボリス・ジョンソン首相は欧州連合(EU)離脱をリードしてきた。ルペン氏率いるフランスの国民連合も難民受け入れに反対し、EUと対立する。

 第2次世界大戦前、ユダヤ人を差別することで国内の意思を統一し、戦意を高揚させたのがドイツのヒトラーだ。ヒトラーは民主的な選挙で選ばれ、地位を得た点も注目したい。外に共通の敵をつくり、支持を固めるという政治手法が奏功した。

 80年前に世界を戦争に導いたこの手法が、いまだに世界の政治家の間で使われている。米国大統領に限らず、欧米の政治家の間で近年、排外主義的な発言が目立つ。

 韓国でも、日本を国民共通の敵にするかのような大統領の言動が見受けられる。日本非難を支持率向上に利用しているとの見方もある。

 さて日本はどうだろう。政府の意図はともかく、韓国への貿易優遇措置を撤回する方針を打ち出したことが、直後の参院選の結果や政権の支持率に影響しなかっただろうか。

 自国第一主義を掲げ、外部に敵をつくる。対立軸を明確にしてあおり、自身への支持を固める。二つを対立させ、多数決でどちらかに決めるのが民主主義ではないはずだ。

 お互いの主張を認め、話し合いで両者の間にある溝を埋め、多数の人が容認できる着地点を探すのが、本来の民主主義ではないのか。話し合いは時間がかかる。効率は悪いかもしれないが、戦争は避けられる。第2次世界大戦では5000万人以上が犠牲になったとされる。政治家の思考、政治手法が80年前と変わっていないのなら、5000万人が浮かばれない。

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