豚コレラ 農相指針改定を表明 ワクチン接種可能に 地域設定など課題 

 江藤拓農相は20日、豚コレラの感染拡大を食い止めるため、飼養豚への感染を予防するワクチン接種を可能とする防疫指針の改定作業に着手すると表明した。改定すれば都道府県知事の判断で接種できるようになるが、接種地域の設定などクリアすべき課題は多い。専門家や各県の意向を踏まえて検討する。改定には意見公募などの手続きが必要で、少なくとも1カ月程度はかかる見通し。接種に備え、ワクチンメーカーに増産を依頼した。

 現行の防疫指針は予防的ワクチン接種は認めていない。江藤農相は指針の改定に踏み切った理由について、昨年9月の国内での初確認から1年が経過したことや関東の養豚地帯に感染が広がる懸念があることを挙げた。

 防疫指針を改定するには今後、接種する地域や接種の順序、接種した豚の流通規制をどうするかなどを定める必要がある。農水省は、食料・農業・農村政策審議会牛豚等疾病小委員会で検討していく。

 接種を判断した場合には、国際獣疫事務局(OIE)の「清浄国」の立場を失い、豚肉や加工品が輸出できなくなる可能性がある。江藤農相は会見で、接種後も輸出が継続できるよう輸出先国との協議に入ることも明らかにした。

 接種によって風評被害を招く恐れがあるが、江藤農相は国内でも2006年に全面中止されるまで接種していた経過を説明しつつ、「ワクチンを接種しても安全性にはなんら問題ない」と強調した。風評被害の回避へ消費者や事業者への周知に努める考えを示し「万が一(風評被害が)発生した場合は対策も考える必要がある」と述べた。

 同省によるとワクチンの備蓄は現在、150万回分ある。ただ、接種地域の設定の仕方によっては不足する可能性があるため、増産を要請した。

 同省は指針の改定作業と合わせて、農場の防護柵の設置や飼養衛生管理の徹底を改めて促す方針。感染源となる野生イノシシの捕獲を強化し、自衛隊と協力して餌に混ぜて与える「経口ワクチン」の散布も大規模に進める。

 防疫指針の改定で豚への予防的ワクチンが使えるようになれば、家畜伝染病予防法上は都道府県知事の判断で接種が可能になる。ただ、現状では豚コレラの豚ワクチンは国の備蓄だけで民間流通していないため、国が備蓄分の利用を決めないと接種は事実上できない。

 日本養豚協会の香川雅彦会長は「ワクチン接種が実施されればまん延する豚コレラの解決に向けた入口の一歩になる」と述べた上で「埼玉にまで感染が広がり、江藤農相も苦渋の決断だったと思う」と感謝した。

 ただ、即座にワクチン接種できるわけではないことを踏まえ、「接種後の流通など精査すべき課題は非常に多い。豚コレラに立ち向かう養豚農家にとってこれがゴールではない。これから険しい道のりとなる」と指摘し、業界を挙げて対策を進める考えを強調した。

 JA全中の中家徹会長は「JAグループとして政府・与党と引き続き連携して、取り組んでいきたい」と述べた。

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