人手足らず作業遅れ 復興への道筋描けず 台風19号から1カ月 園地に今なお土砂 長野県中野市

大量の土砂の横で「50センチほど堆積している」と説明する神田さん(長野県中野市で)

 広範囲に浸水被害をもたらした台風19号が上陸して12日で1カ月。記録的な大雨による河川の氾濫や堤防の決壊などで大量の土砂が園地に流れ込み、今も堆積したままだ。農家は膨大な量の土砂を前に、復興の道筋を描けずにいる。生産現場はきめ細かい国の支援策や人的支援の必要性を訴えている。(藤川千尋)

 長野県では千曲川の氾濫で、県北部6市町の903ヘクタールの果樹園に土砂が堆積している。このうち中野市では11日時点で220ヘクタールに土砂が積もる。長野市の520ヘクタールに次ぐ規模だ。

 「大量の土砂、どこから手を付けていいのやら……」。自宅が浸水し、1カ月ほど家の片付けなどに追われた中野市上今井地区で桃などを栽培する神田茂貞さん(52)は、園地を見て肩を落とす。桃やスモモの園地計65アールが被災。最大約50センチの泥が堆積する。園地までの道の一部の土砂をかき出したが、園地の奥や木の周りに堆積した土砂の搬出には手が回っていない。「リンゴより桃やスモモの木は弱い。根が張る木の周りの泥だけでも取り除きたい」と話す。

 JAながのみゆきもも部会部会長の神田さんが危惧するのは泥の除去が遅れて木が枯れ、離農者が出ること。桃を改植した場合、出荷できるまで5、6年かかる。35戸の部会員のうち70歳以上が6割以上だ。神田さんは「改植する元気のある高齢農家は少ない。時間がたつほど木が弱り、離農リスクが高まる。雪が積もる12月までに何とかしたい」と気をもむ。

 「(行政支援で)土砂を運び出すにしても、自己負担の程度や、集めた土砂の運搬先など、分からないことが多過ぎて困っている」と打ち明けるのは、JAみゆきりんご部会部会長の小林万伸さん(63)。リンゴ40アール、スモモなど35アールが水に漬かり、泥が流れこんだ。これまでは泥をかぶり出荷ができなくなったリンゴを木から落とす作業に追われた。農地につながる道は今も泥が積もる。「土砂を人力で運搬するのは限界。重機確保が重要で、行政支援がないと厳しい」と国のきめ細かい支援を訴える。

 果樹は枝が低い位置にあるため、重機が農地に入ると枝が折れる恐れもある。JAみゆき営農センターの高橋幸人センター長は「重機が入れない農地は、人が土砂をかき出す必要があるが、人手が足りない」と外部からの人的支援を求める。

 甚大な被害に市も対応に苦慮している。市は、国の災害復旧事業を活用して土砂を撤去する調査をしているが、「測量する人の不足や水分の量が多い園地に入るのが難しく時間がかかっている」と話す。国は激甚災害の指定で、国庫補助率を最大96%程度までかさ上げした。市は、農家に自己負担を求めるかどうかは決めていない。13日までに土砂の堆積状況を調べる予定だ。
 

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