廃プラ 中国禁輸行き場失う 処理値上がり農家負担ずしり

「ハウス内に熱風を送る小ダクトやマルチ、かん水チューブは全て廃プラになる」と話す清宮さん(千葉県大網白里市で)

 日本国内で処理が必要な廃プラスチックの量が増大する問題を受け、農業現場にもじわり影響が出始めた。マルチやハウスのビニールなど農業用廃プラスチック処理費用は、各地で上昇している。国際的な移動制限も始まる見通しで、専門家は農家に分別や排出時の洗浄などに取り組むよう呼び掛けている。(鵜澤朋未)

 千葉県大網白里市。キュウリやトマトなど施設野菜を40アールで栽培する清宮正宏さん(44)は今年、約300キロの農業用ビニールを排出した。処理費は全部で4000円ほどで、今年初めて負担した。

 「まだ経営に響く額ではないが、排出量は多い時には1トンになる。1キロ50円になると負担感が出てくる」と清宮さん。値上げが続くようなら、ハウスを被覆するビニールの使用年数を延ばしたり、排出を小出しにして費用を分散させたりするなどの対策を考えている。

 これまで同市では農業用廃プラスチックの処理費を県、JA全農、大網白里市農業用廃プラスチック対策協議会が負担。生産者の負担は手数料の200円だけだった。

 このうち市や生産者らでつくる協議会の負担分は、市が補助金を設けて生産者分を拠出。だが中国の輸入規制の影響を受けて処理費が値上がりしたことや、今後も上がる可能性があるため、市の財政ではカバーしきれないと判断した。

 そこでJAや生産者代表、種苗会社らが出席する同協議会の総会で、最近の廃プラスチックを巡る情勢を説明。生産者らに処理費について理解を求め、1キロ13円を10月から負担してもらうことにした。

 清宮さんの経営では、出荷用段ボール箱が今年4月に1割値上がりし、運送料も以前より上昇。「野菜の単価はそれほど上がっていないが、生産に必要な経費が増えている」(清宮さん)という。

 宮崎県の西都市農業用廃プラスチック適正処理対策推進協議会も業者からの要請を受け、今年度から農業用廃プラスチックの処理費を値上げした。ビニール1キロ当たり3円を5円に、ポリエチレンは1キロ当たり15円を23円に増額。市の広報紙や集積所に張り紙をして生産者に告知した。

 「農家からはどうしても捨てるものなので仕方ないという声が大半だが、県内の他の地域でも値上げになったという話は聞いている」(同協議会)と話す。
 

時代は買い手市場 農業用汚れで敬遠

 

プラスチックリサイクルに詳しい 名古屋大学・竹谷裕之名誉教授の話


 農業用廃プラ処理の値上げは、中国による輸入規制で廃プラの市場が様変わりしたことが要因だ。再生品として輸出できなくなったことで国内にプラスチックがあふれ、処理業者は農業用よりリサイクルしやすい工業分野から排出される端材などのきれいなプラスチックを手に入れやすくなった。

 これまでの「プラスチックならなんでも売ってほしい」という売り手市場から買い手市場に変わったことで、土が付くなどリサイクルしにくい農業用廃プラは競争上不利な立場に立たされている。今はまだ1キロ数十円の処理費で済んでいるかもしれないが、既に100円を超えている所もあり、今後は数百円になる可能性もある。

 農業で排出されるプラスチックが一層不利な状況にならないように、これからは生産者自身が“出口の出発点”という意識を持ち、①農ポリ、農ビなど素材ごとに分別をしっかりする②植物残さや土をしっかり落とし洗浄する──など、排出するものの品質を上げるという姿勢が必要になる。


<メモ>

 中国が2017年末に使用済みプラスチックの輸入を禁止し、日本国内の処理施設が逼迫(ひっぱく)している。中国では廃プラを洗浄した排水で河川の水質汚染が問題となり、経済発展で自国の排出量も増えたため、輸入禁止とした。タイやマレーシアも18年から輸入制限を強化。21年にはバーゼル条約の改正により「汚れたプラスチックごみ」の移動が国際的に制限される見通しだ。
 

おすすめ記事

営農の新着記事

検索

e農サーチ e農サーチとは